別居や離婚後、子どもと離れて暮らす親とが会う「面会交流」をめぐり、当事者団体が法改正などを求め、声をあげた。「親子ネット」代表の武田典久さんらは「別居親=父親という固定観念があるが、実態はそうではない。この3年くらいで、子どもに会えないお母さんが増えている」と述べた。
9月16日の会見には、子どもに会えない母親、祖母ら23人の女性当事者が参加し、悲痛な経験を話した。
●母に届いた『しね』『ババア』『バカ』と書かれた紙をもった子どもたち
「もう私はどこに助けを求めたらよいのかわかりません」
3人の子がいる宇津木みどりさん(30代、仮名)は、ここ3年間、子の顔を見ることができていない。
「不貞を繰り返し、子どもたちをも巻き込む夫を信頼することは無理だと思い、家を出る決意をしました。ところが家を出る日、夫と義母に『子どもたちを連れて実家に来い』と言われて行くと、3時間罵倒され続けました」。
夜遅くなったことから、その日は子どもたちは夫の実家に宿泊することになった。翌日、迎えに行っても返してもらえず、そのまま別居が始まった。夫の不貞などの証拠を出したものの、監護者は夫と指定されたという。
「(直接の面会交流は認められず)月に一度、写真が送られてくることになりました。送られてきた写真も、私が送った手紙を破っている写真や『しね』『ババア』『バカ』と書かれた紙を持っている写真、中指をたてたポーズをするものでした」(宇津木さん)
そのような写真を撮らされている子どもの精神状態を心配した宇津木さんは、学校や自治体の相談センター、児童相談所に相談するも「虐待にはあたらない」などとして、対応はしてもらえずにいる。
●「連れ去り」をした元夫、親権が認められず「養育費、面会交流はなくなった」
親権は、親の性別に関係なく「別居後、継続した監護をした親に認められることが多い」と親子ネットの武田さんは指摘する。
熊田南海子さん(30代)の場合、離婚協議中の元夫に「連れ去り」をされて監護の実績を奪われたものの、離婚後の親権者は離れて暮らしていた熊田さんに決まった珍しいケースだといえる。
熊田さんは、元夫と義母らによる「連れ去り」によって、子どもたちと離れて暮らすことになった。
「当時5歳と2歳の息子たちは、離婚協議中だった夫と、その両親、兄夫婦によって無理やり連れ去られてしまいました」
離婚協議は、夫の不倫と、夫の実家から何度もお金を無心されたことなどが原因だった。子の引き渡しを求めて審判を申し立てたが、ようやく会えたのは「連れ去り」から3カ月後のこと。
「裁判所での試行面会で、長男は『ママのことは大嫌い』と言い続けました。でも最後の最後に『(大嫌いと言う)練習してきた。ママのこと大好き』ととても小さな声で言いました」
裁判では熊田さんに親権が認められた。「連れ去り」をしてまで子の養育にかかわる意思を持っていたはずの元夫だったが、離婚後は「養育費、面会交流も次第に滞り、(今では)養育費、面会交流はなくなってしまいました」と話す。
●当事者団体、約3割が女性会員
会見に出席した棚瀬孝雄弁護士は「私は(面会交流によって)会えばいいのではなくて、同居中に匹敵するくらいの共同監護をしなければいけないと考えている。欧米のように(共同養育の時間を)50:50は無理でも、せめて20%くらいの時間、会う必要がある」と指摘した。
親子ネットは現在、全国に512人の会員がおり、そのうち約3割にあたる156名が母親だ。