老若男女問わず、根強い人気を獲得し続ける『鬼滅の刃』。クリスマスや誕生日プレゼントに主人公たちが使う日輪刀のおもちゃを欲しがる子どもたちや、影響を受けて模造刀を買う人たちもいる。
小学生の息子がいる神奈川県在住のアオイさん(30代・女性)もその1人だ。親子ともに『鬼滅の刃』の世界観にどっぷりハマり、鬼殺隊に憧れるようになった。
刀にも興味を抱くようになったアオイさん親子は、東京都内で亜鉛合金製の模造刀を購入。日輪刀ではないが、重みもあり、本物の刀のようにもみえる。親子ともに気に入り、部屋に飾って満足していた。
ところがある日、息子は「模造刀を公園に持っていって友だちに見せたい」と言い出した。
怪我のリスクなどを考えたアオイさんは大反対。すると、息子は「友だちはおもちゃの刀を持ってきた。僕は『煉獄さん役なのに刀ないの変だね』って言われた」と泣き出した。息子は友人たちと公園で「鬼滅の刃ごっこ」を楽しんでいるのだという。
そもそも、模造刀を持って外出することは銃刀法に違反しないのだろうか。模造刀の規制について、元警察官僚で警視庁刑事の経験も有する澤井康生弁護士に聞いた。
●模造刀は「刀剣類」にはあたらないが…
ーー銃刀法が規制しているのは、どのような刀剣類でしょうか。
銃砲刀剣類所持等取締法(以下「銃刀法」といいます)における刀剣類の規制は、大まかに次のようになっています。
まず、刀剣類は刃渡り15センチメートル以上の刀剣類を「所持」することが禁止されています(同法2条2項)。これに違反すると3年以下の懲役か50万円以下の罰金となります(同法31条の16第1項)。
ここでいう「刀剣類」とは、人畜を殺傷する能力を有することや鋼質性であることが必要です。とすると、模造刀は殺傷能力がないことから、ここでいう刀剣類には該当しないということになります。
●模造刀の「携帯」は禁止、公園への持ち出しもダメ
ーーでは、模造刀であれば自由に所持してよいのでしょうか。
いえ、そうではありません。模造刀は、昭和45年に発生した「よど号ハイジャック事件」を契機として規制され、「模造刀類」の「携帯」も禁止されています(同法22条の4)。
ちなみに模造刀とは金属で作られ、かつ、刀剣類に著しく類似する形態を有する物とされています。これに違反すると20万円以下の罰金です(同法35条2号)。
模造刀を公園に持ち出して遊ぶことは、模造刀剣類を正当な理由なく「携帯」することに該当し、銃刀法違反となります(同法22条の4)。
なお、模造刀剣類は「携帯」が禁止されており、「所持」は禁止されていません。そのため、家の中で飾って見ている分には問題ありませんが、外に持ち出すと銃刀法違反になるということになります。
●木やプラスチックの日輪刀は平気?模造刀を購入したい場合は?
ーー中には、木やプラスチックでできたおもちゃの日輪刀なども売られています。これらの「携帯」は問題ないのでしょうか。
このようなおもちゃの刀はそもそも「模造刀剣類」にあたらないので、銃刀法違反にはならないということになります。