体験した本人しかわからない
「結婚も出産も、ぼんやりとそのうちにするものだと思っていた。今は目先の案件で忙しいけれど、自分にとってのその時期がくれば、なんとなく誰かと出会って結ばれて、結ばれたらその流れで子供を産む、そんな流れがどこかにある、と。そのふわふわとしたイメージを今、思い切り粉々にされた」(「第一話 掌から時はこぼれて」)
「人工授精は三回目も失敗だった。具体的な根拠があったわけではないけれど、きっと今回は大丈夫、そんなふうに考えていた」(「第三話 ターコイズ」)
(無精子症の宣告を受けて)「自分は男の着ぐるみをまとった、別の生き物だったのだろうか」(「第四話 水のような、酒のような」)
「私、本当に子供が欲しいとか産みたいとか思ったこと一度もないのよね。母性が足りない......、というより、ないのかも。おかしいのかな?」(「第五話 エバーフレッシュ」)
「それぞれが解放されますように」
「最終的に『産む』こととは反対の動詞を二つ続けることにした。産む人も、産まない人も、産めなかった人も、それぞれが解放されますように」
(BOOKウォッチ編集 Yukako)
書名:産まなくても、産めなくても
監修・編集・著者名:甘糟 りり子 著
出版社名:株式会社講談社
出版年月日:2019年7月12日
定価:本体640円+税
判型・ページ数:文庫判・288ページ
ISBN:9784065164976