前半戦を終えて、セ・リーグの打撃10傑に佐野、桑原、オースティン、宮崎の4人が名を連ねている。首位を走る阪神は1人もいないし、巨人はウィーラーのみ。なんと言えばいいのか。思うように打線が組めなかった開幕当初が悔やまれる。
序盤は桑原、関根の1、2番コンビとルーキー牧の活躍に、ラミレス前監督時代とは違った新鮮な風を感じた。若手にとって良い刺激になったが結果が伴わないので、4月中旬には来日後間もない外国人選手と入れ替えざるを得なくなった。
キャンプ、オープン戦を踏まない調整はソトとオースティンの2人にとって厳しかったし、先発から外れた選手もモチベーションを保つのは難しかったと推測する。
とはいえ、ベンチの決断は間違いではなかった。得点圏打率が低かった佐野を3番に据え、伊藤光を2番に置いた。8番大和もいい仕事をしていた。打順の固定化でそれぞれの役割が明確になり、落ち着いて打席に入れたことが交流戦以降の好結果につながった。
復活した桑原の活躍を語らないわけにはいかない。怠慢プレーで交代させられたこともあったが、その後は適度な緊張感を保っていて、今シーズンに懸ける思いが伝わってくる。もともと能力は高い。一喜一憂することなく最後まで突き進んでもらいたい。
佐野は責任感が強い男だから、余計なプレッシャーがあったはずだ。得点圏では空回りしたが、2年連続首位打者を狙えるバッティングは誰もまねできない。投手に向かって右肩がグッと入っているにもかかわらず、インサイドの速球、変化球にも対応できる。普通の打者ではボールを当てられない。捉える感覚が凡人には分からない。見事だよ。
開幕前は泥くさく1点を取る野球を掲げていたが、戦力を見れば強打者がそろっている。機動力や細かいことを望めない構成で、一発にしか頼れない部分は仕方がない。
ただ、前半戦の最後にはチームに足りなかったスピードを持つ森がアピールし、楠本は代打で存在感を高めた。宮本も足という特技を持っている。後半戦のメンバー編成にも注目したい。
三浦監督にとって我慢のシーズンになった。残り57試合で借金13。勝率を5割に戻すためには35勝22敗、ほぼ2勝1敗ペースで進んでいかなくてはならない。目先の順位だけにとらわれず、「三浦野球」をどのように確立していくのか。方向性を決めて、チーム一丸で後半戦の台風の目になってもらいたい。
たかぎ・よしかず
1971年にドラフト外で大洋(現横浜DeNA)に入団。プロ16年で957安打、102本塁打、463打点。87年に引退後、1軍の打撃コーチなどを歴任。98年には「マシンガン打線」の生みの親として、日本一に貢献した。愛川町出身。72歳。
外部リンク