ピエール瀧さん、沢尻エリカさん、田代まさしさんら著名人が、相次いで違法薬物で逮捕され、世間はバッシングであふれる。
コンビニにはアルコール濃度が高いストロング系チューハイや、カフェインがたっぷり入ったエナジードリンクが並ぶ。
誰もが何かに依存して生きているようにみえる現代は、どんな時代なのか。少しでも健やかに生きるためにどんな対策が必要なのか。3人の専門家に聞いた。
増える「ストロング系」 新たな層の依存も

最近、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部長で、薬物依存症センター長・松本俊彦さんが問題提起して話題になったのが、ジュースのような口当たりなのに、9%とアルコール度数が高い「ストロング系チューハイ」の流行だ。
酒税法改正の煽りを受け、税率の低さを狙って開発されたこのようなアルコールが、アルコールが苦手な層に新たな依存を生み出していると指摘する。
「お酒の入り口にある若者も飲むので、アルコール人口を増やすことに貢献しています。飲みやすくて度数の高いアルコールを速いペースで飲んでしまうのも問題です」
松本さんはストロング系を飲んでいる人たちのSNS上の言葉に愕然とした。
「『酔う』というより『わからなくなる』ためのお酒」
「脳みそのブレーカを落とすステキな魔法」
「『こんなもん好きで飲んでいる訳じゃない』って気持ちになるあたり、本当に嗜好品ではなく麻薬ですね」
「お酒がもともと好きではない人たちが、酔って意識を飛ばすために飲む。アルコールを効率よく摂取できる飲み物として使い、これで酩酊した後にリストカットしたり過量服薬したりすることも多いのです」
「酒ではないかのようにごまかして飲ませて、気がついたら依存ができあがっていてやめられない状態に追い込んでいるような気がします」
依存症に苦しむ人はどれぐらいいる?
「依存症」とは、特定の物質や行動によって、生活に支障をきたすようになった状態のことをいう。
では、アルコールや薬物、ギャンブルなどの依存に悩む人は、どれぐらいいるのだろうか?
精神保健福祉資料
2013年の「WHO世界戦略を踏まえたアルコールの有害使用対策に関する総合的研究」によると、アルコール依存症者は推計58万人。うち治療を受けている人はうち22%しかいない。
薬物については、松本さんらが調査した。
日本人の生涯の違法薬物経験率は、推計2.3%となる。
ギャンブル依存に関するデータもある。国⽴病院機構久⾥浜医療センターが2017年度に行った調査で推計した生涯のギャンブル依存症経験率は3.6%だ。
依存症は増えているのか?
松本さんは、アルコールや薬物のような物質に対する依存と、ギャンブルやゲームなどの行為への依存は分けて考えている。
地域保健・健康増進事業報告
「物質の依存症に関しては、横ばいか、減っている可能性がある。アルコールに関して言えば、若年層では飲酒しない人の割合が増え、患者の高齢化が進んでいます。昔、依存症になった人がいまだに依存症という状況です」
市販薬や処方薬の乱用は増加
著名人の違法薬物による逮捕が目立つが、むしろ違法薬物の使用は減っている。
「覚醒剤は20数年前は20代、30代の使用が目立ちましたが、今は50代が一番多い。バブルを知っているちょいワルおやじ達がいまだにやっている状況です」
「医療機関の受診者も、覚醒剤取締法違反で刑務所に入った人の平均年齢も上がっています。20年後ぐらいに覚醒剤は珍しい薬物になる可能性があると思う程です」
一方で、処方薬や市販薬の乱用は増えている。
「抗不安薬のデパスなどのベンゾジアゼピン系や市販薬の乱用はいまだに健在です。特にベンゾ系に関しては、10代の子で乱用が進んでいる」
「でもアルコールや覚醒剤の減り方の勢いをしのぐほど増えているわけではないので、トータルで見ると、物質系の依存は微減かと思います」
ゲーム依存などは増えている
行動の依存はどうだろう。
「大幅に増えているとは思えませんが、地方都市では昔からずっと大きな問題です。娯楽のない地方で、車で行ける街道沿いのパチンコ店は当たり前の存在になっていて、北海道や九州の医師たちは『ギャンブルが多くて大変だ』と言っています。首都圏だとあまりその実感がない」
「オンラインゲームなどを依存症と言っていいかはまだすっきりしない面もありますが、WHO(世界保健機関)の新しい診断基準、『ICD11(国際疾病分類第11版)』では『ゲーム障害』というものが入りました。それも依存症とすると、確実に増えているだろうなとは思います」
「そういう意味では非物質系の行動の依存症に関しては、増加傾向かもしれないと思っています」
ストレス社会で一瞬得られる「空想の万能感」
増えているゲーム依存。松本さんは、通勤・通学電車の中でもここ数年、スマホでゲームをする人が増えたことを感じている。

「スマホやインターネットなしでは生きられない社会状況になる中、電車の中で文庫本や新聞を読む人はいなくなりました。いい大人がスマホでゲームをやっている。僕も嫌なことがあった時によくやるので、ゲームをやるサラリーマンたちを見ていると、この人も嫌なことがあったのだろうと思います」
嫌なことがあった時に、ゲームをやることはどう心に作用するのだろう。
「囚われていることや心配なことから一時的に距離を置ける。僕はオセロなど単純なゲームをよくやるのですが、何度もくりかえしやっているとあたりまえですがAIにも負けなくなります」
「そうなると、相手を叩きのめす感じ、クリアする感じに快感を覚えます」
「思うにまかせぬ人生の中で、ささやかなセルフコントロール感や空想上の万能感を得ようとしているのでしょうか」
依存が渇望を生み出している側面も
「ゲームにしてもパチンコにしても、依存は酔いの中で万能になる。酒で酔っ払ったおっさん達も居酒屋で上司のこき下ろしをして、自分が世界で一番偉いかのように振る舞います。一瞬でも天上天下唯我独尊になるわけです。覚醒剤もそうです。人間ってそういうことがないと生きていけない生き物なのでしょう」
だが、スマホやゲームがない時代は私たちはどうして過ごしていたのだろうか。
「かつてはそれがなくてもうまくやっていた気もするし、文庫本を読んで空想の中でリラックスしたのかもしれませんが、今はゲームをやってすっきり感を得る。しんどい会議が続いた後に、一服して気持ちを切り替えるのと同じです」
「それがなくても大丈夫だったのが、生活にそれが入り込んでくると、ないと落ち着かなくなる」
「依存性の物質や依存性の行動によって、新たな渇望や依存を生み出している面もあるのです」
違法薬物よりも多い処方薬、市販薬依存
依存症からの回復を目指す「ダルク女性ハウス」に来る女性が使う薬物のほとんどは、違法薬物ではなく、処方薬や市販薬だ。
最近、「ダルク女性ハウス」代表の上岡陽江さんはブロン依存に悩む10代の子の相談を受けたばかりだ。
「いじめで学校に行けなくなり、みんなが『しんどい』と書いている裏サイトに行き着いて、『私だけじゃなかった』とホッとする。同時に、誰かとコミュニケーションを取ろうとして、『ブロンを飲むと1日乗り越えられるよ』と声をかけられ、ネットで買い始めるのです」
歴史をたどれば、こうした処方薬や市販薬の依存の流行は繰り返されてきた。

