関東・東海に台風が近づいている。水や食料など備えは万全という方も多いと思うが、物ではなくアプリの備えはいかがだろうか。アプリは外出せずに準備ができる。そこで参考になるのが本書『全災害対応! 子連れ防災BOOK 1223人の被災ママパパと作りました』(祥伝社)だ。物だけでなくアプリの準備についても書かれている。
144ページという少なめの分量と、ほっこりするイラストが描かれた表紙。サラッと読める本かと思ったら、「全災害対応!」「1223人の被災ママパパと作りました」とあるとおり、情報量の多い、想いの強い一冊だった。
「防災は千差万別」
著者のNPO法人ママプラグは、クリエイティブな視点で家族の未来を設計する、事業型NPO法人。自ら考えて動く「アクティブ防災」を提唱し、全国で防災講座を展開するほか、女性のキャリアを豊かにする「キャリア事業」などを中心に活動している。企画した書籍に『被災ママ812人が作った子連れ防災手帖』など、協力した書籍に『被災ママに学ぶちいさな防災のアイディア40』(アベナオミ 著)などがある。
本書は5つのパートで構成されている。
1 そのとき、どうやって身を守ったか
2 体験談に学ぶ 本当に必要な防災とは
3 オーダーメイドで考える防災
4 もう一歩先へ 自ら動く防災
5 医療従事者に聞く 災害時に必要なこと
阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、平成29年九州北部豪雨・小野豪雨、平成30年7月豪雨、北海道胆振東部地震など、近年日本で起こった災害ごとに被災したママパパの声をまとめ、防災術を伝えている。
「防災は千差万別です。家族の数だけ必要な防災があります」と「まえがき」にあるが、まさにそのとおりだと思う。例えば、妊娠中、乳児がいる、高齢の祖父母と同居、山・川・海の近く、または高層マンションの上階に住んでいる......など、家族構成や居住環境によって、注意すべき災害も備えるべきものも異なる。
「下校中の子どもの安否がわからない」「臨月で被災し不安定になった」「マンションの上階の揺れは半端なかった」など、被災時のかなり具体的な状況と、臨場感のある体験談、すぐ始められる対策が豊富に書かれている。あらゆるケースが網羅されていて、自身にあてはまるところを読むだけでも十分に役立てられる。
本当に必要な防災とは?
ここでは「2 体験談に学ぶ本当に必要な防災とは」から、「本当に必要なもの」を紹介したい。
■スマホに入れておきたいアプリ
・ラジオアプリ
・位置情報を発信するアプリ
・SNSアプリ
・災害情報アプリ(「東京都防災アプリ」「NHKニュース・防災」など)
・避難所がわかるアプリ
■あれがあってよかったグッズ
・ほうきとちりとり
・充電式掃除機
・軍手
・バケツ
・LEDライトやキャンドル
・ラジオ(電池式か充電式)
・ライト
・バッテリー(電池式)
・おしりふきとウエットティッシュ
・使い捨てカイロ
・マスク
・保湿クリーム
・衛生グッズ
・非常用トイレと消臭袋
・生理用ナプキン
・オムツ
・猫砂(非常用トイレ代わり)
・大判のハンカチやふろしき
・おんぶ紐
・リュックサック
・キャリーカート
・キッチンバサミとピーラー
・レインコートやポンチョ
・レトルト食品や缶詰
・野菜ジュース
・乾物やフリーズドライ食品
・チョコ・キャンディ・ビスケット
・絵本やオセロなどのアナログなもの
・現金
「防災グッズ」というくくりで考えず、「日用品」として常備できるものが意外と多い。スマホは、今や「災害時に命を守る大切なツール」だという。
パパやママがやっていくこと
評者は、昨年(2018年)の猛烈な台風の影響により、数日間の停電と、風に飛ばされた隣家の雨戸が自宅の外壁に直撃する被害に遭った。初めて、災害の恐ろしさを肌で感じた。
地震は頻発し、気象が激しくなっている昨今、災害はいつか起こるかもしれないことから、今にも起こりうることに変化した。しかし本書は、防災に対する心構えをこう書いている。
「子どもを守るためにパパやママがやっていくべきことは、恐怖に怯えながらストイックに防災に取り組むのではなく『楽しみながら、日常生活の質を底上げする』ということ」
1223人の被災ママパパの体験と知恵を、家族で共有したいと思う。
(BOOKウォッチ編集部 Yukako)
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