車いすにも子ども用があるって、知っていますか? 見た目からはベビーカーとまちがわれやすいため、使っている人は不便な思いをしたり、まわりの人からかけられる言葉に傷ついたりすることもあるそうです。「存在を知ってほしい」と、活動している人たちに話を聞きました。
折りたためず すごく重い
「車いす」というと、大きな車輪がついているものをイメージする人が多いでしょう。しかし、子ども用車いすの多くは「介助式」といって、乗っている人が自分で動かすことはできません。ベビーカーは小さく折りたたむことができますが、子ども用車いすの多くは、折りたためません。ベビーカーよりもかなり重さがあり、階段では大人でも数人がかりでないと運べません。
ベビーカーと誤解され苦労も
一人一人の体に合わせて作られるので、デザインも形もいろいろです。子ども用車いすの普及・啓発に取り組む団体「mina family」代表理事の本田香織さん(38歳)によると、近年はおしゃれなものも増え、ベビーカーとの区別がつきにくくなっているそうです。
本田さんの長女・萌々花さん(7歳)は「ウエスト症候群」という病気のため、歩くことができません。商業施設の障がい者用駐車スペースに車を止めたところ、「ベビーカーの方は使えません」と言われたことがあります。
夏のある日、電車で病院に行く途中、「こんな暑い日にベビーカーに乗せるなんて」と言われたこともありました。本田さんは「優遇してほしいわけではないんです。ただ、車いすとしてあつかってほしいだけ」。
優しく見守って
東京都内の主婦、永峰玲子さん(41歳)も、長女・楓音さん(10歳)が子ども用車いすを使っています。数年前まで使っていた車いすはベビーカーにまちがわれやすく、電車の中でまわりにいた人が「たためばいいのに」などと小声で話しているのが耳に入ってきたこともあると話します。
そんな経験から、電車に乗るときは周囲に気をつかい、比較的すいている列に並んだり、何本も列車を見送ったりしています。
最近では「車いすが乗りまーす」と、周囲に聞こえるように話しながら乗りこむようにしているそうです。「ベビーカーでも車いすでも、世の中の人たちが、優しい目で見てくれるようになったらな」と願っています。
ポスターやマークで普及へ
国土交通省は8月、子ども用車いすの普及・啓発のためのポスターを作りました=上。全国の駅や電車などにはられています。
本田さんの団体は、子ども用車いすだとわかりやすくするため、独自にマークを作りました=下。他にもさまざまな団体がマークを作り、普及に取り組んでいます。
本田さんは「本当はマークがなくても、みんなが子ども用車いすのことを知っているという状況になってほしい。それに、たとえ子ども用車いすのことを知らなかったとしても、マークをきっかけに、一歩立ち止まって、『何か障がいがあるのかな?』と考えてみてほしいです」と話します。
外部リンク