抗不安薬の「デパス」、ADHD(注意欠如・多動症)やナルコレプシーの治療薬「リタリン」、咳止めの「ブロン」の乱用は、20〜30年前に流行ったものが、現在にも復活している。
「例えばブロンなら、今50歳ぐらいの人たちが30年程前、『いい子の息切れ』のような状態で、『ブロン飲むと勉強に集中できるよ』などと言われて依存してしまうのが問題になりました。今は、いじめを受けている子どもたちが裏サイトでブロンに出会っています」
「薬物依存症の女性の多くは、たいてい抑うつ状態になっているので、頭痛薬や睡眠薬のお世話になることが多い。人とは会わずに引きこもり、人に助けてとは言えなくて、頭痛薬や胃薬や睡眠薬で紛らわせているうちに、薬がてんこ盛りになる。それなしではいられなくなるのです」
使用者は被害者 根元の問題に目を向けて

上岡さんは、薬物やアルコールに依存する人が糾弾され、違法薬物では「再犯防止」のために厳罰を科されることに疑問を感じてきた。
「女性の場合は、『被害者』が刑務所に入っている。薬物依存症者の多くは夫や親の暴力の被害者です。国内でも海外でも女性の支援をしている人たちはみんな、約9割が被害者だとよく話している。それなのに、DVの夫や殴りつけた父親は外にいる。女性たちが刑期を終えて外に出ても、住むところや仕事がなくて、結局、加害者の元に戻らざるを得ない。『再犯防止』っていったい何なの?と思うわけです」
上岡さんも参加している「日本薬物政策アドボカシーネットワーク」の事務局長でソーシャルワーカーの古藤吾郎さんは、違法薬物を使う人の大半は、依存症ではないということが日本では理解されていないと感じている。
長年、薬物を使ってきたはずのピエール瀧さんや沢尻エリカさんが、一線で活躍してきたのをみんな知っているにもかかわらずだ。
国連薬物犯罪事務所(UNODC)のWorld Drug Report(2019)では、過去1年間で違法薬物を使った人のうち、生活に支障をきたす「依存症」と呼べる状態に陥っている人は13%とされている。
「アルコールを飲む人、ギャンブルする人全てが依存症になるわけじゃない。本人たちが困っているのは住むところや仕事がないことかもしれないし、暴力を振るわれることかもしれない」
「一番の困りごとは薬物以外であることが多いのに、薬で逮捕されるとまずやめさせて、回復プログラムに参加させようとする。それは、当事者にとっても的外れだし、プログラムの提供者にとっても不幸な結果に終わることが多いのです」
薬物政策は、本来、薬を使わざるを得なくなった貧困や暴力問題への対策にまず手をつけてもらいたいのに、そちらにはほとんど目が向けられていない。
上岡さんも言う。
「女性なら、10代の頃から貧困や虐待などに苦しんでいることが多いのです。それでも、助けてと言える場所がありません。だから、捕まる前、薬やアルコールに依存する前から、根元の問題をちゃんと支援してくださいと言いたいのです」
罰は有効でなく、むしろ有害

松本さんも、依存症に関して厳罰を科すことや、それを報じてバッシングすることに対しては一貫して反対の意見を述べてきた。
「罰が有効であるというエビデンスはないのです。むしろ、罰はどうも効果がないという科学的なエビデンスは結構出てきている」
「それに人間の創造性というのは驚くべきもので、何かを罰して規制してもすぐに次のものが出てきます」
「ストロング系チューハイの話もそうですが、人間は時には酔ったり、時には遊んだりしたりすることをあちこちに散りばめないとやっていけない生き物です」
「それを一切排除するのは不可能で、人間がどうにか生きていくための必要悪として認めながら、我々がより安全に酔ったり、遊んだりしたりするにはどうしたらいいかという議論の方が必要なのではないかと思うのです」
ただし、ギャンブルについては意見を保留している。
「ギャンブルについて言及したくないのは、今の社会状況では、『じゃあカジノもいいですよね』という話がついてきてしまうからです。カジノがいいとは思ってはいない」
規制すると、さらに有害なものが生まれる歴史
「どんなに規制しても人間は必ず何か似たようなものを見出します。そして後から出てきたものの方がより酷いことは歴史が証明しています」
どれだけ規制しても、より強い刺激を求めて、より有害なものが生まれることは、薬物でも問題となってきた。
「中国からヨーロッパに阿片が伝えられた時、ヨーロッパ人にあっという間に阿片が広まりました。そこで阿片を規制したら、今度はモルヒネを注射で使うようになり、モルヒネを規制したら、もっと強力なヘロインを使うようになった」
そこで、ヨーロッパは、健康被害をもたらす行動をただちにやめられない場合に、その害や危険をできるかぎり少なくする「ハームリダクション」に方針を切り替えた。
個人の少量の使用や所持については罰せずに、医療者の相談窓口につながりやすくする施策が導入されている国も多い。
ハームリダクションを否定したアメリカは?

「アメリカはそれでもハームリダクションを否定し、引き続き厳罰政策を貫きました」
「そのなれの果てが、フェンタニルのようなヘロインより強力な医療用麻薬が広がり、多くの死亡者を作り出す悲劇を招いた……。あくまでも私見ですが、そんな風に感じられてしまうのです」
アメリカではロックアーティストのプリンスさんらがフェンタニルの過剰摂取で命を落としている。
「叩くと次に出てくるものはもっと酷くなる。抗生物質が耐性菌を生み出し、さらに強い抗生物質を必要とするような流れが依存症の世界にも起きているのです」
排除ではなく、社会の中でつつみこむ
さらに、同じぐらい酒や薬やギャンブルをやったとしても、依存症になる人とならない人がいることを松本さんは指摘する。
「依存症になる人たちは、トラウマなど他にしんどい問題を抱えていることが多く、酒や薬やギャンブル以外にも問題を起こしている人が多い」
「その人たちこそは支援につながらなければならないのですが、厳しく罰することで治療や支援から阻害してしまう。治療後の社会参加も阻まれてしまうところがあるのです」
「ダメ。ゼッタイ。」がなぜダメか?
日本での違法薬物の逮捕者バッシングや、「ダメ。ゼッタイ。」運動に象徴される、薬物使用者に厳しい啓発活動も、支援につながるべき人を遠ざけ、依存にまで進むことを後押ししていると指摘する。
「規制や乱用防止のために、スティグマ化(負の烙印を押す)した格好でやるのが今の日本で、『薬物やギャンブルをやる奴は人間じゃない』というような啓発の仕方です」
「すると、その問題を抱えている人たちがますます地域で孤立し、孤立すればするほどますます依存行動が悪化するというスパイラルに陥ります」
「そういう少数の人を斬り捨てて前に進むという社会もあり得るのかもしれません」
「実際、少数者を切り捨てるために刑務所に入れてきたわけですが、むしろそれによって社会で生活できない人、出たり入ったりする人が沈殿していき、高齢化施設になってしまった」
違法薬物で捕まった人を1人受刑させるために使われる税金は1年で約400万円という。
「少数を社会から排除するためにそれだけお金がかかっている。年収が400万円ない人もたくさんいるのに、です。だから、社会で包摂した方がいいと考えています。その方がコストもかからない」
どのような対策が必要か?
