交流戦で浮上のきっかけをつかみたいベイスターズにとって、ようやく戦列に復帰した背番号29の奮闘が際立っている。5月21日のヤクルト戦(神宮)で今季初先発した伊藤光だ。ここ9試合連続でスタメンマスクをかぶる14年目のベテランが、新しい風を吹かせている。
簡単に諦めることはできない。その打席からはそんな執念がのぞいた。
26日のオリックス戦(横浜)、序盤の大量失点で大勢は決していた。
それでも、2─12の六回1死で伊藤光は2球で追い込まれながらもファウルで粘りに粘る。15球目を見極めて四球を選ぶと、後続の佐野、オースティンが連打でつないで1点につながった。好投手宮城に食らいついた打撃に、三浦監督も「10点差ある中で、粘っていく姿勢はあしたにもつながる」と評価した。
交流戦から打順は「2番」を任されている。球団の捕手としては、2007年10月の相川亮二(現巨人コーチ)以来となる抜てき。「打撃の状態がいいし、細かいこともできる」。指揮官はそんな信頼も口にする。
4年契約を結んだ1年目の昨季は30試合にとどまった。ファームで指揮を執っていた三浦監督の目指す野球勘に触れながら、若手投手を積極的にけん引する姿があった。
「走攻守で隙のない野球。それがしっかりできるキャッチャーとして勝負したい」。今季に懸ける思いは誰よりも熱かったが、3月に左ふくらはぎの肉離れで不本意ながら離脱し、チームは開幕から低迷。嶺井や戸柱を軸に捕手を起用してきたが、勝利になかなか結び付かなかった。
伊藤光の復帰後、先発した9試合でチームは4勝4敗1分け。打率2割5分8厘、出塁率3割7分8厘と粘り強い打撃に持ち味の強気のリードで投手陣を奮い立たせ、交流戦で首位争いを演じる原動力となっている。
6月1日からは日本シリーズ4連覇中の王者ソフトバンクを本拠地に迎える。主役でも脇役でも、32歳はチームの勢いを本物にするため身を粉にする覚悟だろう。
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