ここ数カ月で、働き方や時間の使い方が大きく変化した。雑誌「PRESIDENT WOMAN プレミア」VOL.51 2020年8月・夏号(プレジデント社)では、「ポストコロナ時代を生きる、女のマネー戦略 お金の稼ぎ方&賢い使い方」と題し、40代から考える、アラフィフからの「逆転キャリア」計画を特集している。コロナをきっかけに、仕事とお金を見直したいと考えている女性は必見だ。
「PRESIDENT WOMAN プレミア」VOL.51 2020年8月・夏号(プレジデント社)
今、自分の思うような働き方ができているのか、これまでで最も楽しかった仕事は何かなどを振り返りつつ、やりたいことを探ることからスタートしている。誌面には、書き込み式の「キャリアプランニングシート」やこれから30年働くことを想定した「未来シミュレーション年表」があり、自分と仕事についてじっくり考える時間をつくることができる。
アラフォーから所得が大幅アップした5人にインタビューした記事では、50歳目前で転職に成功し30代のころに比べ収入が200%以上アップした人や、専業主婦から30代半ばでパート社員としてスタートし、後に正社員となり昇進して収入増を叶えた人など、さまざまなエピソードが読める。
また、趣味を仕事にするなど副業を考えている人もいるだろう。月10万円以上を稼ぎ出す人を取材して、成功のポイントをまとめている。しかし、副業で成功する人は本業でも優秀だという有識者のコメントもある。たとえば、リモートワーク時についだらだらして仕事が進まない、計画が立てられないという人は、副業には向かないそうだ。
多くの場合、キャリアアップや収入増には職場の人間関係も無視できないだろう。「結果を出すリーダーになるための明るい『社内政治』レッスン」のコーナーでは、男性社会特有といわれる社内政治を学び、女性ならではの力でポジションをつかみ取る術を探っている。
本誌のアンケートによると、年収800万円以上稼ぐ女性の7割以上が資産運用をしているそう。コロナ禍で経済が不安視されている今こそ、基本を見直すべき。専門家が指南する「ポストコロナの経済とお金の守り方」も見逃せない。
現状に満足していない、もっと豊かな職業人生を送りたいと思うなら、先人に学ぶことから一歩を踏み出してみては。しなやかに稼ぎ、賢く使う方法を探せば、本当にやりたいことを見極められるかも。
(BOOKウォッチ編集部)
書名: PRESIDENT WOMAN プレミア夏号 2020年8月号 VOL.51
監修・編集・著者名: PRESIDENT WOMAN プレミア 編集部 編
出版社名: プレジデント社
出版年月日: 2020年6月27日
定価: 900円(税込)
判型・ページ数: A4変型判・160ページ
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画像は、「家庭画報 2020年8月号」(世界文化社)より
2020年7月1日に発売する「家庭画報 8月号」(世界文化社)は、創刊750号記念号。注目の綴じ込み付録として「メモリアルフォト特集 羽生結弦 栄光の軌跡」が付いてくる。世界に誇るフィギュアスケーター・羽生結弦選手の、反響の大きかった15枚の写真が掲載されている。
羽生選手が「家庭画報」に初めて登場した2011年12月号から、直近2020年3月号までの掲載の中で、えりすぐりの作品をピックアップした永久保存版のメモリアルフォト特集だ。どんな状況下でも前を向く彼は、
「来シーズンに向け、今の限界の先にと行けるよう練習していきます」
「今までの人生のすべてに胸を張れるような、最強の自分へ!」
と、希望の光になるような力強いメッセージを届けた。東日本大震災に怪我と、数々の試練を乗り越えてきた彼の言葉は、特別な重みをもって私たちの胸に響く。2020年、新型コロナウイルスという未曽有の事態に直面している今も、羽生選手の姿は私たちを励ましてくれるにちがいない。
画像は、「家庭画報 2020年8月号」(左)と「家庭画報2020年8月号 プレミアムライト版」(右)(ともに世界文化社)
「家庭画報 8月号」、「家庭画報 8月号 プレミアムライト版」のいずれにも、綴じ込み付録「メモリアルフォト特集 羽生結弦 栄光の軌跡」と別冊付録「2020下半期 開運・招福術」が付く。プレミアムライト版は本誌の約85パーセントの大きさで、重さは約半分とコンパクトな仕様だ。
(BOOKウォッチ編集部)
書名: 家庭画報 2020年8月号、家庭画報2020年8月号 プレミアムライト版