では、私たちはどのような対策を考える必要があるのだろう。
「薬物とアルコールとギャンブルはそれぞれ違います。でも、乱用防止のための啓発をすると同時に、依存につながる問題を抱えている人たちに対する支援の窓口や支援を受けることの素晴らしさを伝えてほしい。問題を抱えたけれど、そこから回復した人は素晴らしいという価値観を創り出すことが必要です」
薬物依存症から回復しつつある元プロ野球選手の清原和博さんや俳優の高知東生さんが一般に体験を語っていることを松本さんは評価する。
「回復者の人たちに前に出てもらうことは大事です。匿名性を大事にする薬物やアルコールの回復プログラムは素晴らしいと思う反面、カミングアウトして、まだ回復していない人に希望を与えるのもまた素晴らしいと思うのです」
「アメリカでは、ミュージシャンのエリック・クラプトンやエミネムがAA(アルコール依存症の自助グループ)やNA(薬物依存症の回復グループ)のメンバーであることを公表しており、すごく大事な情報発信だと思います。日本でももっとあったらいいなと思いますが、日本ではだれも褒めてくれない土壌があります」
逆に激しいバッシングや排除に遭うことを恐れて、早い段階で助けを求めることさえしづらい状況が日本にはある。
人は孤立すると悪魔に化ける
「その価値観を変えていくのは難しいことですが、不可能ではない。薬を憎み、薬を使った人を憎まないという切り離しが必要なのだと思います」
「とにかく仲間はずれにして孤立させると、ろくなことが起きません。人は孤立すると悪魔に化けると思うのです」
「規制されると、反社会勢力にアクセスしなければ薬が手に入らなくなる。依存の酷い人たちは、その危険を冒してでも手に入れます」
「大麻はよくゲートウェイドラッグ(薬物乱用の入り口になる薬)と言いますが、それは大麻の薬理作用によってではなく、大麻を違法化することによって、反社会勢力との道筋ができることによってだと思うのです」
カナダは大麻の使用者を反社会勢力と切り離すために、合法化の戦略に舵を切った。
「規制して排除すると、排除されたマイノリティたちは、余計孤立しおかしな方向に進みます。だから、『ダメ。ゼッタイ。』ではなく、『ヤバい奴は抱きしめろ』とか、『つまづいた奴を孤立させるな』などを標語にした方がいいと思うほどです」
日本は規制が厳しいから使う人が少ないのだと、規制当局は必ず言う。
「でも、処方薬や市販薬の乱用でこれほど困っている国も他にはないのです。現実を見て対策を考えるべきだと思います」
違法薬物を使いながら生きる選択肢も
「日本薬物政策アドボカシーネットワーク」は2019年12月、メディアに向けて「薬物使⽤に対する現実的・科学的・合理的な理解に基づく情報発信を」を発表した。
ここで言う薬物とは、覚せい剤、⼤⿇など違法とされる薬物だけでなく、処⽅薬・市販薬も含めた。
合法な薬物の依存状態もあれば、違法薬物を使いながら社会生活を破綻させずにいる状態もあることをメディアに理解してほしいという狙いがある。
そして、個人の少量の使用や所持に関しては、日本のような厳罰ではなく、欧米のように微罪としたり、犯罪としなかったりして、健康被害を最小限に留める対策「ハームリダクション」の実現を願う。
薬物使⽤は犯罪だ/断薬が当然の成功だとする取り組みにより、薬物使⽤で困っている本⼈、家族・パートナーなど⾝近にいる⼈たち、そして薬物を使うことがある未成年の⼦どもたちも、ますます誰かに相談したり、⽀援を求めたりすることができなくなります。薬物使⽤がある⼈とその⾝近にいる⼈たちの尊厳を⼤切にする関わり⽅が求められます。
薬物を怖いものとし取締りを厳しくすることで、薬物使⽤は地下に潜み、地下にある薬物市場は発展しています。少量の薬物に係る犯罪は、ルール違反であったとしても被害者はいません。微罪とする、犯罪としない、規制許認可するなどさまざまな効果的な取り組み⽅があります。
本人にとっての「健康な暮らし」を尊重する
だが、一足飛びに、違法薬物の非犯罪化・非刑罰化などの司法対応の変化は実現しないだろうとも古藤さんは考えている。
「まず地域社会において、薬物使用を生活・健康・福祉面で支援する体勢が整えることが必須です。非犯罪化だけ実現しても、依存症の回復支援や依存症者を対象にした精神科医療しか利用できない状況では、そこまで進んでからじゃないと支援につながりにくい現実があります」
古藤さんも関わるNPO法人アパリ(アジア太平洋地域アディクション研究所)では、「ドラッグOKトーク」という、違法薬物を使っていたとしても、その状況を肯定しながら相談にのるホットラインを設けている。
「薬を使いながらもどうやって健康に暮らせるかという視点で向き合います。その中でもし困ることが起きてきたら、断薬という選択肢も提供できる。でも、それは私たちが最初から押し付けるものではありません。本人にとって健康的に暮らすということはどういうことなのかを尊重します」
専門家も「ハームリダクション導入を」
松本さんも、日本にハームリダクションの考え方を導入することに賛成の立場だ。論文もまとめている。
「トラウマを抱えている患者も多く、精神科の薬の副作用でおかしくなる場合もある。大麻が一番生活の破綻がないという患者も複数診ています」
「トラウマのセラピーができる医療者は限られているし、セラピーで心のふたを開けて生活が立ち行かなくなる時期を考えれば、大麻を吸いそこそこごまかしながら、自分らしく生きていくという手もある気がします」
「ベンゾ系や僕らが処方している治療薬も含めて、薬にはいい部分と悪い部分が必ずあります。違法・合法は根拠なく政治的な理由で決められていますが、もう少しニュートラルに捉えて、薬を使いながら、それで上手くいって誰にも迷惑をかけていないなら、それも一つの生き方かもしれないと思うのです」
もちろん、薬物を使うことに100%害がないと言っているわけではない。
「しかし、それは酒もたばこも処方薬や市販薬も同じです。我々専門家が研究した情報発信を受けながら、自分の中でリスクと天秤にかけて選んでもらうという選択肢があってもいいのではないかとも思います」
当事者を置き去りにしない丁寧な議論を
歴史的に違法薬物の厳罰化を徹底してきた日本では、急に舵を切ることは難しい。一方で、刑罰や規制をもって違法薬物をコントロールしようとしてきた歴史は浅いのも事実だ。
「少なくともメソポタミア文明の頃から、人類はアルコールやケシの花を使ってきました。薬物と共にあった人類の長い歴史の中で、実効性のある形で法と刑罰による薬物のコントロールが始まったのは1961年から。まだ60年しか経っていない」
「それで世界中の薬物の問題は解決に向かったかと言えば、むしろ正反対です。薬物によって死ぬ人やアヘンやコカインの生産量は激増している。規制が需要を作り出し、規制によって利権ができています。規制されば規制されるほど、闇での値段が釣り上げられ、反社会勢力に有利に働く」
規制当局は著名人の逮捕をメディアにリークして大きく報道させ、ワイドショーやSNSではバッシングを繰り返す。「ダメ。ゼッタイ。」が浸透しているそんな日本で、ハームリダクションへの理解は進むのだろうか?
「少なくともヨーロッパはそういう方向に舵を切っているということを知ってほしい。日本も直ちに切り替えるべきとは思いません。急な変更はどちらにしても悪い方向にいくことが多い。でも、教養のある人たちには知識を共有してほしいし、どんな対策が本当に効果的なのか丁寧に議論していきたいのです」
その議論には、当事者の健康を守るために、合理的に効果があるのは何かという冷静な視点が必要だ。
薬を使ったことは支援につながる「入場券」

「僕の外来に来る人は薬だけが問題じゃない。他に困った問題があります。薬を使ったことは支援につながる『入場券』です。薬を使う使わないの問題は、通院を始めて2、3年で終わり、その後は別の困りごとについて定期的に話し合っていることがすごく多い」
「一方で、世の中には困りごとがないけど、うまく薬やお酒を使いながら生活している人もいっぱいいます。高い税金を使って、その人たちを犯罪者として排除し続けることが、社会に対していかほどの意味があるのか」
「犯罪化すれば、反社会勢力の人たちがビジネスを始めて大きく育ってしまいます。規制するということは、それを破る闇の人たちが出てくるということ。そろそろ日本でもこの構図に気が付いた方がいいと思います」
【取材・文 岩永直子(BuzzFeed Japan)】
外部リンク
生まれつき、顔に青いあざがある高校生、瑠璃子を主人公とする漫画「青に、ふれる。」が話題を集めている。
学校生活の中で、教師や友人、そして自分と向き合い、恋や友情を通して成長する瑠璃子の姿を描く作品だ。
作者の鈴木望さんも、瑠璃子と同じように、生まれつき顔に青あざがある。
自身と同じ症状を持った主人公の漫画を描く理由、そして漫画を通して伝えたいことを、鈴木さんに聞いた。
「青に、ふれる。」著者の鈴木望さん
瑠璃子が持つ青いあざの症状は、「太田母斑(おおたぼはん)」というものだ。
通常、目のまわりや頬など顔の片側に青あざが生じるという。
「あざを持った女の子が主人公の漫画は、ずっと描きたいと思っていたテーマでした」
鈴木さんは語る。
あざをもつ高校生の瑠璃子を等身大で描いていくなかで、鈴木さん自身が幼い頃から抱えてきた、あざへのコンプレックス、それを他人からからかわれた経験など、自身の経験と重なる部分も多いという。
太田母斑や見た目に人と違いがある症状について「こんな症状があるんだよ、と知ってもらいたい」と鈴木さんは話す。
