ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者の山口敬之さんから性暴力被害にあったとして慰謝料など1100万円の損害賠償を求めた訴訟の口頭弁論が7月8日、東京地裁(鈴木昭洋裁判長)で開かれた。
伊藤さんと山口さんの尋問が実施され、伊藤さんは「やめて、痛いと伝えてもやめてくれなかった」と訴え、山口さんは「同意はあった」と話し、双方の主張は対立した。
午前から昼休憩を挟み、午後にまたがる形で2時間近く行われた山口さんの代理人弁護士による伊藤さんの尋問。
山口さんの代理人が「強姦被害にあった人が、加害者に安否を気遣う言葉を発することはありえますか。一般社会の常識ではありえない」と問いかけると、伊藤さんは「私の知っている常識はあなたの常識とは違います」と答えた。
<伊藤さんが山口さんに送ったメールについて>
(弁)は山口さんの代理人弁護士、(伊)は伊藤詩織さん、(裁)は裁判官。
(弁)(事件の後)最初に送ったメールの内容は
(伊)「無事ワシントンに戻られましたでしょうか?」とビザについて尋ねる内容
(弁)強姦被害にあった人が、加害者に安否を気遣う言葉を発することはありえますか。一般社会の常識ではありえない
(伊)一般社会の常識とは
(弁)日本の常識です
(伊)私の知っている常識はあなたの常識とは違います
(弁)強姦加害者のところで働きたいと思うか
(伊)混乱していたけど、何もないように振る舞うようにした
(弁)2日も経っていたのに混乱していたんですか
<デートレイプドラッグについて>
(弁)『BlackBox』にデートレイプドラッグを印象付ける書き方をしている
(伊)確証はしていませんが、そう思っているという話
(弁)『BlackBox』のP.66に「インターネットでアメリカのサイトを検索して見ると、デートレイプドラッグを入れられた場合に起きる記憶障害や吐き気の症状は、自分の身に起きたことと、驚くほど一致していた」とあるが、裏付ける客観証拠は何もない。ドラッグを使うには事前に用意しておかなければできず、計画的な犯行が必要だ。なぜそうしたドラッグを使うのかご存知か
(伊)性交渉するという意図があって使う
(弁)ターゲットとした女性に強姦できないと思うからこそ使うんじゃないのか
(原告側の代理人弁護士から異議)「意見を求めており、相当じゃない」
(裁)「質問を変えてください」
(弁)世間はそういう理解だがあなたは
(伊)わかりません
(弁)人の出入りのある高級ホテルはバレやすいので、犯行にふさわしい場所ではないと思う
(伊)私は答えられません
(弁)ほとんど酒を飲んでいなかったとすると、薬物による催眠作用で眠らされたということか
(伊)はい。ほとんど酒を飲んでいなかったのではなく、酔っ払っていなかった
(弁)デートレイプドラッグについて、一般的には15分から30分で効果が出て、3〜6時間ほど持続するという文献がある。催眠効果で気を失ったとすると、失ったままではないのか
(伊)薬の効果は人それぞれ。他の文献では他の時間を指摘するものもあった。3〜6時間に限らないと思う
(弁)催眠効果が出たとしたら、あなたが店内を歩いたり話したりできないのではないか
(伊)それは間違っている。レイプドラッグの作用は、催眠だけではなく、普通に振舞ってもその間記憶がないこともある。催眠=ずっと眠っているのではない