みなさんの学校には校則はありますか? なぜこのような決まりがあるのかわからない「ブラック校則」と呼ばれるものも、あるかもしれません。最近では、ブラック校則をなくそうとする動きも出ています。今回は校則について考えます。(近藤理恵)
黒髪強要で精神的苦痛 不登校に
そもそも校則とは一体どんなものなのでしょうか。文部科学省は「児童生徒が健全な学校生活を営み、よりよく成長・発達していくため、各学校の責任と判断の下にそれぞれ定める一定の決まり」としています。
校則について、根拠となる法令は特にありませんが、校則を制定する権限は、学校責任者の校長先生にあるとされます。
加えて文科省は、児童生徒の実態や時代の進展などを踏まえたものになるよう「積極的に見直しを行うことが大切」としています。
しかし、世間から批判されても見直されずに残っている校則もあります。その代表的な例が「地毛の黒染め強要」です。
2017年には、生まれつき茶色い髪を黒髪にするよう強要された大阪府立高校の女子生徒が、精神的苦痛を受けて不登校になったとして、府を相手取り提訴しました。これを機に、不合理な校則や学校のルールなどが、ブラック校則として注目されるようになりました。
健全な学校生活のため?
子どもの学習支援をするNPO法人「キッズドア」理事長の渡辺由美子さんたちは「ブラック校則をなくそう!」プロジェクトを同年12月に発足。インターネット上で、校則に苦しんだ経験を子どもたちから募ったり、署名活動をしたりしてきました。今年8月、活動に賛同する約6万人の署名と、改善を求める提言書を文科省に提出しました。
プロジェクトのスーパーバイザーを務める評論家の荻上チキさんは、署名の提出後の会見で「(黒髪の強要や下着の色の指定など)人権侵害にあたるような校則を早急に把握して対応すべきだ」と話しました。
校則をゼロにした学校も
東京都世田谷区立桜丘中学校は、2015年に校則をすべてなくしました。制服はなく、携帯電話やタブレットの持ち込みもできます。
生徒手帳には、生徒心得として「礼儀を大切にする、出会いを大切にする、自分を大切にする」と書かれているだけです。2年の男子生徒は「自分の好きなものが着られて楽です。学校は自由で楽しい」と話します。
校長の西郷孝彦先生が9年前に着任した当時は、授業を邪魔する生徒がいたりして、学校は荒れていたそうです。校則も厳しく、生徒手帳にびっしりと書かれていました。
「靴下やセーターの色も指定されていましたが、本当に指定する必要があるのか考えました。必要のない校則を一つひとつなくしていった結果、校則がなくなりました」と西郷先生は話します。
みんなが自主性持って学校へ
背景には、障がいの有無などで学ぶ場や環境を分けず、一人ひとりの能力と向き合いながらともに学ぶ「インクルーシブ教育」を目指したことがあります。
「例えば、制服の着心地が悪くて制服を着られないため、学校に来られない子もいる。そういう子が学校に来られるようにしたいと考えました」
生徒たちに自由な発想で、自主性を持って学校生活を送ってほしいという思いもあります。
「自主性を重んじると、自分たちのやりたいことに取り組んでいいと思えるようになり、エネルギーがいい方向に向くようになりました」と西郷先生。勉強が楽しくなって成績を伸ばす生徒や、自分の好きなことを追求するため留学する生徒もたくさんいるそうです。
西郷先生は、地毛を黒く染めさせるような校則は人権侵害と考えます。「『理不尽なことも我慢すべき』という感情論ではなく、『人権侵害』という意識を持たないと、不適切な指導はなくならない」と指摘します。
校風などを知った上で入学する私立の中学校と異なり、公立の中学校は選択の余地がないまま進学せざるをえないことも多くあります。
「校則は、子どもが納得しているかどうかが問題です。例えば公立の場合は『制服』ではなく、着用が望ましいとされる『標準服』。それを義務づけるのはおかしい。法的な解釈から、校則の問題を考えるべきだと思っています」
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