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ドラゴン桜2×朝日小学生新聞&朝日中高生新聞

2019年6月10日 08:30 朝日小学生新聞

『桜木建二が教える 大人にも子どもにも役立つ 2020年教育改革・キソ学力のひみつ』

ミトコンドリアはきしめん状のエネルギー生産工場だった


 「だれかのことをよく知ろうとしたら、その人が過ごしてきた過去を教えてもらうとわかりやすいですよね。

 学問も同じ。

 その分野のことをしっかり学ぶには、学問としての足跡をたどるとわかりやすくなります。科学の歴史、すなわち科学史をひもとくのです。

 たとえばミトコンドリアは、教科書的な説明でいうと細胞の中にある小器官で、細胞内の呼吸をつかさどっているということになります。

 これを生物学史的に見ていくと、違う姿が浮かび上がります。

 そもそも人はミトコンドリアなどという存在を、かつてはまったく知りませんでした。

 いまから100年ほど前のこと、研究者が細胞を顕微鏡でのぞいてみると、細胞内に糸くずみたいなものが散らばっているのを見つけた。

 でも糸のように見えたのは、細胞の断面を観察していたから。断面を脳内で3D化して立体的に捉えてみたところ、どうやらこの糸には厚みがあり、きしめんみたいなかたちをしていると判明しました。

 それでもしばらくは、なぜ細胞内にきしめんがあるのかは謎のまま。ですが多くの人が考えを尽くした結果、これは細胞内の狭い空間に多くの面積を持つ何ものかを収めるため、折り畳まれて巧妙に収納されているのだろうとされました。

 では細胞内で折り畳まれたものは、いったい何をしているのか。解明のために、きしめんの上に載っているものをつぶさに調べる人が現れた。

 するとそこには、酵素という化学反応をつかさどるたんぱく質が、順序正しく並んでいるとわかりました。私たちが摂取した栄養素を効率よく分解し、エネルギーに変える生産ラインが、きしめん上には並んでいたのです。

 そこは生命がエネルギーを生み出す工場だったということですね」

背景がわかると知識も定着


 そうか、こうして時間軸に沿って、知識が積み重ねられてきた歴史をたどると、ミトコンドリアがどういうものかよく理解できるな。

 教科書でいきなり「ミトコンドリアとは」と定義だけ教えるのとは、記憶に定着する深さがまったく違ってきそうだ。

 個人や民族の過去をたどる歴史はそれ自体がひとつの教科を成しているが、理科にだって歴史はある。科学史は、これからもっと注目されるべき存在だな。

 何かを知ろうと思ったら、その学問がどう展開してきたか、足跡を追っていくと、深い理解がすすむものだぞ。

福岡伸一 1959年9月29日、東京都生まれ。生物学者。青山学院大学総合文化政策学部教授、ロックフェラー大学客員教授。京都大学大学院で学んだ後、米国のロックフェラー大学やハーバード大学で研究活動をおこなう。京都大学などで教鞭を執り、現職。おもな著書に、『生物と無生物のあいだ』『動的平衡』などがある。
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「ドラゴン桜2」 作者は、漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したが、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。弁護士・桜木建二が生徒たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに、実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式メルマガ」で連載中。

ライター・山内宏泰 主な著書に、『ドラゴン桜・桜木建二の東大合格徹底指南』(宝島社)、『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)、『文学とワイン』(青幻舎)などがある。

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