「そして、生まれつきの見た目に関する症状など、自分の力ではどうにもならないことが原因で人に何か言われたり、嫌な思いをしたら、その気持ちと向き合って、ちゃんと『癒して』と伝えたいです」
「もし癒す場所がなければ、漫画がその『場所』になればと思います」
鈴木さん自身が10、20代の頃、あざの症状で悩んでも、人に相談したりできずに「自分の気持ちに蓋をして生きていた」経験からくる思いだ。
「誰にも相談できず、考えないようにしていた」
鈴木さんは子どもの頃など、あざに関して病院で診断を受けたことがなかったため、高校まで「太田母斑」という言葉すら知らなかったという。
太田母斑は思春期の頃に発症したり、あざが濃くなったり広がったりする。
鈴木さんの場合は、生まれつき目の周りにあったあざが、中学生になってから広がり始めたという。化粧にも興味が出始め、見た目も気になる頃だった。
「でも誰にも相談できなくて。考えても仕方ないと思って、あまり考えないようにしてました」
「高校生の時にコンタクトレンズを作りに行った時に『太田母斑あるね。緑内障に気をつけてね』と眼科医に言われ、初めて太田母斑について知りました。他にも(同じ症状の人が)いるんだ、と思いました」
漫画を描き始め、初めて人に話した「思い」
10、20代の頃、ずっとあざについて「話せなかった」という鈴木さんだが「やっと最近になって周りにも話せるようになった」という。
あざやコンプレックス、それと向き合うことについて初めて深く話したのは、「青に、ふれる。」の編集者だったという。
この作品を連載する前も、他の出版社で、あざのある女の子を主人公にした作品を提案したことがあった。
しかしその際は、「あざがある女の子は読者に受け入れられない」「可哀想な女の子の話で『感動モノ』のストーリー」という様に、編集者の中で固定観念やイメージが作り上げられており、描くには至らなかったという。
しかし「青に、ふれる。」では、鈴木さんが描きたかった、ありのままの女子高生の姿を描くことになり、作品を描き進める中で、信頼できる編集者にキャラクターの瑠璃子だけでなく、鈴木さん自身のあざに対する思いについても話すことができた。
「自分が受けていた嫌なことや過去について、私の場合は30歳を過ぎるまで、向き合うことができず、心のケアも出来ずにいました。本当はもっと若い頃から、傷ついたその時からケアしてあげることが大切だと思います」
「ずっと誰にも話すことができなかった私のような若い世代の子たちが、いっぱいいるのではと思いました。どうしたら言えるようになるのか、周りに抱えている子がいたらどういう風に寄り添えるのか、ということも描きたいと思っています」
第2巻の表紙。瑠璃子が出会う「相貌失認」を患う高校教師
漫画では、高校生の瑠璃子は「相貌失認」という、人の顔を判別できない症状を患う教師と出会う。教師が抱えるコンプレックスなども知り、葛藤に苦しみながらも、過去の辛い経験などとも向き合っていく。
「気持ち分かり過ぎる」同じ症状の読者からの声
漫画の編集者に話したことを契機に、あざやコンプレックスについても人に話すことができるようになった鈴木さんは、あざや見た目に症状を持つ人たちを、漫画を通して勇気づけている。
漫画は、月刊アクションで連載され、電子コミックの配信サービスで読むこともできる。
配信サービスのレビュー欄には読者から多くの感想が寄せられている。自身も顔にあざがあるという読者や、子どもに太田母斑の症状があるという読者もいる。
レーザー治療であざを治したという読者は「ヒロインの気持ちが分かりすぎるくらい。ホロリとするシーンもあった。他の人のコンプレックスと比べてよくへこんだりしていた」という声を寄せている。
鈴木さんは寄せられる様々なレビューや近年の報道での「見た目問題」についての取り上げられ方を見て、こう話す。
「『まだこんな見方をする人もいるのか』という人と『こんな見方をしてくれる』という人、半々ぐらいですが、見た目に症状を持っている人に対する、社会の見方や考え方が変わってきているとは思います」
あざはレーザー治療をすることもできるが、鈴木さんの場合は、眼球にも症状があるため、失明の危険性などがあったために、レーザー治療はしていないという。
鈴木さんは、見た目に影響する症状がある人たちが抱える問題について取り組むNPO法人マイフェイス・マイスタイルの活動にも参加し、見た目に症状を持つ人と話す機会も増えた。
「気持ちを吐き出して、寄り添ってもらって、とことんまで傷と向き合ったら、もう上がるしかない。(見た目に症状がある)当事者とか、社会全体に向けて発信していきたいと思いました」
最後にトーンであざを「貼る」作業
連載を始めてから、鈴木さんは何カットもの「瑠璃子」を描いてきた。
しかしそれでも、顔にあざがある主人公を描くのを「辛い」と感じることがあるという。
漫画を描く工程として、ストーリーのもとになる「プロット」の後に、こまをわって絵を描き始める「ネーム」、「下書き」「ペン入れ」「消しゴム」「トーン」という段階がある。
「作業工程として瑠璃子は最初、あざがないんです。消しゴムをかけて最後にトーンをのせる時にあざをのせます」
「瑠璃子が可愛い!と思って描いているのに、わざわざトーンを貼るとなんとも言えない気分になるんです。見た目に症状を持っている親御さんの気持ちってこんな感じなのかな?とも思うようになりました」
また、瑠璃子が漫画の中で、あざのことで他人にひどい事を言われたりするシーンも自身の過去を思い出してしまうという。
「昔されて嫌だったこと、言われて傷ついたこと、またはその時どんな状況で相手はどんな表情をしていたかを思い出してしまいます。プロットからトーンをのせる全ての工程で、毎回それを思い出すことになるんです」
鈴木さんは「心を『整える』作業の反対側を行っているという感じです」と苦笑する。しかしそれでも、自身の経験を含め、あざの症状を持った主人公のストーリーを固い決意で描き進めている。
描きたかった「生きづらさ」と「青に、ふれる。」
中学生の頃から漫画を描き始め、大学を卒業し24歳でデビューしてからも、漫画一本で生活していけるようになるまで、会社員やバイトをしながら描き続けていたという。
「ずっと漫画が好きでした。でも、好きかどうかを考える間も無く描いていました。家庭環境などから来る『生きづらさ』について描きたかったんです」
「生きづらさをどう抱えながら生きていくか。そもそも生きづらさって解消できるものなのか私自身も分からなかったし、分からないからこそ皆『生きづらい』って言っているんだろうなと思います」
いま、瑠璃子を通し「生きづらさ」や辛い過去の経験、コンプレックスと向き合うことについて考え、そして漫画でメッセージを伝えている。
「青に、ふれる。」を通して「伝えること」を決意したら「協力してくれる方がいっぱいいた」と鈴木さんは話す。
「応援してくれる人がたくさんいて。だから、何としても『青に、ふれる。』っっていう作品を描くんだ、って思えます」
「青に、ふれる。」は、コミックス第1巻が2019年7月に発売され、2月12日には第2巻が出る。
鈴木さんは、笑顔を見せながら、こう話した。
「この作品を一人でも多くの人に読んでもらえれば、世の中よくなるでしょ、っていう思いで描いています」
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外部リンク
今、注目を集めているアニメ『映像研には手を出すな!』。女子高生3人がアニメ作りに奮闘する中で、メカやロボットなど一般的に「男の子っぽい」とされるモチーフも多く登場します。
「なぜこの内容で男じゃないの?」「なんで女子高生なの?」
原作者の大童澄瞳さんの元には、そんな疑問がこれまで度々寄せられてきたといいます。大童さんの考えるジェンダー観……もとい、“かわいい”論を聞きました。
大童澄瞳さん。原作で浅草氏が愛用しているものと同じリュック
「オタクを鑑賞する」楽しさ
――Twitterの使い方を聞いてあらためて感じましたが、大童さんはより多くの人に読んでもらうことを大事にしていますよね。「わかる人だけわかってくれればいい」という方向にいかず。
例えば鉄道とかアイドルとか、いわゆる「オタクが好む」ジャンルってありますが、その外に「オタクを鑑賞する」ってジャンルがあるじゃないですか。「アメトーーク!」なんかもそうですよね。
何かに没頭している人を鑑賞するのは楽しい。情熱を持って語る人はおもしろい。
浅草みどりは「設定が命」と力説するアニメ好き。映像研では監督的な役割を果たす
そういうおもしろさにつなげられれば、そこそこ誰にでも響くんじゃないかなって思っていました。もちろん「僕が好きなことを好きに描いている」趣味全開の要素もありますけどね。
細かく描きこまれた設定画ページは見どころ(アニメでも時たま登場)。浅草氏の脳内を覗き見るようで楽しい
あと、多くの人に響くだろうと思えた理由は、根底に「子どもが想像した世界」があることかな。
――確かに「これが私の考えた最強の世界!」は多くの人の身に覚えがありあますよね。
子供の頃好きだったものってなんとなく「そういう時期もあったよね」って卒業しちゃいがちですけど、別に好きでい続けていいんですよね。
アニメーター志望の水崎ツバメ。「リアルなアニメーション」に並々ならぬこだわりがある
――部室の秘密基地っぽさにわくわくするし、「いい感じの棒」に喜ぶ浅草氏や水崎氏の気持ちもわかるし。
そうそう。おとなになってもまた秘密基地を作ってもいいし、「いい感じの棒」を見つけたら振り回してみてもいい。
「いい棒」を巡って争う浅草氏と水崎氏
僕は今もどんぐりが落ちていたら拾うし、道端できれいなBB弾を見つけるとうれしいですよ!