監修・編集・著者名: 家庭画報 編集部 編
出版社名: 世界文化社
出版年月日: 2020年7月 1日
定価: 通常版…1,400円(税込)、プレミアムライト版…1,222円(税込)
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「アッパッパ」と聞いて懐かしいと思う人は、昔のイメージとは違うおしゃれなデザインに驚くだろう。主婦の友社から発売されている『1日でぬえる!簡単楽ちんワンピース おしゃれなアッパッパ』は、初心者向けの手作りワンピースの本。S~3Lの実物大型紙がついてくる。
画像は、『1日でぬえる!簡単楽ちんワンピース おしゃれなアッパッパ』(主婦の友社)
かつてエアコンが普及していない時代に、風通しがよく涼しくて動きやすい「夏の最強ワンピース」として当時の女性たちに重宝されていたアッパッパ。
画像は、『1日でぬえる!簡単楽ちんワンピース おしゃれなアッパッパ』より。表紙のアッパッパにそでをつけたタイプ
現代版では、ファスナーやボタンがなくゆったりと着られるのに、シルエットはほっそりときれいに見える。一番簡単なものは、身ごろ2枚をぬい合わせるだけなので、初心者でもチャレンジしやすい。
画像は、『1日でぬえる!簡単楽ちんワンピース おしゃれなアッパッパ』より。ベースのデザインからアレンジしたパフスリーブ
本書で紹介されているスタイルは、A フレンチスリーブ、B ラグランスリーブ、C シンプルラウンドネック、D ティアードスカートの4つの型をベースに、そでの長さや、ウエストの切り替え、ティアードの数を変えたバリエーションをプラスした計13点。
画像は、『1日でぬえる!簡単楽ちんワンピース おしゃれなアッパッパ』より。3段のティアードスカート
そでなし、半そで、長そでのパターンがあり、コーディネートを工夫すれば夏だけでなく1年中使える。S~M、M~L、2L~3Lの3サイズの実物大の型紙が2枚ついているので、重なる線が少なく写しやすい。
画像は、ソーイングユニット「Quoi? Quoi?」。久文麻未さん(右)と三代朝美さん(左)
著者は同じアパレルブランドで同僚だった久文麻未さんと、三代朝美さんがが独立して作ったソーイングユニット「Quoi? Quoi?(コアコア)」。フランス語で「何?何?」という意味だ。本書の発売にあたり、以下のようにコメントしている。
「私たちQuoi? Quoi?は、日々を楽しく過ごせるウエアを提案しています。アッパッパは最高におしゃれで年齢を問わず、毎日着られるのんびりデイリーウエア。好みのゆとり、好みの丈で、布地を変えてぜひ何枚も作ってください」
1日でぬえるほど簡単だというから、気軽に挑戦できる。着ごこちの良い部屋着やかわいいお出かけ着を探しているなら、お気に入りの生地で手作りしてみては。
(BOOKウォッチ編集部)
書名: 1日でぬえる!簡単楽ちんワンピース おしゃれなアッパッパ
監修・編集・著者名: Quoi? Quoi? 著
出版社名: 主婦の友社
出版年月日: 2020年6月26日
定価: 本体1,500円+税
判型・ページ数: AB版 本文48ページ+実物大型紙2枚つき
ISBN: 9784074430680
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子ども同士の「いじめ」問題は、いつ巻き込まれてもおかしくない身近な問題だ。2020年6月26日から配信されている電子書籍『息子がいじめの加害者に? 大原さんちの大ピンチ』(文春e-Books/文藝春秋)は、マンガ家の大原由軌子さんによる実話を元にしたコミックエッセイ。
画像は、電子書籍『息子がいじめの加害者に? 大原さんちの大ピンチ』(文春e-Books/文藝春秋)より
大原さんには2人の息子がいる。長男が小学校5年生のとき、突然、いじめの「加害者」として関わっていると訴えられた。
長男はその時点まで親が見る限り、他人をいじめるような子には映らなかった。そして、いじめの被害者というのが、たびたび時には小さな弟と一緒に大原家に遊びに来ていた子だったという。
何かの誤解では? と思うが、「相手がいじめと受け取れば、それはいじめ」と考えていた大原さんは、先方への謝罪を含め、打てるべき手は打ったそうだ。それなのに、相手の母親の気持ちは収まらず、次第にエスカレートしていく。実はモンスター・ペアレント(モンペ)だったことが分かり、大原家は大ピンチに!
