日産自動車は、カルロス・ゴーン前会長のために提供したベイルートとリオデジャネイロにある同社所有の高級住宅をゴーン氏の家族らが利用できないよう対応を進めていると、事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。同氏は10日、有価証券報告書に報酬を過少記載した罪で東京地検に起訴された。
日産はゴーン被告の在任中、被告自身とその家族にブラジルやフランスなど各地で住宅を供用してきたが、11月に同被告が金融商品取引法違反で逮捕されたことで、住宅の提供も突然終わりを迎えた。
起訴されたゴーン被告は、別の期間の報酬の過少記載の容疑で再逮捕された。これにより少なくともさらに10日間、勾留される見通しとなった。
国内で法的な闘争が続く中、ゴーン氏の逮捕につながった日産の内部調査に詳しい複数の関係者によると、日産はブラジルのリオデジャネイロにある約300万ドル(約3億4000万円)相当の高級マンションと、ゴーン被告の出身地であるレバノンの首都ベイルートの歴史的地区で日産が2012年に875万ドルで購入した邸宅を同被告の家族が利用できないようにしている。
関係者によれば、幾つかの住宅の鍵は既に交換されている。ベイルートの邸宅はゴーン被告の妻キャロルさんが中に入れないようにした。リオのマンションは、地元の裁判所がゴーン被告の代理による入室を許可する決定を下したのに対し、日産は「証拠が他の場所に移されるか隠滅される可能性が高い」ことを理由に、申し立てを行っていると10日の発表資料で明らかにした。
一方、関係者によると、フランスのパリとオランダのアムステルダムにある住宅に関してはゴーン被告とアシスタントのみが鍵を持っているため中に入ることができないという。
ブルームバーグ・ニュースは日産が提供していた住宅のうち5カ所を突き止めて確認した。ゴーン被告はプライベートジェットで世界中を転々とする生活で、いずれの場所も頻繁に訪れていたわけではなかったが、ブルームバーグの記者らが各地で取材をした近隣の住民や出入りの業者らはゴーン被告の存在を確認していた。
ゴーン被告によるこれらの住宅の使用について日本の検察当局が捜査しているかどうかは不明だが、日産によるゴーン被告の調査に関わりがあると関係者は話す。
住宅の場所については、ブルームバーグが閲覧した不動産取引や登記に関する記録も含め、文書に掲載されていた住所と照合したほか、各住宅に出入りする業者や日産による調査などについて直接知る立場にある複数の関係者とのインタビューを通じて確認した。関係者は内密な情報であることを理由に匿名を条件に取材に応じた。
アムステルダムのマンション
ゴーン被告が専用で使用するマンションに日産は家賃として毎月8000ユーロ(約103万円)を支払っている。関係者の1人が述べた。日産はこの物件の賃貸契約を解約しようとしている。この物件はゴーン被告がパリ近郊に最初の妻、リタさんと共同所有する住宅の登記書類に被告の住所として登録されている。
ベイルートの住宅
ベイルートの住宅は、日産名義で登録されているが、ゴーン被告が自由に使用していたとレバノン外相首席補佐官のハディ・ハチェム氏は述べた。12年に875万ドルで購入し、日産前代表取締役のグレゴリー・ケリー被告が購入実務に携わったと、日産の内部調査に詳しい関係者の1人は語った。日産は600万ドルを投じて改装し、ワインセラーなどを設置した。ゴーン被告の姿を数回見かけたことがあるという近くの理容師は、逮捕前の金曜日の夜にはパーティーが開かれていたようだと話した。関係者の話では、ゴーン被告はこの住宅を日産から買い取り、所有権を自身に移そうと計画していたが、移転は完了していなかったという。
パリの住宅
パリ屈指の高級住宅街にある物件は、フランスの登記簿によると日産子会社が06年に購入している。当時の購入価格は400万ドル未満で、元々ゴーン被告が借りていたと関係者の1人は述べた。この建物のある住人は少なくとも2年間、ゴーン被告の姿を見掛けたことはないと述べた。
リオデジャネイロのマンション
ゴーン被告の逮捕後、日産の担当者がマンションの鍵を交換し、数台の自動車を持ち去ったと、その動きについて知る関係者が話した。関係者2人によると、日産が所有。登記簿には英領バージン諸島を本拠とする「Hamsa 1 Limited」が物件の所有者として記載されている。記録によれば、12年1月に契約され、価格は1050万レアルで、当時の為替換算で約600万ドル相当だった。
東京のマンション
東京のマンションはゴーン被告の名義で賃貸契約され、17年6月に日産側に移転された。関係者の1人によると、日産はこの前後に同物件に対して毎月100万円を支払っていた。ゴーン被告と家族だけが月に平均数日だけ使用しており、日産はゴーン氏の逮捕以降、この物件へのアクセスを確保した。
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