写真は、『B あなたのおかげで今の私があります』(尼神インター誠子 著、KADOKAWA)
優しい人でなければ気づけず、そして、書けないエピソード
―― 塾にも通わせてもらい、大学受験の勉強まっ只中だった誠子さんは、突然お母様に「芸人になりたい」と打ち明けたそうですが、その時の反応は?
誠子 母は、「ええやん、あんたの見た目も活かせるやん」と賛成してくれました。娘の容姿を認識しつつも、なかなか口に出す親も少ないと思いますが、母から出た言葉は、娘の「B」をとてもポジティブにとらえた意見でした。
―― お父様はなんと?
誠子 父の出勤前に話したら「そうか。頑張って。いってきます」と賛成してくれました。
―― お二人ともあっさり賛成してくれたのですね。誠子さんのやりたいことを応援してくれる気持ちがご両親ともシンクロしているようです。実は、ご両親のエピソードでもう一つ気になったことがあります。お亡くなりになるとき、それぞれ、同じリアクションをされたとか。
誠子 父も母も、私が「芸人になってごめんね。ありがとう」と話したら、病床でのリアクションが同じでした。
写真は、尼神インター誠子さん(撮影:BOOKウォッチ編集部)
―― ご両親とも、まっすぐな愛を持って誠子さんを育ててこられたのですね。誠子さんの優しさが、この本の読後感として伝わってきましたが、その源はご両親譲りなのかもしれませんね。
誠子 宮子先生は素晴らしい先生でした。私たち生徒みんなを見てくれている先生でした。良い時も悪い時も。こんな人になりたいと思うような先生でした。
写真は、尼神インター誠子さん(撮影:BOOKウォッチ編集部)
―― やっぱり、誠子さんは、人の優しさに気づくことができる方だ。
誠子 そんな、恐縮です。ただ、私は、もっと人を見ようと意識しています。その人が言った素の言葉だけじゃなく、心理や気持ちを、もっとくみ取りたいという思いは、常にあります。
―― 誠子さんのお話は、言葉のキャッチボールではなくて、気持ちのキャッチボールですね。
誠子 過去に言葉で自分が傷ついたり、コンプレックスで傷ついたりしたことがあるからこそ、人にはしたくない。と言う思いは強くあります。人にはポジティブなことを言ってあげたいと思っています。
女と女芸人のはざまで
―― 本のタイトルにもありますが、改めて「B」とは何ですか?
誠子 「B」はブスのことなのですが、今は、共に生きてきた自分の一部と言う認識でいます。私の愛着のある一部で、しかも、私は芸人なので、ともに戦ってきた戦友でもあります。
写真は、尼神インター誠子さん(撮影:BOOKウォッチ編集部)
―― 現場で「かわいい」と言われたら、モヤっとして反応に困りますか?
誠子 本気で言ってるのか、逆にいじってるのか、素直に受け止めれないのです。
―― なるほど。仕事は違えど、ですね。
誠子 男性がいる職場で働く女性の方も多いと思いますから。ある種、女らしさを片隅に置いて、自分としてはしっかり仕事に向き合わないと共に働けないという状況はあると思うのです。この葛藤は女性なら誰しもあると思うのです。
(第2回に続く)
(BOOKウォッチ編集部)
尼神インター 誠子 (あまこういんたー せいこ)
1988年12月04日生まれ。神戸市出身。大阪NSC30期。尼神インターとして活動し、「第32回ABCお笑い新人グランプリ」新人賞(2011)、「第46回上方漫才大賞」新人賞候補(2011年)などの受賞歴を持つ。
書名: B あなたのおかげで今の私があります
監修・編集・著者名: 尼神インター 誠子 著
出版社名: KADOKAWA
出版年月日: 2020年9月28日
定価: 本体1,300円+税
判型・ページ数: 四六判・208ページ
ISBN: 9784046049698