文春オンライン上では、6月29日から期間限定で「息子がいじめの加害者に?」のストーリーを公開している。第1話は、相手の母親から来たメールの文面から始まっている。最初は割と明るいトーンだったのが、少しずつ変化していく様は読んでいるだけでも背筋が凍るようだ。
写真は、著者の大原由軌子さん
著者の大原さんは、本書について以下のようにコメントしている。
「スクールカウンセラーさんや自治体の子育て応援センターの皆さんへの相談・手続き方法等も記してありますので、お役に立てる面もあるかと思います」
大原家が直面した、いじめ問題はどう決着するのか。「明日は我が身」と思った方は、ぜひ読んでほしい。
(BOOKウォッチ編集部)
書名: 息子がいじめの加害者に?
サブタイトル: 大原さんちの大ピンチ
監修・編集・著者名: 大原由軌子 著
出版社名: 文藝春秋
出版年月日: 2020年6月26日
定価: 500円(税込み)※電子書店によって異なる場合がある
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昨年公開の「映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」が大ヒットし、"国民的"と言っても差し支えないほどの人気キャラクターとなった、すみっコぐらし。そのスペシャル付録が、幼児向け雑誌「たのしい幼稚園」8月号と9月号(いずれも講談社)に付いてくる。
写真は、8月号付録の「ぺんぺんアイスクリームガチャ」(提供:講談社)
7月1日発売の8月号の付録は、「ぺんぺんアイスクリームガチャ」。かわいいアイスクリームワゴンをデザインしたガチャの中に、"しろくま"、"ぺんぎん?"、"とんかつ"、"ねこ"、 "とかげ"、の5すみっコたちのマスコットが入っている。
写真は、8月号付録の5すみっコたちのマスコット(提供:講談社)
7月31日発売予定の9月号の付録は、「たぴおか つんつんゲームポッド」。「たのしい幼稚園」完全オリジナルの、かわいいタピオカドリンク型のゲームポッド。ポッドにぷかぷか浮かんだ、3色に光る人気キャラ"たぴおか"を全部タップできればゲームクリアとなる。ゲームは"かんたん"と"むずかしい"の2モードがあるため、小さな子供でも楽しく遊ぶことができる。
写真は、9月号付録の「たぴおか つんつんゲームポッド」(提供:講談社)
(BOOKウォッチ編集部)
書名: たのしい幼稚園 8月号
出版社名: 講談社
出版年月日: 2020年7月 1日
定価: 1200円(税込)
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ウェブ会議やオンライン授業が増え、気になるのは画面に映る自分の姿。もっと良く見せたいと思っているなら、ファッション誌「mini」2020年8月号(宝島社)のとじ込みBOOK「動画のプロに教わるオンライン映えLESSON」が参考になりそうだ。
画像は、ピカチュウが表紙を飾る「mini」2020年8月号(宝島社)
誌面では、人気ユーチューバーや動画に詳しいモデルらが講師となって、ヘアメイクやライトの使い方など、映ったときに"盛れる"テクニックを紹介。自分の前にフルーツを置いて彩りをよく見せる方法や、正面から見られることを意識したヘアスタイルなど、経験にもとづくアドバイスはさすが。
オンライン映えするには、画面の明るさは欠かせない。背景の選び方や愛用の照明機材も写真つきで解説されている。特別な機材がない人には、テレビでYouTubeを開いて白画面を出し、調光を最大にするという簡易ライト代わりのアイデアが参考になる。
画像は、「mini」2020年8月号(宝島社)の付録。「劇場版ポケットモンスター ココ」のスタッフバッグ
「mini」8月号の付録は、今冬公開する映画「劇場版ポケットモンスター ココ」のスタッフバッグ。本体は黄色でピカチュウのイラストがドドーンとプリントされている。
