【異能とは!?】 つきぬけた才能を持つ人を「異能」と呼びます。異能を支援するため、ソフトバンクグループ代表の孫正義さんが「孫正義育英財団」を立ち上げました。財団生に選ばれた第2期生が夢中になる研究を紹介します。
第3回 大阪大学基礎工学部 佐久間洋司(22歳)
みなさんは、2016年に公開された映画「君の名は。」を見たことがありますか? だれかと体が入れかわったことで、その人のようにふるまい、周りの人たちと過ごしていくという体験が特徴的です。
ぼくの取り組んでいる研究の一つが、最先端の技術「バーチャルリアリティー(VR=仮想現実)」を活用した、まさにこの映画のような入れかわりの研究です。みなさんがVRのゴーグルをかけてバーチャルの世界へ入り、手元を見るとぼくの手が、鏡を見れば「佐久間洋司」の姿が映っています。ぼくという人間を体験(ロールプレイ)してもらって、みなさんがほかのだれかになることを通じて、そのだれかの気持ちをもっと考えることができないか調べています。
別の研究では、人工知能(AI)にぼくの「動き方」をおぼえさせる研究もしています。例えば、ぼくが話しているときの手や口の動き方をAIに学習させていくと、「佐久間洋司らしい動き」を生み出せるようになります。まるでぼくにそっくりで、同じ動きをする分身(アバター)と向き合うことで、人間が他の人に向き合うときの「意識」を明らかにし、それを変えることができるのかを調べます。
これらは、私たちがもっと他の人に思いやりを持つためには、どんな経験をすればいいかを明らかにする研究です。
研究を始めたきっかけは、みなさんが感じていることと同じかもしれません。クラスメートや先生、家族といっしょにいるときに、「どうして私の言うことをわかってくれようとしないのだろう」と思ったことはありませんか? あるいは、友だちを傷つける冷たい言葉を聞いて、「どうしてそんなひどいことを言うのだろう」と悲しくなったことがあるかもしれません。
残念ながら、大人でも相手を思いやることができないことはあります。そんな私たちの意識を、科学が変えることができるかもしれない、と思っています。
ぼくの夢は「人をやさしくする技術を通じて、争いのない世界に貢献する」ことです。AIやVRなどさまざまな科学技術をつかって、私たちの心や人間の意識に変化をもたらし、もう少しだけやさしい世界にしたいと願っています。 人間の意識について今の理論ではわからないことばかりですが、実際の体験を通じて調べていくことが重要になると考えています。
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