【異能とは!?】つきぬけた才能を持つ人を「異能」と呼びます。異能を支援するため、ソフトバンクグループ代表の孫正義さんが「孫正義育英財団」を立ち上げました。財団生に選ばれた第2期生が夢中になる研究を紹介します。
第7回 東京都 森下礼智(中学1年)
みなさんは、ものの見え方や感じ方は、人によって同じなのか、そうでないのかを、じっくり考えたことがありますか? そうした疑問に興味があり、バーチャルリアリティー(仮想現実)の研究を続けています。
ぼくは少し変わっていて、ものを3次元で立体的に理解する「空間認知」が得意です。また、言語で表現する力や思考力をあらわす「言語性IQ」は、平均より高い数字が出ています。
上のように書くと、まるで何でもできる人みたいですが、文章を読むこととくらべ、絵や文字をかくことがとても苦手です。小学1年の時に、目のピントを調節する機能が弱く、ディスグラフィア(読むことには問題がなく、手でかくことだけが難しい症状)であるとわかりました。字がきれいに書けないことで学校の先生や友だちからいやなことを言われて、2年生の春に体調が悪くなってしまいました。
そんな時、母がローマ字の読み方やパソコンを使い、文字を打つことを教えてくれました。パソコンの使い方をおぼえたぼくは、3Dの地図作りに夢中になりました。自分でも3Dの街を作ってみたいという気持ちが高まり、プログラミングの勉強を始めました。
忘れられないできごとがあったのは3年生の時。バーチャルリアリティー技術のコンテストで、小中学生のなかで最高賞を受賞できたのです。ぼくにも世の中でできることがあるかもしれない、と思った瞬間でした。
現在、手書きが難しい時は、パソコンとタブレットで文章を書いています。ぼくはテクノロジーには、「困難があるからできなくてもしかたない」とあきらめていた何かを、変える力があると実感しています。
手書きが苦手なことが解決しつつある今、もう一つの苦手である「忘れ物をしやすいこと」を改善する研究をすることにしました。今はどんな条件であれば、一番記憶に残りやすいかを実験しています。
去年の冬には、東京・お台場で行われた科学技術振興機構のイベントで研究発表を行い、賞をいただきました。この研究を続け、不注意の人を助ける装置やアプリを開発するのが今のぼくの夢です。
みんなと同じ方法ではなくても、自分なりに少しでもやりやすい方法を探す過程で大好きなことに出合い、新しい道が開けることもあるかもしれません。
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