ツイッターなどで今、ある「切り絵」が話題になっています。その作品は、たった1枚の紙を切ってできたとは思えない仕上がりです。実物を見てみたいと思い、話題の切り絵創作家・福田理代さん(45歳)を取材しました。(近藤理恵)
切り絵創作家・福田理代さん
ある日、ツイッターで1枚の写真を目にしました。曲がりくねったタコの足は立体的で、すき通った模様は、まるでレースのように繊細です。おどろいたのはこれが、紙を切って作り上げた「切り絵」だということです。
作者の福田さんは、「去年12月にツイッターにのせたら、ものすごい反響がありました。世界各国の方がコメントを寄せてくれて、とてもうれしかったです」と言います。
大作「海蛸子」 制作に2か月
「海蛸子」と名づけられたこの作品は「持てる技術を総動員して作った大作」で、制作には2か月かかりました。福田さんは、時計の修理が専門の会社員で、切り絵は仕事の後や休日などに行っています。仕事もピンセットなどを使う細かい作業ですが、「昔から細かい作業が好きなので、仕事の後に切り絵をしても、まったく苦にならない。むしろ気分転換になります」と言います。
ほかにも「クラゲ」や「ザトウクジラ」など、さまざまな作品を発表しています。深海魚の「リュウグウノツカイ」のうろこは「手がけた作品の中で最も細かい」と言い、その線の細さは0・2ミリほどです。あまりに細いので、まちがえて切って、のりでつなぎ合わせることもあるそうです。
ナイフ、マット、紙、のりの4点
作品は、さまざまな写真を見て、それらを参考にしながら下がきをかくことから始めます。「すべての線をつなぎ合わせなければいけないので、下がきはとても苦労します」
使う道具は特別なものではありません。文房具屋さんで買える「デザインナイフ」と、紙の下にしくカッターマット、紙とのりの4点です。紙は「タント紙」と呼ばれる画用紙に近い紙を使うことが多いそうですが、フィルム加工がしてある折り紙などで作ることもあるそうです。
「美しい」「どんな風に切れるかな」
「自然界にある美しいものが好き」という福田さん。魚のひれや、植物、昆虫などを見ると「どんな風に切れるかな」と考えてしまうそうです。
先日も、中学生の息子さんのスマートフォンの画面が割れてひびが入り、その細かさを「美しい!」と思ったそうです。「その割れたガラスを題材に、『硝子の羽』という作品を作りました」と笑います。
福田さんは高校生の時、友だちへの誕生日カードを切り絵で作ったことがきっかけで、切り絵にはまるようになりました。模様をどんどん複雑にしていくことが楽しかったそうです。
簡単な道具で始められるので、小学生にもおすすめです。「全部つなげて仕上げれば、切り絵となります。没頭できるし、切り心地も楽しい。好きな絵をかいて始めてみてください」
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