家が京都競馬場から近かったということもあり、高校生の頃の僕は競馬に夢中でした。未成年ですからもちろん馬券は買えませんでしたが、毎週競馬雑誌を買い、その週あるレースの勝ち馬をひたすら予想していました。そして大河ドラマを見るような気持ちで、日曜日の15時には必ずテレビの前で正座してレースを観戦していたのでした。
予想するだけでは飽き足らず、僕は同じような競馬好きの友達7人のために競馬新聞をつくり始めました。自分の予想と競馬愛溢れるコラムを1人で執筆し、仲間に喜んでもらえることを何よりの報酬として頑張っていました。
『みどりのマキバオー』全10巻
つの丸、集英社文庫コミック版
そんな時出会った漫画が『みどりのマキバオー』です。それまでにも競馬を題材にした人気漫画はありましたが、どれもシリアスなストーリーが主でした。それに対しマキバオーはとにかくギャグが多い。最初は子ども向けの漫画かなとそこまで期待していなかったのですが、読み進めていくうちに硬派で骨太なスポーツ漫画へと表情が変わっていきます。圧倒的な強さを持つライバル「カスケード」の出現からこの漫画の「手応え」が変わってくるのです。
絶対王者であるカスケードにマキバオーは血の滲むような調教に耐え、レースで真っ向勝負を挑みます。マキバオーの表情に鬼気迫るものを感じながら、僕たちも結末を求めてページをめくります。しかし、負ける。カスケードどころか別の馬にも先着されるマキバオー。そこで彼は全身で悔しさを表し、全力で相手を讃えるのです。だからこそまた挑戦する美しさが輝き、気づけば僕らも涙をこぼしていたのでした。マキバオーがカスケードに勝つ日がくるかどうかは、ぜひ読んで確かめてください。
この漫画のおかげでさらに競馬が好きになった僕。今、自分が学生時代に見ていた競馬番組のMCをさせていただいているのも、夢に向かってど真ん中をまっすぐ走るマキバオーの姿に勇気づけられたからなのです。
かわしま・あきら 1979年生まれ、京都府出身。NSC大阪20期生。99年10月、同期の田村裕とお笑いコンビ「麒麟」を結成。バラエティー番組出演多数。
※朝日中高生新聞 2019年10月6日号掲載
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