ドラフト会議で即戦力選手を毎年指名して成果を上げている横浜DeNAのスカウト陣に、昨季限りで現役引退した中川大志さん(30)=写真左=が今シーズンから加わっている。コロナ禍で選手を視察できない時期も過ごしたが、担当する東海地区から2人の左腕を指名した。「人を評価するのは想像していたよりも難しかったが、それ以上にやりがいがある」。“ルーキー”は充実した一年を振り返った。
昨年10月、球団から戦力外通告を受けた際、ほぼ同じタイミングで編成部アマスカウトから打診が届いた。「チームを強くする部署。魅力を感じていた」。通算168試合、打率2割4厘、9本塁打のスラッガーは現役にもう未練はなかった。
今年1月から担当エリアでのあいさつ回りを始めたのもつかの間、政府から緊急事態宣言が発令された。3カ月弱の活動自粛期間では“目”を徹底的に養ったという。
前年までのスカウトが撮影した映像だけでなく、プロで活躍している選手の高校時代のフォームを動画でチェックし、成功する選手の要因を探求した。動作解析やメディカルなどの部内勉強会やスカウト歴の長い吉田孝司顧問兼球団代表補佐(74)=写真右=ら先輩たちの話にも耳を傾けてきた。
ことし11月のドラフト会議で、5位指名した池谷蒼大(ヤマハ)と同6位の高田琢登(静岡商高)の両投手には一目でほれ込んだという。自粛明けとともに足しげく通い、池谷は「真っすぐがいい」、高田は「何試合も見てパフォーマンスが良かった。高校生でナンバー1じゃないかと思うほどだった」と振り返る。
スカウトとして大切にしている教えがある。
「自分が編成部長というつもりで選手を見なさい」。吉田顧問から諭された言葉だ。補強ポイントを事前に予想し、どんな選手が求められるのかを考え抜いてきた。
ドラフト前日のスカウト会議は想像をはるかに超える「熱い場」だった。「全員が推す選手の魅力をぶつけ合う。いろんな意見があって本当にすごい。だからいいドラフトが毎年できるのかな」。スカウト1年目でも先輩に負けられなかった。
ベイスターズではかなえられなかった日本一という夢を、発掘する原石に託す。「周りの目に流されず、いいなと感じた選手は自信を持って、思いを伝えられるスカウトになりたいですね」
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