――BB弾って言葉、久しぶりに聞きました(笑)。
たまに落ちてるんで、探してみてください(笑)。
映像研の3人が楽しんでアニメ作りを、最強の世界の夢想をしていれば、多くの人にも同じように「わかる」「楽しい」と思ってもらえることはTwitterの肌感覚で知っていたので。
今回TVアニメになったことで、さらに一緒にワイワイしてくれる人が増えてうれしいです。
プロデューサーとして予算獲得交渉や進行管理などで活躍する金森さやか。クリエイター気質の2人をうまくマネジメントしている
「なんで男じゃないのか」はよく聞かれる
――「なんで映像研の3人は、この設定で男じゃないんだろう」という視聴者のツイートから、ネット上では少し議論が巻き起こっていました。
これね!「なんで男じゃないのか」「なんで女子高生なのか」って質問はよく言われます。
まず僕は別に、人一倍ジェンダー観に気を使っているわけではないんですよ。自分自身基本的には異性愛ですし、かわいい女の子が好きだし、かっこいい女の子も好きだし。
で、人によって好みのタイプがいろいろある中で、僕が好きなタイプがいわゆる「女の子らしい」子じゃなくて、「人間」っぽい子だったんですよ。
――なるほど、大童さん自身の「かわいい」のストライクゾーンが。
そうです、そうです。むしろ「かわいい女の子ってかわいくないじゃん?」ってところすらありますね。
いわゆる「かわいい」状態って、追求して到達し得るというか、ある想定の範囲に収まっているじゃないですか。そこからはみ出しちゃう愛らしい個性こそが「かわいい」だと思っていて。
整った顔も芸術的に美しいと思いますが、「丸書いてちょん」みたいな浅草の動物っぽい顔も大好きです。
――「映像研は女の子がかわいすぎなくて新鮮」なんて言い方もされていますが、大童さんにとっては……。
かわいいですよ! いや別にそう言われてムカつくことはないし、気持ちはわかりますが(笑)僕には3人ともかわいいです!
というか、自分が思う「かわいい」造形って、この連載が始まるまで世間一般と近いと思っていたんですよ。みんなが思う“かわいい女の子”を自分も描けていると。
なんですけど、ある日家族に「え、澄瞳、自分の絵が普通だと思ってたの? 全然違うよ!?」ってマジなトーンで言われて「普通じゃなかったんか〜い」ってそこで知りました。
――ジェンダー観というより、かわいい観の違いというか。
「おっさんの趣味を女の子に肩代わりさせてる」と捉えられることもありますけど、まず「おっさんの趣味」って何? ってところありません?
浅草や水崎のようにメカニックやアニメーションが大好きな女の子だってたくさんいますし、乃木坂46のライブ会場に行くとびっくりするほど「アイドルオタク」の女子は多いですし。「おっさんの趣味を肩代わりされた女子」じゃなくて、よく見たらそれって「ただのオタク」なんですよ。
第5話で映像研はロボットアニメ制作に着手する
――「これはおっさんの趣味」という見方がまず先入観かもしれない。
そもそも「なんで男じゃないの」って疑問自体が、僕は全然悪くないと思うんです。
アニメやマンガのよくある文脈とずれているから「普通じゃない」と感じる気持ちはわかるんです、僕もそのカルチャーに触れてきた人間として。あの流れの中で「わかってない人」みたいに捉えられていて申し訳なかったですが……。
そこで「反射的にそう思っちゃうのって、ちょっと偏っていたな」と気づけば少し視野が広がるかもしれないし、世間のキャラクター造形に対する思い込みがやわらいでいくかもしれないし。でもそれは、あえて狙っているわけでもなんでもないですね。
なんにせよ、「人間」です、僕が描きたいのは。かわいい女の子を描きたい欲もあるので、「かわいい女の子という人間」を描いている……っていう感覚です。
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2月3日撮影。清掃員が高圧洗浄機で道を洗浄している。
1月26日撮影。武漢中心部の一般車両の走行禁止が発表されたあとの道路。
1月29日撮影。路面店はどこも閉店している。
1月31日撮影。走行中の車は見当たらない。
2月3日撮影。春節(旧正月)を祝うオブジェがあるが、人はまばらだ。
2月3日撮影。ホテルの部屋の前に置かれた夕食を手に取る女性。
2月3日撮影。武漢から出られなくなった人々が宿泊するホテルの前で、防護服を着たままテーブルに座る政府職員たち。
2月4日撮影。国際会議展示場を臨時病院にすべく、仕切りを組み立てる作業員たち。
2月4日撮影。国際会議展示場にベッドを運び込む作業員。
2月4日撮影。国際会議展示場には、大量のベッドが並べられた。
2月4日撮影。臨時病院として姿を変えた武漢市内の体育館。
2月2日撮影。建設が進んでいた新病院「火神山医院」は、同日完成が発表された。約1000台のベッドが収容されており、新型コロナウイルスによる肺炎患者を専門的に受け入れる。
2月1日撮影。武漢天河国際空港から、ヨーロッパへ避難するチャーター機が出発した。防護服に身を包んだ職員が書類を持っている。
2月2日撮影。武漢天河国際空港に到着した軍の医療スタッフ。
2月1日撮影。武漢中央病院に防護服とマスクを運ぶ医療スタッフ。
2月2日撮影。火神山医院の廊下を歩く男性。
2月3日撮影。病室の準備をする火神山医院の医師ら。
火神山医院の隔離病室。
2月3日撮影。防護服に身を包んだ男性がホテルの外で消毒を受ける。
医療廃棄物の処理をする漢口病院の職員。
2月4日撮影。火神山医院に患者を運び込む医療スタッフ。
2月4日撮影。火神山医院でカメラに向かってポーズをとる医療従事者。

この記事は英語から翻訳・編集しました。 翻訳:髙橋李佳子
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トランプ大統領の任期満了に伴い、11月に実施される大統領選本選に向けて、民主党内で熾烈な候補者争いが繰り広げられているアメリカ。
選挙戦の皮切りとなったアイオワ州党員集会で、民主党候補に名乗りを上げているピート・ブティジェッジ氏に投票した女性が、ブティジェッジ氏がゲイだと知り、「投票を撤回したい」と主張する動画が物議を醸しています。
ゲイ公表の最年少候補
ピート・ブティジェッジ氏
アメリカの大統領選挙ではまず、すべての州と準州で党員集会や予備選挙を行い、アメリカの二大政党である民主党と共和党から、本選に出馬する候補者を決めます。
今回の選挙では、トランプ現大統領が共和党の候補者に選ばれることは確実視されているため、トランプ氏と本選で一騎打ちをすることになる民主党の候補者に、誰が選ばれるかが焦点となっています。
候補者レースでこれまで有力視されてきたのは、オバマ政権で副大統領を務めたジョセフ・バイデン氏(77)のほか、格差解消を訴えてミレニアル世代の支持を集めているバーニー・サンダース氏(78)や、前ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏(77)など。
そんな中、最年少の候補者で、インディアナ州サウスベンド前市長のピート・ブティジェッジ氏(38)がどれほど追い上げ、存在感を示せるかも注目が集まっていました。
ブティジェッジ氏はゲイで、同性パートナーのチャスティン・ブティジェッジさんと結婚していることを公表しています。選挙キャンペーンでは、チャスティンさんもイベントに登壇したり、一緒にメディアの取材を受けたりするなど、夫を支えてきました。
昨年5月には、TIME誌がブティジェッジ氏カップルの写真を表紙に掲載し、大統領とその家族を意味する「ファーストファミリー」と題したことが話題を呼びました。
「そんな人にホワイトハウスにいてほしくない」
そんな中、2月3日に開かれたアイオワ州の民主党・党員集会で、一度はブティジェッジ氏に投票した女性が、ブティジェッジ氏が同性婚をしているとは知らなかったといい、投票撤回を求める様子を撮影した動画が拡散しました。
動画では、胸元にブティジェッジ氏への支援を表明するステッカーを貼った女性が、ブティジェッジ陣営の選挙区幹事に「ピートは同性のパートナーと結婚しているってこと?冗談でしょ?そんな人にホワイトハウスにいてほしくない」と訴える様子が映っています。女性「ピートは同性のパートナーと結婚しているってこと?冗談でしょ?そんな人にホワイトハウスにいてほしくない。だから私の票を返してくれる?」
選挙区幹事「でも、そもそもピートは私やあなたと同じ人間で、(同性愛者かどうかは)問題になるべきではないですよね?」
女性「なら、ピートは聖書を読んだ方がいいんじゃない?」
選挙区幹事「読んでますよ。その上で、彼は聖書は政党を選ばないと言っています」
女性「じゃあなんで聖書には、男は女と結婚するべきだと書いてあるの?」
選挙区幹事「あなたの意見は尊重しますが、聖書が書かれたとき、私たちはまだこの世にいなかったわけですよね」
女性「なんで(彼のセクシュアリティが)今まで話題になってこなかったの?」
選挙区幹事「もう広く知られた常識なので…」
女性「私は聞いたことなかった」
選挙区幹事「必要なら誰かが対応してくれるか、相談してみます。ちょっとどんなルールになってるかわからないですけど…」
選挙区幹事「でも私からあなたにお願いしたいのは、自分に深く問いかけてみることです。その候補者の言うことを信じるならば、その人が女性か、男性か、異性愛者か、同性愛者かは関係ないと思いませんか?それが私からの質問です」
女性「そんなのもう全部トイレに流しちゃったわよ」その後も選挙区幹事は女性に対して、「私もキリスト教徒ですが、私の神様はすべての人を愛することを求めています。あなたと私で聖書の解釈は違うかもしれないけど、私は息子にどんな愛も愛で、みんな同じ人間なんだと教えています」と語りました。
民主党の候補者全員が「同性婚を支持」
CNBCによると女性はその後、票の撤回を認められ、上院議員のエリザベス・ウォーレン氏に投票したとされています。
地元の党支部の幹部は、CNBCの取材に対して、選挙区幹事の冷静な対応を賞賛。その上で、民主党の候補者に名乗りを上げている全ての政治家が「同性婚を支持している」と指摘しました。
NHKによると、集計率が100%に達した6日時点で、ブティジェッジ氏が僅差で首位に躍り出たと報じられましたが、集計ミスがあったとの情報などから、まだ最終的な結果は確定していません。
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自身も、そして父親も直木賞作家。それは誰もが望んで手に入れられるような人生ではない。
小説家・白石一文の人生は、その1点だけを切り取れば華々しい。
「病気になってね、届けも出さないで急にいなくなったんですよ(笑)」
若かりし頃。自身の休職を振り返り、白石は悪びれることなくそう口にする。まるで、他の誰かの話をしているような口調だ。
パニック障害で休職し、会社を去った。家を出た日から20年以上も妻と息子とは音信不通だ。
「もうね、僕の人生は大失敗。大失敗なんですよ」
躊躇せず、そう言い切る。
でも、なぜ?