画像は、「mini」2020年8月号(宝島社)の付録。スタッフバッグをくるくる丸めるとブレスレット型になる
スタッフバッグとは、もともとアウトドアシーンで荷物の仕分けに使われるものだが、軽量かつコンパクトに収納できるので、レジ袋の代わりやジム用のタオル入れなど、さまざまな用途に使える。
誌面には「劇場版ポケットモンスター ココ」の公開前に知っておきたいストーリーの魅力や、映画グッズなどの情報も掲載されている。
(BOOKウォッチ編集部)
書名: mini 2020年8月号
監修・編集・著者名: mini 編集部 編
出版社名: 宝島社
出版年月日: 2020年7月 1日
定価: 本体991円+税
判型・ページ数: A4変型判
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著作権や特許権などの権利と知的財産(創造物)について、中学生レベルでわかりやすく書かれたのが、本書『すごいぞ! はたらく知財』(晶文社)だ。音楽、本、テレビ、映画、ゲームなど、暮らしの中にある知的財産(創造物)の作り手が、仕事の中身を説明。法律家らがそこにかかわる権利と法律を解説している。クリエーターをめざす子どもたちの良きガイドになるだろう。
文学、音楽など11のジャンル
監修者の弁護士・桑野雄一郎さんが、著作権や特許権、意匠権、商標権などについて簡単に説明した上で、以下の11のジャンルについて、作り手が登場し、4人の著者が分担して書いている。
1 文学 谷川俊太郎さん
2 音楽 ユニバーサルミュージック
3 映画 東宝
4 舞台 草刈民代さん
5 テレビ TBSテレビ
6 芸能 サンミュージックプロダクション
7 キャラクター 熊本県庁・くまモングループ
8 アニメ サンライズ
9 ゲーム コナミデジタルエンタテインメント
10 伝統工芸 細尾
11 アート 東京国立近代美術館
朗読会でも許諾必要な場合も
たとえば、文学に登場した詩人の谷川俊太郎さんは、言葉の不自由さに挑戦するために詩を書いてきたという。「言葉を一つひとつ慎重に選び、3カ月もかけて悩みながら作り上げた作品が知らないところで勝手に変えられたら」、「非常に気持ちが悪い」という。
朗読会で朗読されることもある。谷川さんは、「作品がいったんテキスト化されれば、その先は朗読者の自由」と考えている。著作権が過剰に懸念されて、作品がまったく活用されなくなってしまうのもつまらない、と考えているからだ。
だだし、その著作権利用が相当な収益を生み出す場合には、収益は作者にも還元されるべきと考えている。
また、脚注は詩や物語などの著作物を公共の場所で朗読する場合、著作権者に無許諾で行えるケースと、許諾が必要なケースがあることにふれている。
コロナウイルスによる自粛生活が続いた頃、絵本を朗読する画像がSNSにあふれたが、問題を指摘する人もいた。仮に善意で行った行為でも著作権にふれるケースもあるので、注意が必要だ。
「くまモン」も著作権などで保護されている
熊本県の人気キャラクターである「くまモン」の利用は基本的に無料だが、利用する企業は熊本県庁に申請して許諾を得なければならない。著作権と商標権で保護されているからだ。さらに詳しく著作者人格権と同一性保持権を説明し、勝手に「くまモン」のデザインが変えられないように管理していることを紹介している。
1年間で3000件くらいの商標利用の申請があり、2018年の関連商品の売上は1505億円で、熊本県における経済効果は非常に大きい。
また、海外における利用は別制度になっており、有料であること、中国企業による無許諾商品が多いことにもふれている。
創造物はけっして無料ではない
中学生なら関心の高い音楽。作詞家・作曲家に発生する著作権、さらに音源となるマスターデータ(原盤)の製作者としての音楽会社は、無断で利用されない権利を持つ。著作隣接権の一つがレコード製作者の権利、「原盤権」である。
