複数の女児への強制わいせつ致傷などの罪で起訴された建設作業員・池谷伸也被告人(逮捕当時43)に対する裁判員裁判が、今年7月に東京地裁立川支部で開かれていた。
逮捕は2年前(2018年)の9月。再逮捕を重ねながら、同年12月に裁判体裁判として同支部にて公判が開かれたものの、裁判員裁判に切り替わり、公判前整理手続に付されていた。
被害女児の一人がPTSDを患い、強制わいせつ致傷での起訴となったためだ。男は裁判で何を語ったのか。(傍聴ライター・高橋ユキ)
●被害者は4〜8歳までの女児15名
池谷被告人は2014年夏、当時住んでいた札幌市内で女児にわいせつ行為を行なったのち、転居先の東京でも女児に狙いを定め、逮捕まで4年間、わいせつ行為を繰り返した。
逮捕当時、池谷被告人の携帯電話からは女児25人分の画像が見つかっていたが、今回の裁判員裁判で被害者とされていたのは4〜8歳までの女児15名。
さらには各犯行をスマホ2台で撮影しそれを自宅に保管していたほか、この動画を収めたハードディスクを150万円で売却したともいう。被告人はすべての起訴事実を認めていた。
手口は概ね共通している。仕事の空き時間や休みの日に、幼い子供たちが遊ぶ公園の近くまで車を走らせ、車内からタイミングをうかがう。隙を見つけるや否や、声をかけ、集合住宅の階段踊り場まで連れ出して犯行を重ねていた。
●罪悪感を抱かせて、人気のない場所へ誘い込み…
時には、自宅ドアを開けた女児に「おしっこしたい!」と、トイレを借りるふりをして声をかけ強引に部屋に侵入してもいた。
すでに階段踊り場で待ち伏せした上で「いててて!」と足を怪我したふりをして、声をかけてくれた女児に対しても加害行為に及んだこともあった。
このような声かけにより人気のない階段踊り場に連れてこられ、被害にあった女児の多くが、その事実をしばらく親に言えずにいた。池谷被告人が口止めしていたからだ。
●PTSDと診断された女児「外遊びが大好きだったが、すっかり変わった」
逮捕により警察から連絡が来て初めて、被害を知った親もいる。だが、ほとんどの親が、こどもの小さな異変に気付いていた。
事件後にPTSDと診断された別の女児は次のように強い恐怖を感じ続けている。
「元々外遊びが大好きだったが、すっかり変わりました。寝るときに突然『ママ!』と叫んで泣くようになった。玄関でおもらしをしたり、身動きが取れなくなることもあります。外で犯人に似たような男を見ると『帰る』と言い出します」(女児の母の調書)
●「出所したら静かに暮らしていけたら」
多くの女児に大きな心の傷を残した池谷被告人も、当時の妻との間に未就学児の男児2人を持つ父親だった。被告人質問で自らの行為を問われ、こう振り返った。
- 弁護人「このような犯行を続けて、捕まるとは思わなかった?」
- 被告人「不思議と自分に暗示をかけるというのか、俺は捕まらないと言い聞かせ、信じ込ませていました」
- 検察官「被害児童のなかには、動画で泣いている子もいましたね。なぜやめなかったんですか?」
- 被告人「その場まで連れて行ってしまって、もう、勢いが止められなかった」
家族らは「思春期で犯人のことを思い出さないか心配」と、池谷被告人による行為の意味を知る頃に、再び被害児童らが傷つくことを恐れている。
「犯人を一生刑務所から出して欲しくない」と調書で訴えていたが、被告人は「私にできることは心からの謝罪しかない」「出所したら母と叔母の面倒をみながら静かに暮らしていけたらなと思います」と、うつむきながら語っていた。
池谷被告人に言い渡された判決は懲役18年(求刑懲役20年)。のちに控訴している。