『桜木建二が教える 大人にも子どもにも役立つ 2020年教育改革・キソ学力のひみつ』
実は苦手意識すら抱いていない小学生が多い
「数学はからきし苦手でして……」
「根っからの文系人間なので、数字はちょっと……」
大人同士でそんな会話が交わされている場面は、よく見かける。
数学にアレルギーを持つ人は、世代を問わず不思議なほど多いものだ。子どもが学習を進めるうえで、最初に引っかかりを覚え、つまずいてしまうのも、どうやら算数が多いようだな。
これは放っておけない。
そこで、だ。算数・数学を担当する教員への研修や講演も数多くこなす、京都産業大学理学部の牛瀧文宏教授のもとを訪ねたぞ。
算数で決して転ばない、そして、数学的思考を身につけるための方策を教えてもらうんだ!
小学生の子どもたちに、算数が苦手だという様子がやたら目立つように見えるのだけれど、これはなぜなのか、と牛瀧先生にぶつけてみた。
すると、先生は、実は苦手意識すら抱いていない子どもが多いのだという。
「そうなんです。小学生だと、あまり危機感を持っていない子が多いです。中学生あたりになると、定期試験や模試ではっきり点数と順位がつきますが、算数をやっているうちはあまり深刻に考えなかったりします。
『一応は授業にもついていけているし、テストもクリアできているから』と、なんとなくうやむやにしてしまっている。
塾などに通っていれば別ですが、学校の授業の範囲では、よくできる、できない、理解している、していない、ということが、あまり顕在化しないのです。
ただ、その苦手意識のなさが、ちょっと厄介ではあります」
習ったことを総動員して取り組む教科
というのも、算数・数学は、典型的な「積み上げ型」の教科だからだ。
「算数も、数学も、最初の単元から一つひとつきちんと理解してしっかり使えるようにしておかないと、勉強が進むたびにつらくなってきてしまいます。
前に習ったことをすべて使いながら、新しいことを学んでいくからです。
たとえば、 23×36 という計算をしましょうという問題があるとします。小学3年生あたりになると出される問題です。
かけ算の筆算ですが、これを解くには、『九九』を覚えていることが必要ですよね。くり上がりの計算方法も知っておかないといけない。1〜2年生のときに習うことがちゃんと運用できないと、スムーズに解けないのです。
これまでの積み上げがなかったり、あってもあやふやだったりすると、それぞれの段階でミスする確率が非常に高くなる。
ミスしないまでも、各段階のことがスピーディーにできないと、解答までに時間がかかって、テストなどの制限時間内に解けないことがあります。
そうなると、もう一度足場をかため直さない限り、どんどん算数が苦手になっていく一方となってしまうのです」
なるほどたしかに。これはよく見かけるパターンだ。脱出法はあるのかどうか、次回も牛瀧先生に教えてもらうぞ。
牛瀧文宏 理学博士(位相幾何学、算数・数学における教員研修開発)。京都産業大学理学部教授。さまざまな自治体と連携して教員研修プログラムの開発をおこなうほか、高校・数学の教科書執筆にも携わる。「ドラゴン桜2式算数力ドリル」シリーズ、「ドラゴン桜2式数学力ドリル」シリーズの監修を担当。趣味はピアノ、猫と遊ぶこと。
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「ドラゴン桜2」 作者は、漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したが、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。弁護士・桜木建二が生徒たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに、実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式メルマガ」で連載中。
ライター・山内宏泰 主な著書に、『ドラゴン桜・桜木建二の東大合格徹底指南』(宝島社)、『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)、『文学とワイン』(青幻舎)などがある。中3の娘が受験勉強中。
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