ユーチューブなどでさまざまな音楽や映像が無料で視聴できる時代になったからこそ、「音楽をふくむあらゆる創造物はけっして無料ではない」という関係者の言葉をもう一度確認したいものだ。
4人の執筆者の一人である、内田朋子さんは、共同通信でデジタル事業に携わった人。2016年4月の熊本地震の後、「復興にむけた『新たな創造』のきっかけとして、知財の知識を被災地の子どもたちに届けたい」という著者4人の願いから、本書は生まれたそうだ。
平易な語り口なので、中学生が将来の仕事を考える上での参考になるだろう。ぜひ学校の図書館に入れてほしい一冊だ。
BOOKウォッチでは、関連で『ビジュアルデザイン発注時に知っておきたい! 著作権のキホン トラブルを未然に防ぐ対策Q&A』(第一法規)、『その「つぶやき」は犯罪です』(新潮社) 、『撮ってはいけない』(自由国民社)などを紹介済みだ。
(BOOKウォッチ編集部)
書名: すごいぞ! はたらく知財
サブタイトル: 14歳からの知的財産入門
監修・編集・著者名: 内田朋子、萩原理史、田口壮輔、島林秀行 著、桑野雄一郎 監修
出版社名: 晶文社
出版年月日: 2019年11月30日
定価: 本体1500円+税
判型・ページ数: 四六判変形・253ページ
ISBN: 9784794971524
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中世の近畿地方史を記録したとする「椿井文書」が「偽書」だったということが話題になっている。BOOKウォッチでも『椿井文書――日本最大級の偽文書』(中公新書)を紹介したばかりだ。
本書『偽書が描いた日本の超古代史』 (KAWADE夢文庫)は、「古代史」や「神代」に関する壮大な文書を取り上げている。いずれも近年に創作されたと見られている「偽書」だ。
17の「偽書」が登場
『竹内文書』『九鬼文書』『上記』『物部文書』『東日流外三郡誌』『秀真伝』『富士宮下文書』など17の「偽書」が登場する。今も関係者の一部に「古伝」として支持されているものもある。荒唐無稽なものが目立つが、かなりの信憑性を持ってメディアに取り上げられたものもある。なぜ偽書が作られ、多くの人々に信じられたのか。
日本には『日本書紀』や『古事記』があるが、5世紀以前にさかのぼっていくと、史実性がきわめてあいまいと言われている。中国の『魏志倭人伝』には3世紀ごろの邪馬台国の話が記録されているが、未だその所在をめぐって論争が続いている。そうした日本の模糊とした先史を、もっときちんとした「史料」で読みたいという人々の思いが「偽書」を生み出す、と本書は背景を記す。
著者の原田実さんは1961年生まれ。龍谷大学文学部卒。広島大学研究生を経て、昭和薬科大学文化史研究室で、古代史研究家として人気だった古田武彦氏の助手を務めた。しかし、『東日流外三郡誌』の真偽をめぐって対立。現在は、古代史関連の偽史、偽書を中心とした著述家として活躍している。著書に、江戸しぐさが架空であることを明かした『江戸しぐさの正体』など多数。
経歴からもわかるように、原田さんは『東日流外三郡誌』とのかかわりが深い。すでに、『幻想の津軽王国――「東日流外三郡誌」の迷宮』(批評社、1995)などに経緯の詳細を記している。本書ではそのエッセンスが手際よくまとめられ、わかりやすい。
屋根裏から落ちてきた古文書
『東日流外三郡誌』は1975~77年、青森県市浦村(現・五所川原市)が市浦村史資料編として全三巻の活字本で刊行し、一般にも存在が知られるようになった。津軽を舞台にした紀元前にさかのぼる古代史を記している。もともとの「古文書類」は1947~48年ごろ、同地の殿様の縁者で、庄屋の家系だった和田喜八郎氏宅で見つかった。ある日、天井を突き破って屋根裏から落ちてきた長持(衣装などを入れる箱)の中に入っていたという。「原本」を明治のころに、写本にしたものだとされていた。
