野球やパズルなどの対戦ゲームを競技ととらえるeスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)。世界の競技人口は1億人を超えるとも言われ、昨年のアジア大会では公開競技になりました。
一般的にプロゲーマーは「企業から支援を受け、主にゲームで生計を立てている人」を指します。日本ではゲームは子どもの遊びと見られることが多く、プロゲーマーの社会的地位は高くありません。
そこで昨年2月、eスポーツに関わる団体がまとまって、日本eスポーツ連合(JeSU)が発足しました。大会などで優秀な成績を収めた選手にプロライセンスを発行し、「職業」という認識を定着させようと取り組んでいます。現在の保持者は130人です。
日本で2人目の女性プロ
大阪を拠点とするプロチーム「サイクロプスアスリートゲーミング」に所属する「たぬかな」選手は、日本人で2人目の女性プロです。昨年1月、飲料メーカー「レッドブル」と、女性初の契約を結びました。
たぬかな選手が戦うのは、格闘ゲーム「鉄拳」です。キャラクターを操作し、相手の体力を0にしたら勝ち。操作ミスを減らすため反復練習したり、対戦相手の癖を研究したりしたうえで、オンラインの対戦で腕を磨きます。大会は世界各地で開かれているため、多い時は月に2、3回、遠征します。
小学生のときからゲームに熱中していましたが、中学ではテニス部に所属。勉強の成績も良かったと言います。「いかに効率化できるかという点で、勉強とゲームの戦略は似ています。自分に合う方法を分析するのが、うまかったんだと思います」
高校生のとき、ゲームセンターで「鉄拳」と出合いました。腕試しをするため、地元の徳島県から隣の香川県まで出向くこともありました。
卒業後は就職しましたが、ゲームができる環境を求めて、時間の融通がきく会社に移りました。その後、今の事務所の存在を知りました。反対する親を「半年間だけやらせて」と説得し、プロの道に進みます。
恥ずかしいことではない
プロという責任の重さから、辞めたいと思ったり、好きだったゲームが嫌いになったりすることもありました。「以前はチャレンジャーとして、大会では自分の力を試したいという思いが強かった。今は『負けたらほんまにやばい』という気持ちが強くなっています」
今では、ゲームに反対していた家族や親戚が認めてくれるようになったことが喜びになり、力となっています。「応援してくれる人や会社への恩返しでもあります」
最近は、ゲームが文化の一つとして認められてきたと感じていると言います。「テニスなどのスポーツと同列にする必要はないと思いますが、ゲームをする人が増え、ゲームが好きということが恥ずかしいことではないと認められる世の中になればいいと思います」
(寺村貴彰)
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