トランプ米大統領は既に、世界経済に貿易戦争をもたらしたが、今度は為替戦争も持ち込もうとしているようだ。
トランプ氏は18日の一連のツイートで欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が追加利下げに言及したことを取り上げ、他国・地域の金融政策に口出しをするという米国大統領として異例の行動を取った。
トランプ氏は「ドラギ総裁が追加の景気刺激策の可能性があると発表したとたんに、ユーロがドルに対して下落し、ユーロ圏が米国との競争で不当に有利になった。ユーロ圏は中国やその他の国とともに、長年にわたりこういうことをしている」とツイートした。次のツイートで「ドラギ総裁の発言のおかげでドイツのDAX指数が上昇した。米国に対して非常に不公平だ」と続けた。
トランプ氏がドルの強さの原因として他国・地域の為替操作を指摘したのは初めてではない。同氏は既に「強いドル」政策に背を向ける姿勢で近年の米大統領とは一線を画していた。
自国の金融当局が政策決定会合を開こうとしている時に他国・地域の中銀総裁の発言を即座に捉えて直接攻撃する大統領の行動は、数日後に日本で開催される20カ国・地域(G20)首脳会議を控え、トランプ政権が攻撃的な為替政策を貿易交渉の武器としようとしていることを浮き彫りにした。
シティグループ・グローバル・マーケッツの世界エコノミスト、セザール・ロハス氏は、米政権は「使えるかもしれない武器を並べ、戦いの準備をしている」と指摘した。ただ、「まだ為替戦争にはなっていない」と付け加えた。
実際、ビッグマック指数によればユーロは約15%過小評価されているし、トランプ氏が貿易戦争を仕掛けてから中国人民元はドルに対して下落している。こうした動きはユーロ圏と中国、そして世界経済の減速が原因だと見られ、その一因は貿易戦争を仕掛けたトランプ氏自身だろう。しかし、為替相場に関するトランプ氏の不満が募れば、すでに警告している欧州連合(EU)からの輸入自動車に追加関税を課すなど、貿易戦争の一段の激化につながりかねない。
エグザンテ・データの創業者、イェンス・ノルドビグ氏は、1.10ドルを割り込む水準までユーロが安くなればトランプ氏が激怒して自動車関税を課しかねないと述べた。
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