地方史の史料として自治体が活字化したことや、当時、古代史についての独自の見解で多数のベストセラーを生み出していた古田武彦氏が強く支持したことで、メディアも注目するようになる。東北の異境の地に、ヤマトとは異なる王朝があったというロマンが多くの人を引き付けた。背景には「高松塚の発見」(1972年)などによる空前の古代史ブームがあった。一方では『ノストラダムスの大予言』(1973年)のベストセラーや、スプーン曲げで有名なユリ・ゲラー来日(1974年)などの超能力・オカルトブームもあった。
「『東日流外三郡誌』はこの時代の日本に渦巻いていたさまざまな熱気に応えるものだったのである」(本書)
今では信じがたいことだが、NHKテレビは複数回、『東日流外三郡誌』をテーマに、和田喜八郎氏へのインタビューを含む番組を放送したという。著名作家はもちろん、専門の学会でも好意的に取り扱った人がいたほどだ。
「サンデー毎日」が「偽書説」
古田氏は、原田さんの大学時代の恩師だった。1989年秋になって突然電話がかかってきた。『東日流外三郡誌』の調査に協力してほしいというのだ。当時、すでに「偽書説」が強まっていた。当然ながら「真書」であることを証明するための調査だった。
しかし、原田さん自身、いくつもの問題点を見つけた。江戸時代につくられたというのに、近年の用語が出てくる。疑問を指摘しても、古田氏は認めない。93年になって、「サンデー毎日」などが安本美典氏による「現代人の偽書」とする考証を報じ、「偽書説」がいよいよ有力になる。
原田さんによると、和田喜八郎氏には強い「空想癖」があったという。自身の経歴については「陸軍中野学校で学んでから海軍航空隊に配属されビルマで国王の影武者を務めつつ通信研究所に勤務し、フィリピンで抑留されたまま皇宮警察に勤務」と証言していた。原田さんは「波乱万丈というより支離滅裂な半生」と記す。親族の証言によると、喜八郎氏は戦前から終戦直後にかけて郷里を出たことはなかったという。
喜八郎氏は青年時代、郷土史家の手伝いをしていたことがあった。そのため東北地方史について「偽書」が書けるくらいの知識と技量はあった。
原田さんは喜八郎氏の没後、親族の許可を得て、家を調査した。天井裏に物を隠せるような空間は存在しなかった。天井を破って長持が落ちてきたという文書の由来自体が、喜八郎氏の創作だったと結論づけている。
自分の世界観・価値観を投影して支持
ではなぜ古田氏は「真書」にこだわったのか。喜八郎氏の虚言癖は、古田氏もよく知っていたという。
古田氏にとって喜八郎氏は「自説を裏付ける根拠を提供してくれる便利な存在になっていた」と原田さんは見る。「・・・人は過去の好みの人物に自分の世界観・価値観を投影したり、自分に近い世界観・価値観で書かれた偽書に引き寄せられたりすることもある」。古田氏に師事したことで、「史実を捻じ曲げようとしたり、荒唐無稽な偽書に騙される者の心理をも、間近で学ぶことができたのである」と書いている。
世界に目を移すと、偽書は珍しいものではない。中国古代も偽書だらけ。正統性を重んじる宗教書の世界も、偽書が多い。贋作が作られることもある。解明が進む「死海文書」についてはつい最近も、米国ワシントンDCの聖書博物館が所蔵する「死海文書」が、すべて贋作であることが判明したという。
日本でも『古事記』については、かつて偽書の指摘を受けていたこともある。また、『日本書紀』も含めて、その内容がすべて史実と見る研究家は少ないだろう。日本の戦前の教育では、都合のよい歴史が教えられていた。「真書」とされているものでも、内容については恣意的な記述や改竄が行われていることもあり、油断ならない。
BOOKウォッチでは原田さんの著書で『オカルト化する日本の教育――江戸しぐさと親学にひそむナショナリズム』 (ちくま新書)を紹介済み。このほか関連で、『建国神話の社会史――史実と虚偽の境界』 (中公選書)、『京都を壊した天皇、護った武士』(NHK出版新書)、『大本営発表――改竄・隠蔽・捏造の太平洋戦争』(幻冬舎新書)、『増補 南京事件論争史』(平凡社)、『戦前不敬発言大全』(パブリブ刊)なども紹介している。
