下敷きになった能の曲目は
「やま巡り」―都の遊女・百万と小鶴は越中国の山の中で怪しげな老婆と出会い、一夜の宿を借りることになる。その礼にと百万が「山姥」の舞と歌を披露しようとすると......。(原曲『山姥』)
「小狐の剣」―刀工・小鍛冶宗近の娘・葛女は、弟子の豊穂の子を身ごもる。帝の御剣を作れという勅命を受け、父の大切な刀を盗んで逃げ出した豊穂を葛女は探し出すが......。(原曲『小鍛冶』)
「稚児桜」―清水寺の稚児としてたくましく生きる花月。ある日、自分を売り飛ばした父親が突然面会に現れるが、新参者で勤めになれない百合若を自分の代わりに差し出す......。(原曲『花月』)
「鮎」―天下を取るべく隠棲先の吉野で挙兵した大海人王子。密偵の蘇我菟野は左遷先の西国で悲哀のうちに死んだ父の汚名をそそごうと近江宮に急報を告げる機会を窺うが......。(原曲『国栖』)
「猟師とその妻」―越中国の山で出会った男から「自分は死んだと妻子に伝えてほしい」という伝言と形見の品を預かった僧・有慶。遠い陸奥へ旅立つが......。(原曲『善知鳥』)
「大臣(おとど)の娘」―義母に疎まれた元右大臣の姫君を密かにかくまう乳母・綿売。ある日、偶然再会した生き別れた娘から姫君は山中で殺されたという噂を聞かされ......。(原曲『雲雀山』)
「秋の扇」―遊女・花子は、かつて愛を交わした吉田の少将を追って京へ。形見の扇を手に下鴨神社に現れる姿が評判となる。屋敷に迎えたいと少将が現れるが......。(原曲『班女』)
「照日の鏡」―高名な巫女・照日ノ前に買われた醜い童女・久利女。翌日、生霊にとりつかれた光源氏の妻・葵上のもとに連れていかれるが......。(原曲『葵上』)
原曲にインスパイアされた
「親父からすれば、おいらも百合若も全然区別がつかねえんじゃねえか。それにあいつは結局のところ、おいらが必要なわけじゃなく、息子を売り飛ばした後ろめたさに急き立てられ、ここまで来ただけに決まっているさ」
(BOOKウォッチ編集部)
書名: 能楽ものがたり 稚児桜
監修・編集・著者名: 澤田瞳子 著
出版社名: 淡交社
出版年月日: 2019年12月31日
定価: 本体1700円+税
判型・ページ数: 四六判・250ページ
ISBN: 9784473043597