白石は最新刊『君がいなければ小説は書けない』で露悪的とも言えるほど自分の人生をさらけ出している。
本書の主人公は元大手出版社勤務の小説家。籍は残したまま妻子を捨て「ことり」という女性と夫婦同然の暮らしを長く続けているが、ことりの母が病を得たことをきっかけに別居を余儀なくされる。ことりの不在は、自らの人生を反芻する時間となっていくのだが、主人公の人生は白石の人生とぴたりと重なる。(敬称略)
突然消えた「将来の社長候補」
周囲はきっと突然の休職に戸惑ったに違いない。記者・編集者として様々なネタを追いかけていた当時の白石は、周囲から「未来の社長候補」と将来を嘱望されていた。
休職の直接の原因は家庭で抱えたトラブルだった。妻との生活が上手くいかず、精神的にすり減っていたと振り返る。
「僕が土下座して結婚してもらった相手だったんだけど…人間関係ってダメになるときはダメになるんだよね」
どんな状況であれ、生活のためにも仕事は全うする。そんな自分への厳しさが、徐々に白石を追い込んだ。「これが本当に自分のやりたいことなのか?」胸の内には仕事への迷いも抱えていた。
誰からみても順風満帆。出世街道をひた走る男の人生は、ここから狂い始めた。
このままではダメになる。心を決め、手帳に退職の予定日を書き込んだ。だが、当時抱えていた訴訟に向けた打ち合わせなど仕事が重なり、退職届を出すタイミングを逃した。
退職届を提出するはずだった日から5日後、突然体が震え出す。動くこともできなかった。
パニック障害の発作だ。会社で働き続けるという選択肢が消えた。
「あの日は、抱えていた大きな裁判について弁護士と打ち合わせをする日だったんです。でも、なんでこんなことをしないといけないんだろうって、嫌になってしまった。だから、もう帰ろうと思って会社を出たんです。誰にも言わずに」
パニック障害で飛行機には乗れない。ふらふらになりながら東京発博多行きののぞみへと乗り込む。
「新幹線に乗ったとき、もう僕の会社人生はおしまいだと思ったね。これまでは順調にいっていたけど、ここでおしまいだなと。でも、同時に救われたなとも思ったんですよ。これでもう、あれこれ考えなくて済むんだって」
「妻とも子どもとも別れて、会社もやめることになる。そうすると、それまでの全てがパーになるでしょ?でも、そういう状況に追い込まれるまで、自分で決めることが出来なかったんですよ。それをやっと病気が決めてくれた」
病が、白石を救う。
生き別れた息子へ
今でも悔やむことがある。
もしも、発作が起きる前に会社を辞めていたら。つい考える。
「あの日辞めることができていたら、妻との関係は違う形になっていたと思う。別れるにしたって、何十年も音信不通の状態にならずには済んだかもしれないよね」あれは息子が小学校低学年の頃だったろうか。具体的にいつだったか、一体どういう状況でだったか記憶にないのだが、私は息子に向かって、「お前なんて生まれてこなければよかったんだ」と口にしたことがある。
弁解がましい話だが、私は一度だって息子のことをそんなふうに思ったことはなかった。そのときも本心からそう思ってなどいなかった。
だが、私はさながらテレビドラマのどうにもならない父親のようにはっきりと「お前なんて生まれて来なければよかったんだ」と彼に言い放ったのだ。そばにいた妻のりくに聞かせるためだった。彼女を痛めつけたいがために、私は彼女が誰よりも愛する人間を傷つけようと考え、自らの憎悪のそれほどまでの深さを妻に対して知らしめようとしたのである。
あの瞬間の息子の表情はいまでも忘れられない。
ー『君がいないと小説は書けない』自伝小説にはこんな一文もつづられている。
夫婦喧嘩をきっかけに、当時中学生だった息子を置いて突発的に家を出た。翌日からはホテル暮らし。その後はウィークリーマンションを借りて生活した。
今は別の女性と暮らす。
「息子とこういう形で別れたことで、僕の人生は大失敗です。取り返しがつかないことをしたと思っている。この先、何があっても大失敗ですよ」
失敗という言葉を繰り返す。
「例えば、息子が住んでいる沿線で人身事故が起きたとします。そうしたら、ネットでずっとそのニュースばかり調べてしまうんです。飛び込んだのは男性だったのか、女性だったのか、何歳ぐらいの人なのか。自分の子どもじゃないと確認できるまでは眠れなかった」
「感染症が流行れば、息子もかかったんじゃないかと心配になる。うちの息子は体の弱い子でしたから」
息子が二十歳になるまで、この状態は続いた。
「息子と関わりを持たなかったことは自分の責任です。でも、大失敗だったね」
「だからこそ…」と言葉を続ける。その失敗も必然だったと、自分自身にも言い聞かせるように。
「その損失を補うには小説を必死になって書くしかなかった」
「小説を書くために息子と離れるしかなかったんだと思わざるを得ないんですよ。小説というのは僕にとって、生きていくための仮設住宅のようなものでした」
普通だったら書けない。でも…
白石の小説には休職や退職を経験したキャラクターが数多く登場する。
10作目『永遠のとなり』は、うつ病で会社を辞め、妻子と別れて故郷・博多へ戻った男が主人公だ。
彼は退職金の大半をローンの返済と慰謝料に費やし、別れた妻子の生活を支えながら社会復帰を目指す。そんな日々の中、通帳の残高は容赦なく減っていく。
息子から時々届く手紙には、専門学校へ進学するための入学金と学費の工面を依頼する事務的な言葉だけが並ぶ。言われた通りの金額を振り込んでも、返ってくるのは血の通っていない社交辞令ばかり。
どこまでも我が子への思いは一方通行だ。
その思いを小説の中で主人公は以下のようにつづる。文弥には私のような人生を歩んでほしくない、と心から願う。
私はもはやこうして与えられた人生を、ただ黙って受け取って生きていくしかないが、今後幾らでも可能性のある彼には、もっと自由に気ままに、そしてじっくり孤独に耐えて生きてほしい。決して私のような中途半端な人生だけは選んでもらいたくない。
ーー白石一文著『永遠のとなり』そして、早すぎた結婚は失敗だったとも。結婚によって自分だけでなく、富士子や文弥もひどく傷つけることになった。痛恨の極みだったと思っている。
ーー白石一文著『永遠のとなり』
生活資金を妻と子どもに送り続け、時には友人や知人に借金をして生き延びる。小説の描写は、まさに白石、その人だ。
誇れるようなものではない過去や隠してしまいたくなるようなことすら、小説のネタにした。
「僕にとって書くことは治療行為」と白石は明かす。だから、書ける。「普通だったら書けないでしょうね」。それが偽らざる本音だ。
絶対に「逃げろ」と言葉をかける理由
『ほかならぬ人』の解説には、白石が送ったというメールの一文が引用されている。
それは、体調を崩して3カ月休職し、職場に復帰した編集者へ送ったメッセージだ。よくやりましたね。電車に乗れただけでも大成功ですよ。そうやってひとつひとつ、できることが増えていけばいいんです。ただ、人生には嫌なことがたくさんあります。そういうことからは、全力で逃げることです。僕はそれも生きるための勇気だと思います。
ーー白石一文著『ほかならぬ人』誰かが壁にぶち当たった時、多くの人はその壁を必死に乗り越えられるよう「頑張れ」と声をかける。だが、白石は違う。
「『頑張れ』という言葉をかけられて、無理して頑張ってしまう人もいる。だから、僕は絶対に『逃げろ』と言葉をかけるんです」
「誰かに相談をしている時点で、既に結構大変な状態にあると僕は思うんです。そんな状態の人に『頑張れ』という言葉をかける必要はない。だって頑張れという言葉を望んでいるなら、仮に『逃げた方がいい』と言われてもその人は頑張ることを選びますから」
無理をして頑張る、その辛さを誰よりも知っている。自分は心を病み、挫折した。でも、他の誰かが「ここまでの経験をする必要はない」。
だからこそ、逃げることも生きるための勇気と伝えた。たとえ、悔やんでも悔やみきれないことがあったとしても。
「ストレス耐性をつけることも必要かもしれない。でも、僕はちょこちょこと逃げ回った方がいいと思う。本当に」
「『あいつは腰が定まらない』と言われるかもしれない。だけど、体がボロボロになるよりも全然いいよ。気付けば、『腰が定まらない』と言っていた人が病気になったりする」
でも、それって怖くありません?