(BOOKウォッチ編集部)
書名: 偽書が描いた日本の超古代史
監修・編集・著者名: 原田実 著
出版社名: 河出書房新社
出版年月日: 2018年11月 1日
定価: 本体720円+税
判型・ページ数: 文庫判・222ページ
ISBN: 9784309485027
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画像は、「ヤングドラゴンエイジ VOL.3」(KADOKAWA)
2020年6月25日に発売した季刊誌「ヤングドラゴンエイジ VOL.3」(KADOKAWA)の表紙&巻頭グラビアは、2.5次元モデルとして活躍中の「あまつ様」。特別付録として、あまつ様のクリアファイルも付いてくる。
画像は、「ヤングドラゴンエイジ VOL.3」(KADOKAWA)より。仲良しの2人の姿に頬がゆるむ
注目の巻中グラビアは、美少女声優ユニット「Pyxis(ピクシス)」の伊藤美来さんと豊田萌絵さんだ。2人の「かわいい」を集めた、仲良しグラビアを大ボリュームで16ページ掲載する。ここでしか見られない2人の表情は、ファンなら絶対に見逃せない。2人のクリアファイルも、特別付録でついてくる。
画像は、「ヤングドラゴンエイジ VOL.3」(KADOKAWA)より。妖艶な雰囲気の貴重なショット
さらに、現役美女マジシャンの御寺(おでら)ゆきさんも巻中グラビアに。トランプなどを印象的に用いた、ミステリアスでセクシーなショットが14ページにわたり掲載されている。
他にも、「月刊ドラゴンエイジ」(KADOKAWA)で連載された武田弘光作「マケン姫っ!」の描き下ろしBIGポスターや、村田真哉原作×zunta作画の新連載・昆虫交尾ラブコメ「こんちゅき」など、気になるコンテンツが盛りだくさん。1年に4号のみの発売なので、この機会は見逃せない。
(BOOKウォッチ編集部)
書名: ヤングドラゴンエイジ VOL.3
監修・編集・著者名: ヤングドラゴンエイジ 編集部 編
出版社名: KADOKAWA
出版年月日: 2020年6月25日
定価: 690円(税込)
備考: 電子版あり(付録はつかない)
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よしながふみさんの人気漫画「大奥」が、6月27日発売の「メロディ」8月号(白泉社)の表紙を飾った。
写真は、「メロディ」8月号(白泉社)
「大奥」(よしながふみ 作)は、謎の疫病によって男子の人口が激減した世界における、史実とは男女が逆転した江戸城・大奥の世界を描く作品。2010年には、嵐の二宮和也さん主演で実写映画化された。
画像は、巻頭カラー「大奥」(よしながふみ)(提供:白泉社)
今号に掲載の第七十六回は、6月26日に発売された単行本18巻の続きとなる内容。2021年冬発売の19巻で完結することがすでに予告されており、物語はついに最終章に突入した。
画像は、ヤングアニマルコミックス「大奥」(よしながふみ 作)18巻の表紙(提供:白泉社)
今号にはそのほか、「八雲立つ 灼」(樹なつみ 作)と「蜻蛉」(河惣益巳 作)がカラー付きで登場している。
画像は、「八雲立つ 灼」(樹なつみ 作)のカラー扉(提供:白泉社)
画像は、「蜻蛉」(河惣益巳 作)のカラー扉(提供:白泉社)
また、今月号には別冊ふろく「ぞくっとホラー特集」が付いてくる。「ぞくっとホラー特集」には、河口けいさん、楠桂さん、横馬場リョウさんが、ホラーショートで登場。さらに、「事故物件住みます芸人」の松原タニシさんのSPインタビューも掲載されている。
画像は、別冊ふろく「ぞくっとホラー集」(提供:白泉社)
(BOOKウォッチ編集部)
書名: メロディ 2020年8月号
出版社名: 白泉社
出版年月日: 2020年6月27日
定価: 本体700円+税
判型・ページ数: B5判