「若い頃は徹夜は当たり前だった」と「残業自慢する」上司や先輩は、珍しくないようだ。
撮影:今村拓馬
「若い頃は徹夜は当たり前だった」——こんな残業自慢をする上司や先輩が周囲にいると7割以上の若手・中堅社員が回答し、一方で、6割以上の若手社員が「上司や先輩は自分より残業している」と感じている。
若手・中堅の6割以上が「ほぼ毎日」か「必ず毎日」残業する一方、上の世代はさらに残業体質とみている実態が、Business Insider Japanが実施した「ミレニアル世代の残業リアルアンケート」で明らかになった。
上司や先輩が残業をする理由としては「仕事ができる人に集中する」「業務量が多すぎる」とみる回答が多いが、中には「仕事以外に人生の使い道がない」「プライベートが充実しておらず仕事に逃げているため」といった、辛らつな意見も。「働き方改革」が叫ばれながら、なぜ残業が減らないのか。ミレニアル世代が感じている理由を見てみよう。
約6割が日常的に残業
「すぐ辞める若者は合理的」と指摘した東京大学の中原淳准教授のインタビュー記事に関連し、「ミレニアルの残業リアル」としてアンケートを実施したところ、488人から回答を得た。7割以上が20〜30代の若手・中堅社員。88%が会社員または団体職員だった。
週の残業時間を聞いたところ、「残業しない」と答えた人は16%で、8割以上の人が、毎週何らかの残業をしていることが明らかになった。週に10時間以上が約4割を占め、過労死レベル(月80時間以上の残業)の週20時間以上も15%程度いた。
週にどれぐらい残業しますか。
頻度は「必ず毎日」が約2割、「おおよそ毎日」が4割で、残業が日常化している状況が伺える。
残業の頻度はどのくらいですか。
「あなたの職場やあなたは、働き方改革に取り組んでいますか」の質問では「かけ声はあるが、実態は変わっていない」(34%)が最も多く、「取り組みは特にない」(23%)が続いた。「一切関係ない」と答えた人も1割超いた。
続いて、なぜ残業が発生すると思うか。理由を自由回答で尋ねたところ、最も多かった理由のトップ5は以下の通りとなった。(自由回答を、「その他」を除いてBusiness Insider Japanで分類。)。
5位. 繁忙期である
忙しい時期は残業、という声はそれなりにある。逆に、慢性的な残業職場ではないとも言えるかもしれない。
「繁忙期、月末、四半期などの節目の時期」(25-29歳、男性、会社員・団体職員)
「セール前・社長の店舗巡回前など」(30-34歳、男性、 会社員・団体職員)
4位. 人手不足
人手が足りないという声は多い。「業績が悪くて、人が採用できないから残業」という指摘は深刻だ。
「慢性的な人手不足」(属性不明)
「収益性の停滞による人員確保が困難な業界体質」(40代以上、男性、会社員・団体職員)
人手が足りないと、しわ寄せが誰かに行く。
「時短勤務の方のお子さんの病気による休みのしわ寄せ」(30-34歳、男性、会社員・団体職員)
「定時で帰ると白い目で見られる」のなら、定時は何のためにあるのか。
REUTERS/Yuya Shino
3位. 風土や文化
職場の同調圧力はつらい。
「定時は5時半だが、定時に帰るものなどいないため早く帰りづらい」(20-24歳、男性、会社員・団体職員)
「残業が当たり前になっている。就業時間(が終わった時刻)に帰っていると白い目でみられる」(20-24歳、女性、会社員・団体職員)
「忙しくて帰れない人もいるから、手伝えることがなくても職場に残るべきという考えが浸透している」(20-24歳 男性、会社員・団体職員)
「それでも気にしない」という声もある。
「会議のときに残るくらい。自分の仕事が終わっていれば、あとは周りを見捨てて帰る。風当たりは割と強いと思う」(30-34歳 、女性、会社員・団体職員)
2位. クライアント対応
「お客様は神様」精神なのか。クライアント対応が「残業理由」とする回答は、日本企業ならでは。
「客先からの要求に答えるため、また残業ありきの業務体型のため発生している」(25-29歳、男性、会社員・団体職員)
「クライアントの都合で急に仕様が変更になる」(20-24歳、男性、会社員・団体職員)
政府も、お客様。
「客先(官公庁)からの急な依頼に対応しなければならないとき」(20-24歳 、男性、会社員・団体職員)
1位. 仕事量が多い
堂々の1位はやはり、これだ。
「終わるわけがない量」(25-29歳、男性、会社員・団体職員)
定時で終わらない仕事量がそもそも割り当てられているとしたら、社員の残業や「がんばり」に、依存している会社の姿勢が透けてくる。
「そもそも定時内に終わる仕事量でない。実験など長時間連続して対応が必要な作業があり、定時内に終わらない」(25-29歳 、男性、会社員・団体職員)
「キャパを超えるタスク量を任されているためそもそもやることが多い。非合理的でルールに縛られた仕事。その割に突発的な仕事」(30-34歳、男性、会社員・団体職員)
残業ばかりする上司は「趣味や仕事以外の人生がない」と見られていることも明らかになった。
REUTERS/Kim Kyung-Hoon
「上司は仕事以外の人生がない」
「上司や先輩は、あなたより残業していますか」に対しては、60%が「そう思う」と答えた。さらに、そう思うと答えた人だけに、その理由はなぜだと思うかを尋ねると、「仕事ばかりの人生」に違和感をもつ様子が浮かび上がってくる。
「(一番残業している人は)中間管理職と管理職。単に仕事以外の人生がないように見えます」(30-34歳 男性 会社員、団体職員)
「(残業する上司は)仕事以外に人生の使い道が無い。趣味が無い。最近のガバナンスでは部下を飲みにも誘えない。ゆえに残業するしかない」(30-34歳 男性 会社員、団体職員)
「(残業する上司は)家に帰りたくない、帰ってもやることがないため。もしくは生活残業」(20-24歳、男性、会社員・団体職員)
冷静に職場を分析。
「(一番残業しているのは)一番上の上司。時間は無限にあると考えていて、効率化をまるで考えていないため。 仕事=趣味となっている。二番目の上司はそれにつきあっているので必然的に残業させられている」(30-34歳、女性、会社員・団体職員)
中には、中間管理職に同情的な声もあった。
「(一番残業している人は)課長。部長の無茶ぶりに対応しつつ、部下の面倒を見なければならないから」(25-29歳、男性、会社員・団体職員)
一連の自由回答からは、日本の職場の残業の構図が浮かび上がってくる。
あなたの職場は、どうだろうか。
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「ミレニアルの残業リアル」アンケート:2018年3月にBusiness Insider Japanで実施。回答者は75%が男性、24%が女性。20代が36%、30代が35%、40代以上が27%。66%が一般社員で、主任・係長クラスが22%、管理職が6%。約6割が独身、既婚で子どもいない人が12%、既婚で子どものいる人は26%だった。小数点以下切り捨て。
(文・滝川麻衣子、構成・滝川麻衣子、分部麻里)