「結局のところやりたいことだけ手放さなければ、それでいいんです。お金がちょっと減ろうが増えようが、捨てる神あれば拾う神あり。これが終わったら、おしまいなんてことはありませんから」
男は今日も、逃げ続ける。
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20世紀初頭、チフスやポリオ、インフルエンザなどの感染症が流行した。感染の拡大を食い止めるために当時の人々がどう対処したか、写真で振り返る。中には今では信じられないような方法もあった。

1911年、チフスが流行していた頃。エリス島からニューヨークに到着した移民の子どもたちが、衛生官による検査を受けている。
(左)1910年頃、肺結核の流行を防ぐために、人々に唾を吐かないよう呼びかけるポスター。
(右)1897年、「インフルエンザ及びその他の呼吸器官の感染症の治療用消毒装置」の広告。消毒剤が混ざった気体を発生させる。
1917年、第一次世界大戦中。マラリア予防のため、イギリス兵士たちがマケドニア前線の沼地を開拓し干上がらせている。
1910年、パナマで撮影。パナマ運河の建設中、黄熱患者が簡易隔離ケージの中で横になっている。
1922年、ロンドンで撮影。インフルエンザの予防接種を待つ子どもたちの列。
1900年、ポリオを患った幼児が窓際で風にあたっている。当時は感染経路がよくわかっていなかったこともあり、横には「警告」の看板がある。
1916年、ポリオの大流行から逃れるためニューヨーク発の列車に乗り込む母子たち。
1926年撮影。マラリア予防のため、子どもを蚊帳で覆う女性。
1929年頃、ワシントンD.C.で撮影。ダニを捕らえるため、牛にキャンバス地の布を取り付ける農務省職員。当時流行していた家畜伝染病のアナプラズマ病は、マダニなどの吸血動物によって媒介される。
1917年撮影。男の子たちが首につけているのは、樟脳(しょうのう)を包んだもの。虫除けや芳香剤にも使われる樟脳は、当時インフルエンザ予防に効果があると言われていた。
1928年、フランス・リヨン大学の教授が「数分で風邪が治る装置」を開発したと発表し、実際に装着して見せている。
1919年、スペイン風邪の流行中に「インフルエンザマスク(治療用マスク)」を装着する患者。
1920年、ロンドンのバスで男性が床に除菌スプレーをまいている。
(左)1918年、ニューヨークで撮影。インフルエンザ予防のためにガーゼマスクをつける交通警察官。
(右)1918年、ニューヨークで撮影。同じくインフルエンザ予防のためマスクをつける清掃員。
1918年、スペイン風邪の流行中にマスクをつけたまま野球をする人々。
1933年、イギリス・ハートフォードシャーで撮影。手足口病が流行する中、男性が自動車を除菌している。
1922年、ロンドンで撮影。男性がインフルエンザの予防接種を受けている。
(左)1939年、インフルエンザの感染を防ぐため「キスをしないで」と書いたサインを首につける乳児。
(右)1930年頃、イギリス・マーゲートで撮影。母親と思われる女性が押す乳母車には、同じく「キスをしないで」の文字が。
1930年頃、ロンドンで撮影。インフルエンザ予防のために消毒マスクをつけるカップル。
1937年、女優たちが喉を消毒している。
1930年頃、ロンドンの売店で手作りのマスクを着用する店員たち。
(左)1937年、ハリウッドで撮影。インフルエンザの流行中にマスクをつけたままキスをするカップル。
(右)1936年、海軍士官のW. P. ブリッグスが「肺結核予防マスク」を発明した。
1940年、ロンドンのエルスツリー・スタジオで撮影。女優のモリー・ラモントが配給のオレンジを頬張る。栄養補給のため、各スタッフに1日3個ずつ配給された。
1933年、インフルエンザ予防のため並んでうがいをする英水兵たち。

この記事は英語から翻訳・編集しました。 翻訳:髙橋李佳子
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東京オリンピックを控え、多数の外国人観光客や選手の来日が予想されるなか、「タトゥー禁止」が常識だった入浴施設のあり方も少しずつ変わろうとしている。
シールを貼るなど条件付きで受け入れる施設。身分証明書を提示すればシールなしでも入浴可能な施設…。様々な試行錯誤の最前線を探った。
「受け入れOKは寛容倶楽部」
横浜みなとみらい 万葉倶楽部のサイトに掲出されたメッセージ
横浜市の「横浜みなとみらい 万葉倶楽部」は2月1日から、指定のカバーシールでタトゥーを隠した場合に限り、試験的にタトゥー客を受け入れている。11cm×11cmのシール2枚分におさまる範囲であれば入館できるという。
《若い世代を中心としたファッションタトゥーの容認や 外国人観光客のアイデンティティとしてのワンポイントタトゥーへの理解が 日本の社会で広く求められるようになってきました》
《多様な文化や宗教をお持ちの方も、日本の温泉を楽しんでいただけますよう 相互理解が進むことを切に期待しております》
館内で予告メッセージを見つけた利用者が、1月にTwitterに投稿。2万7千回以上リツイートされ、9万4千の「いいね」がつくなど大きく拡散された。
「勇気ある素晴らしい心意気」「大きな一歩ですね!!」「受け入れOKは寛容倶楽部」など歓迎する投稿の一方、「ルール違反多発して『やっぱダメにします』って未来が見えそう」「マナー悪い人多いと思うから、すぐに取り消しにならないか不安」といった懸念の声も出ている。
ゴネる客にも毅然と対応
横浜みなとみらい 万葉倶楽部の露天風呂
全国で10施設を運営する万葉倶楽部グループは、1997年の1号店オープン以来「タトゥーお断り」のスタンスを貫いてきた。
「横浜みなとみらい 万葉倶楽部」の担当者は言う。
「オープン当初はタトゥーをめぐるトラブルもありました。反社の人たちは『この施設はどう対応するのか』を見ています。そこで『緩いぞ』と思われたら、ナアナアになってしまう。小さなものでもキチッと対応して、ご退館いただくことで3、4年目からは『入れろ』とゴネる人もいなくなりました」
「反社お断り」は変わらない
タトゥーを隠すカバーシールについての案内
それでは今回、条件付きとはいえ、受け入れに踏み切ったのはなぜなのか。
「『反社お断り』であることは変わりません。外国の方のアイデンティティであったり、オシャレのためにワンポイントで入れたりしているものに関しては、受け入れていくべきだろうと判断しました」
もともと海外からの利用者が増加傾向にあり、オリンピックイヤーでさらなる需要が見込まれることも理由のひとつだ。
「11cm×11cm」2枚分というシールの大きさについては、すでにシール対応をしている他施設の動向も踏まえて決めた。既存客の安心感に配慮し巡回を強化しているが、いまのところ大きなトラブルはないという。
あくまでもテスト運用のため問題が起きれば中止もあり得るが、利用客の反応を見ながらシール対応を他店舗に広げていく可能性も視野に入れている。
「全面解禁」試行の施設も
おふろcafé utatane
さらに踏み込んで、シールなしの「タトゥー全面解禁」を模索する施設もある。さいたま市の「おふろcafé utatane」だ。
おふろcafé utataneでは2015年8月から、B6サイズのコミック本と同じ12.8センチ×18.2センチのシールをフロントで販売。このシールで隠れる範囲の大きさのタトゥー客であれば、利用を認めていた。
今年1月1日からは、試験的にシールなしでタトゥー客を受け入れている。
