日常の「あるある」ネタで笑いを生むつぶやきシローさんは、ツイッター上の「つぶやき」でも100万人近いフォロワーを持つほどの人気です。一方で、他のSNSとは距離を置いている、と言い切ります。ほぼ1日1回のペースでつぶやき続ける生活や、ネット上の様々な声とどう付き合うか、などについて聞きました。
「つぶやき」だからツイートの企画
ツイッターを始めたきっかけは、2009年の雑誌「週刊プレイボーイ」(集英社)の企画ですね。「ツイート=つぶやき」だから、つぶやきシローにやらせてみたら、という感じで。「10日くらい後の発売日までやってくれたら、ありがたいです」と言われたので、「そこまでならやれるかな」と思いながら続けて……今に至ります。
うだうだしていたら9年経った
「あるあるネタ」を、「一日ひとつぶ(やき)」って自分に課しているわけです。意外とフォロワーが増えちゃうと、なんかやめづらい。わかります? 「やめるときは『すみません。仕事で無理やりやっていたのでやめます』とかあいさつするのかな、どうしようかな」とうだうだしていたら9年経ちました。フォロワー数は100万近くです。
ただ、俺自身は「やめづらいな」ってだけで、フォロワーはそんなに気にしてないんですよ。言いっ放しなんで、僕。ただの一方通行で申し訳ないです。
知っている言葉は既読スルーだけ
ツイッター以外のSNSは、LINE(ライン)も含めてやってません。僕がLINEに関して知っている言葉は、「既読スルー」だけです。「トラブルの元」っていうイメージです、いまだに。若い子は使いこなせて、わかってるだろうからいいですけど、なまじっか知らないヤツが手を出すもんじゃねえって。
ツイッターは、ネタ帳として便利です。番組のロケで「どうも、つぶやきシローです」っていうシーンがよくあるじゃないですか。そのときに、あるあるネタを言うようにしてるんですよね。なんかないかなってときにこれまでのツイートを見て、「あ、昔のこれ、いいんじゃない」って。
ツイートは毎日のルーティン
ツイートは、字面を気にするくらい。漢字がいいかな、カタカナかな、ひらがながいいかな、と。1行で終わらせた方が美しいかなとか、句読点を打たず、一気にいった方がいいかな、とか。たかが、こんな1行くらいの「あるある」で引っかかって欲しくないですから。
真面目な話をすると、自分に対して「お笑い(芸人)なんだから、1日1個くらいネタを考えなさいよ」と、自分に負荷をかけているところがある。「ネタ番組あんまないし、呼ばれないんだから。金にもなんないけど、とりあえずやりなさいよ」と。毎日腕立て(伏せ)を10回やる人とかいるじゃないですか。そんな感じです。
義務になるとすごい苦痛
でも毎日じゃない。夜中、寝る前にやるんですけど、最近は酒飲んでると寝落ちしちゃうんですよね。昔はそれでも「待っている人がいるかもしれない」と思ってやったけれど、もう「ごめんなさい」って甘えるようにしてるんです。
気晴らしで趣味のつもりだったのが、義務になるとすごい苦痛。ジムもそうじゃないですか。そうなりたくないから、嫌なときはやんなくていいんじゃないか、と。そうじゃないと今後続かないと思ったんだよね。やらない自分を許す日があるから、まだ続いてる。自分でコントロールしています。
リツイートは見ないのが一番
最初はリツイートも見ていました。それまでmixi(ミクシー)とかブログも一切やってなかったので、教えてもらって「こういうことなんだ」と。でも悪口も来るし、「なんだよ」とも思う。「ああいうのは見ない方がいいですよ」と聞いて、全然見なくなりました。こっちは顔を出してやっているわけで、そうじゃない人の相手をしてもしょうがない。時間の無駄で、見ないのが一番だと思います。
SNSはいろんな情報が入ってきて、時間の「短縮」と言うけれど、「その情報、本当にいる?」って思っちゃう。スタバでも、電車でも、風呂の中でも袋に入れてスマホを触ってる人がいる。依存症でしょ、完全に。「SNS禁止の日」をつくって、国民全員が休む日を作った方がいいですよ。
個性を出すって、今の子は大変
僕は寝るとき、夜10時になったらスマホの電源を切ります。みんなにびっくりされるんですよ。「え?」って。俺は逆に「え、電源切らないの?」って思う。「俺は今日は誰とも(つながるのは)嫌です」って、電源切るんです。緊急ならパソコンのメールや家の電話もあるし。出かけるときだけ電源を入れる。切るっていいですよ。「もう受け付けません」「自分の時間です」って。
みんな、SNSから自分のためになる何かを得ようとするから、のめり込むんでしょうね。本を読んだり、人と遊んだり、足で稼ぐことをやらなくなっている。これだけ個性的なのに、同じものを見て、同じところに向かっている気がする。これで個性を出すって、今の子は大変ですね。
そんなにつながりたいですか?
ツイッターでフォローしている人はいません。人間関係のトラブルのもとなんでしょ、聞くところによると。「俺はフォローしたのに、してくんない」とか、「『いいね』をくれない」って怒る上司がいるとか。だから最初からゼロが一番なんですよ。めんどくさいことはやらない。
フェイスブックをやらないかと誘われた時も、「やらない」って言いました。そんなにつながりたいですか? やらない人はダメとか、入ってない人は友達がいないとか、全然思わないですね。つながりすぎてしんどいって悩んでる人だっている。リセットの日を作ったらいいと思うんです。「みなさん、1回整理しませんか」って。
「物言わぬ支持者」はいる
電話番号だって、「これまだ使えてんのかな」っていうのばっかりじゃないですか。相手に2年連絡しなかったら、まあいらない。何か自分の役に立つかもしれないからってつなげておく、その欲がトラブルのもとですよ。そういうヤツから、ねずみ講の電話がかかってくるんですよ、たまに。「布団買って」とか。ろくなことがないですよ。
リツイートの数も振り返らないです。だってツイートの内容にもよるし、時間帯にもよる。悪口を書いてくる人もいるけれど、「物言わぬ支持者」がいるのが常。何も押さない人、リツイートもしない人がほとんどで、その「物言わぬ支持者」を俺は支持するから、押す人という狭い中の数字は、どうってことない。その評価が標本調査だとも思わないですね。(聞き手・荻原千明)
つぶやきしろー
1971年、栃木県出身。94年にホリプロお笑いオーディションに合格。栃木弁でぼそぼそとつぶやく芸で知られ、「イカと醤油(しょうゆ)」などの著書もある。