「誤って女子トイレに入ってしまった」。そんな男性の主張が裁判所に認められた。
浜松科学館(浜松市)の女子トイレに正当な理由なく入ったとして、建造物侵入の罪に問われた60代男性に対して、静岡地裁浜松支部は1月20日、無罪(求刑罰金10万円)を言い渡した。
いったい、どんな理由があったのだろうか。
●従業員も使用することを示すためのマークだった
浜松科学館で、今回の事件が発生したのは2019年12月のこと。60代男性が女子トイレに入った当時、女子トイレの入り口には「男女が並び立つようなマーク」が掲げられていたという。
浜松科学館の事業主体である浜松市の広報担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に「このマークは『このトイレは安全確認のため従業員も使用させていただきます』という文言とともに、掲示されていたもの」としたうえで、次のように説明する。
「トイレに入ろうとする人がパッと見たときに目に入る壁側には、『男子トイレ』には男性マーク、『女子トイレ』には女性マークがそれぞれあり、『男女が並び立つようなマーク』は、それらよりちょっと内側にあります。
事件後には、よりわかりやすくするため、女子トイレの赤い壁面の『女子トイレ』、男子トイレの青い壁面の『男子トイレ』という表示をすぐに貼りました」(市担当者)
当時の女子トイレ入り口の写真では、『男女が並び立つようなマーク』は入り口の側面に掲示されているように見える。正面から入ろうとすれば、「W.C.」の文字ととともに「女性マーク」がちゃんと目に入りそうだ。
ただ、トイレ入り口に右側からアクセスするなど、角度によっては「男女が並び立つようなマーク」が先に目に入る可能性もありそうにも思える。
浜松科学館によると、紛らわしいだろうということで、現在はマークのない文言だけの表示に変えたという。
今回の事件について、浜松科学館は「お子さまなどがたくさん来る施設なので、どんな事情があるにせよ、女子トイレに男性が入ったとなると、施設側として対応せざるをえず、最終的には警察を呼ぶことになった」と説明した。
●「男女共用以外の意味を想起するのは容易ではない」
報道によると、裁判所は、男性が急な腹痛で「男性の注意力が低下していた可能性がうかがわれる」としたうえで、トイレを探してかなり足早に館内を歩いていたなどの目撃証言を踏まえて、「供述内容と整合し、不法な動機をうかがわせる証拠もない」と判断した。
さらに、「男女が並び立つようなマーク」については、「男女共用以外の意味を想起するのは容易ではない」として、結論として男性は「無罪」となった。