日本在住の場合は顔写真付きの身分証明書を提示・コピーし、会員カードの登録をすること。海外から短期滞在中の場合は、パスポートの提示・コピーをすることが条件だ。
厳格な身元確認には、反社会的勢力を排除する狙いもある。加えて、タトゥー客には、専用のリストバンドを着用するよう求めている。
支配人の新谷竹朗さんは「受け入れ緩和を求める観光庁の方針もあり、毅然と対応しました」とテスト解禁の理由を明かす。
観光庁、摩擦回避に指針
観光庁によるタトゥーに関するアンケートの結果
2015年の観光庁の調査によると、全国のホテル・旅館のうち、タトゥー客の入浴を断っている施設は55.9%。断っていない施設が30.6%、シールで隠すなど条件付き許可している店が12.9%だった。
タトゥー拒否の経緯は「風紀衛生面で自主的に」(58.6%)、「業界・地元事業者で申し合わせ」(13.0%)、「警察・自治体などより要請または指導」が9.3%を占めた(※アンケート対象3768施設、うち581施設が回答)。
観光庁は「外国人旅行者が急増する中、入れ墨がある外国人旅行者と入浴施設の相互の摩擦を避けられるよう促していく必要がある」として、2016年に次のような対応策をまとめている。シール等で入れ墨部分を覆うなど、一定の対応を求める
入浴する時間帯を工夫する
貸切風呂等を案内する
あえてシール選ぶ人も
観光庁がまとめた外国人タトゥー客への対応策
ただ、おふろcafé utataneの場合、外国人の利用者はさほど多くない。もともとシールを貼って入館する人は月に30〜50人ほどいたが、大半が日本人客だったという。
「シールの規定サイズをオーバーしていて受け入れられない方もいらっしゃり、残念な思いをされていました。(シール対応を始めて)4年間トラブルもなかったため、段階的に受け入れる構想を立てており、タイミングをうかがっていました」
テスト最初の1ヶ月で、タトゥー客87人が入館登録した。積極的な告知はしていなかったものの、SNSなどでじわじわと口コミが広がっている。
「タトゥーの友人と一緒にサウナに入れるようになって嬉しい、という声もありました。常連のお客様の反応が心配でしたが、受け入れ1ヶ月前から掲示物で告知した際には、特にネガティブな反応はみられませんでした」
一方で、解禁後もあえてシール対応を選択した利用者が14人にのぼった。「タトゥーを隠した方が落ち着いて利用できる」という意見もあり、今後も従来のシール対応を併存させる考えだ。
おふろcafé utatane
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海苔の日の2月6日に、Twitterに投稿された写真が話題になりました。拡大して見ると……この模様は一体?
弁当に海苔で描かれているのは、シンボリックな「家紋」。並べたのを見ると、もう芸術の域です。投稿には「鳥肌が立ちました」「勿体なくて食べられない」などの反響が。
BuzzFeed Newsは、制作者のきーこさんを取材しました。
きーこさん(@wasaisai)は、息子さんが中学校を卒業するまでの間、家紋弁当を作って持たせていたそうです。
完成した写真を撮り続けたところ、3年間で計480枚に。
きーこさんは、手描き友禅の職人として、着物の柄を染める仕事をしていますが、以前は和装小物を扱う会社で働いていました。そこでさまざまな家紋を紹介する本と出会い、デザインの面白さに惹かれたそうです。
「紋切り遊びを海苔でしたら、面白いかな?」と考え、お弁当のデコレーションに家紋を取り入れることに。
歴史上の人物の誕生日や命日にはその人物の家紋を、歴史的な出来事の日には関わった人のものを…という風に選んでいました。季節に合わせた花を採用することも多くあったといいます。
たとえば、関ヶ原の戦いの日には…
石田三成の旗印をもとにした「大一大万大吉弁当」です。
薩長同盟の日は…
毛利家と島津家で、おむすび2つの「薩長同盟家紋弁当」。
坂本龍馬の家紋は、華やかですね。
ただし、この家紋は作るのが難しくて、毎回苦労したそうです。
「簡単な家紋もたくさんあります」と紹介してくれたのは…
これは小田原北条氏の「北条鱗」。気軽に作ってみたら、話題のきっかけにできそうです。
きーこさんは、100円ショップのキッチンバサミで、だいたい5〜10分くらいかけて作っていたといいます。
「前の日に準備するとか、下絵を作るとかしない大雑把な性格なので、当日朝に海苔と家紋の本をにらめっこしながらハサミでチョキチョキしてました」
きーこさんのTwitterには、家紋弁当の写真がずらり。家紋や和柄、着物などに興味を持ってもらうための発信もしているので、ぜひじっくり、目で味わってみてください。
訂正
「海苔の日」とTwitterへの投稿日を「2月7日」としていましたが、正しくは「2月6日」でした。訂正いたします。
2020/02/08 11:59
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「臨時病院」として作り変えられた武漢の国際会議展示場
中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の危険性にいち早く気付き、警告していた医師の李文亮氏(34)が7日未明、新型コロナウイルスによる肺炎で死亡した。
李氏は新型コロナウイルスに関して警鐘を鳴らした最初の人物であったが、武漢警察によって圧力をかけられ、沈黙を余儀なくされていた。
2019年12月末、中国のメッセージアプリ「微信(ウィーチャット)」上で、李氏は同僚に「武漢の人々がSARSに似たウイルスに感染しており、自分の病院でも患者が隔離されている」と懸念を示していた。
メッセージを送信してから数時間後、地元当局から「情報を入手した経路」と「情報を共有した理由」について尋ねられた。
さらに数日後、李氏と同僚の医師らは「偽の情報をネットに流さない」という旨の誓約書にサインを強要されたという。
「拘束されるのでは、家族が心配するのではと思うと、少し怖い」と李氏はCNNの取材に対し答えていた。
「新型コロナウイルスの流行について、もし警察がもっと早く情報を公開していれば、今よりも状況は良かったのでは。開放性と透明性が必要だ」とニューヨーク・タイムズにも生前語っている。
李文亮氏
武漢中央病院で眼科医として勤務していた李氏は、新型コロナウイルスに感染した患者の対応中に、同ウイルスに感染したとみられている。1月半ばから熱などの症状が現れ、入院していた。
病院側は「(李氏の死を)大変残念に思い、嘆いている」と中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボー)」を通して発表した。
いち早く新型コロナウイルスの存在に気づきながらも、妻と子を残して他界した李氏に対し、微博(ウェイボー)では彼を英雄と崇める声が上がっている。
中国の最高人民法院も武漢の地元当局の対応は不適切だったと批判した。
「もし『噂』を信じて、マスク着用や衛生対策、(発生源だと考えられている)海産物市場を避けるなどの措置を(早く)とっていれば、新型コロナウイルスの予防と制御のより良い方法が見つかっていたかもしれない」との見解を示した。
世界保健機関(WHO)緊急事態プログラムの責任者、マイク・ライアン氏も記者団に対し追悼コメントを発表した。
「李文亮医師の逝去を深く悲しんでいる。(新型コロナウイルスに関して)成し遂げた仕事を称賛したい」
この記事は英語から翻訳・編集しました。 翻訳:髙橋李佳子