三浦監督が初采配を振るったシーズン、ベイスターズは残念ながらBクラスに沈んだ。結局、低迷した一番の原因は投手力。先発陣にも中継ぎ陣にも課題があった。
現代野球で分業制を敷くのは当然だが、先発は中6日で投げているのに100球前後で降板するのはありえない。2年連続で規定投球回数に達した投手が1人もいないことが問題を浮き彫りにしている。
防御率は12球団ワーストの唯一の4点台。野手の視点から考えてもこの数字は厳しい。5点を奪うのは好打者がいくらそろっていても困難だ。
1998年に日本一に輝いたチームはマシンガン打線と呼ばれたが、投手陣の充実も優勝の原動力だった。佐々木という絶対的なクローザーをはじめ、現役時代の三浦監督を含めて先発陣が整っていた。
計算できる投手の一人である今永は手術からの復帰明けで、明らかに駒不足だ。投手出身の指揮官に代わっても、船頭一人だけではチームは変わらない。投手陣の整備が急務だろう。
序盤に外国人選手が不在だったことも、失速した一因に挙げられる。とはいえ、中盤以降も投打がかみ合わない試合が多かったのは、キャンプから戦い方をしっかりすりあわせていなかったからではないか。
監督が目指した1点を取る野球が見えなかったことも一例だ。打線は打率上位10傑に5人が並び、ものすごく破壊力があった。打ちまくって勝つ野球は見ていて面白いし、自分も好きだが、これだけでは勝てない。
盗塁はここまで両リーグ最少の30にとどまる。打者も走者を次の塁へ進める意識が足りない。細かい野球は積み重ねだ。できなければ首脳陣が口酸っぱく言わないと、何も変化しない。
個人的な活躍に目を転じると、最も光ったのはやはり牧だ。派手さはないが、泥くさくて気持ちが太い。どんなコースにでも対応し、何より打席での姿勢がいい。
打った喜びも、打てなかった悔しさも全身で表している。若いチームだからこそ、感情をもっと表に出していい。牧のような若手の突き上げがないとチームは活性していかない。
細川や森、知野は打率が1割では話にならない。野球選手にとって与えられるチャンスは限られた回数しかない。生かすか、殺すか。しっかり受け止めてほしい。
一方、9年目の宮崎はさすがだった。今季国内フリーエージェント(FA)権を取得して今後の動向が気になるが、球団は絶対に流出を阻止しないといけない。
FAで抜けると櫛(くし)の歯が欠けるように、チーム全体が弱体化し打線のレベルが下がる。ベンチからすれば、あれだけ頼りになる打者はいない。
今季も開幕前に優勝と予想したが、外れてしまった。しかも最下位に予想したヤクルトが優勝に迫っている。来季こそ東や今永ら先発投手陣の顔ぶれがそろい、打者も充実期に入るはずだ。
三浦監督も1年目の経験を生かし、強くなってほしい。時に雷を落としてもいい。どう振る舞って、どうチームを変えていくのか。大いに期待している。
たかぎ・よしかず
1971年にドラフト外で大洋(現横浜DeNA)に入団。プロ16年で957安打、102本塁打、463打点。87年に引退後、1軍の打撃コーチなどを歴任。98年には「マシンガン打線」の生みの親として、日本一に貢献した。愛川町出身。72歳。
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