『AIに負けない子どもを育てる』などの本で知られる数学者・新井紀子先生が教科ごとに読解力のつけ方を教えます。今回と次回は社会科。日本の地理について、丸暗記するのではなく、理科の視点も用いて読み解いてみましょう。
3年生の社会科では、住んでいる地域のことを学びます。上級生になると日本全国の気候や産業、さらに歴史について学びます。覚えることが多すぎて、つらくなる人も少なくないでしょう。私もそうでした。そこで、こんな学び方を編み出しました。
1都1道2府43県や県庁所在地などの名前は覚えるしかありません。パズルやゲームを使い、楽しく覚えられるといいですね。そのとき、日本地図の形はしっかり覚えます。北海道、北東から南西にむけて長く横たわる本州、四国、九州は日本の国土をかたちづくる主要4島です。おおよその形をかけるようになりましょう。さて、これで準備が整いました。
雨や天気、気温の知識で読み解く
日本は地震が多い火山国です。4つの主な島の中央にはそれぞれ背骨のように高い山脈(山地)が連なり、大きな半島にも小さな山脈(山地)があります。まず、山脈のある場所を覚えます。あとは理科の知識があれば、どの場所がどんな気候になるか、どんな作物に適しているかを想像できるようになるのです。
理科は4年生で「雨水のゆくえと地面のようす」「天気のようす」を、5年生で「流れる水の働きと土地の変化」「天気の変化」を学びます。その知識で社会科を読み解いてみます。
水は高いところから低いところに流れます。当たり前ですね。流れる水が集まると川になり、土砂を押し流し、海に流れこむ途中に平野をつくります。地図を見てみましょう。海沿いの地域に緑色の場所があります。それが平野です。代表的なものとして関東平野(東京都など)や濃尾平野(愛知県など)、仙台平野(宮城県)などを挙げることができます。
さて、日本では11~2月ごろが冬です。日本が「北半球」にあるからです。北にいくほど、気温は低くなる傾向があります。天気にもよりますが、最高気温は高い順に那覇、大阪・名古屋、東京、仙台、札幌になる日が多いはず。天気予報を見るとき、自分が住むところだけでなく、ほかの地域にも目を向けてみます。
雨は空から降ってきます。でも、空にタンクはありません。水はどこからやってくるのでしょうか。実は、雨の源は海なのです。
海で蒸発した水蒸気をふくむ空気は風に乗って日本列島にやってきます。夏は南風に乗って太平洋から湿った空気が流れこみます。山脈にそって上昇すると、冷やされて雨粒になります。4年生の理科で教わる「水の蒸発と結露」のしくみと同じです。ですから、山脈の南側にあたる太平洋側に雨となって降ります。一方、冬は大陸からの冷たい北風が日本海の水蒸気を集めて、背骨の山脈の北側である日本海側に大雪を降らせます。身軽になった風は山脈をこえ、乾いた冷たい北風になり、「木枯らし」として太平洋側に吹くはずです。
プロフィル 国立情報学研究所教授。一橋大学や米イリノイ大学、東京工業大学で学ぶ。読解力を診断する「リーディングスキルテスト」の研究開発を主導する。
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