香港での反政府的な活動を取り締まる「香港国家安全維持法(国安法)」が6月30日に施行された。同じ日に公開された法律によると、香港に永住権を持っていない外国人による「香港以外の場所」での行為も処罰対象になるという(38条)。
これを受け、ネット上では「日本人にも適用されるってこと?恐ろしい」「香港についてツイートしないようにしよう…」「世界のどこにいても、逮捕される可能性があるのは怖い」などの声が複数あがっている。
●日本人が、日本国内で「国安法」違反行為をしたらアウト?
日本人が、日本国内で国安法違反行為をした場合、逮捕されたり、処罰されたりする可能性はあるのだろうか。柏本英生弁護士は、次のように説明する。
「処罰の対象になり、行為後に香港に行った際には処罰される可能性があります。
しかし、外国には自国の捜査権は及びません。そのため、香港の警察が日本に来て捜査をしたり、逮捕したりすることはできません。国外にいる逃亡犯罪人を捕まえるためには、国際捜査協力を求める必要があります」
●インターポールを通じて国際手配された場合は?
柏本弁護士によると、国際捜査協力の主な方法としては、(1)国際刑事警察機構(インターポール)を通じて国際手配(赤手配)をする、(2)特定の国に対して個別に逃亡犯罪人引渡し請求をする、の2つがあるという。
「ただし、(1)については、日本には、赤手配に基づいて裁判官が令状を発付する制度はありませんから、警察が指名手配犯を捕まえることはできません」
●香港から日本に対し、逃亡犯罪人の引渡しを請求される可能性は?
そうなると、(2)香港から日本に対して、逃亡犯罪人の引渡しを請求することになりそうだ。
「日本が『逃亡犯罪人引渡条約』を結んでいるのはアメリカと韓国だけです。しかし、条約がなくても逃亡犯罪人の引渡しをすることは可能であり、実際に日本から中国に引渡しをおこなったケースもあります。
条約を結んでいない国との間の犯罪人引渡しのルールについては、『逃亡犯罪人引渡法』という法律があります。
ただし、この法律では、政治犯や『逃亡犯罪人が日本国民であるとき』などは引き渡してはならないとされています。
そのため、日本が香港からの要請に応じて日本人を捕まえたり、香港に引渡したりすることはありません」
「国安法は施行されたばかりで、その運用はまだ不透明です。今後、香港が国安法違反の外国人に対してどのような態度を取るのか、注意して見守っておく必要があります」