電子工作ユニット ギャル電
世の中で注目を集める人は勉強とどう向き合ってきたのでしょうか。登場するのは「ギャル電」。大学院生のまおさんと、会社員のきょうこさんによるユニットで、ファッションなどにこだわりを持つ若い世代(ギャル)に向けて「電子工作を広めたい」と活動しています。独創性に富むアイテムづくりの原点や、勉強と重なる姿勢について聞きました。(近藤理恵)
ギャルと電子工作。異色とも思える組み合わせから「発電するルーズソックス」「光る熊手」など、オリジナリティーあふれるアイテムが次々に生み出されてきました。たとえば「会いたくて震えるデバイス」。会いたいという気持ちの強さ(大きさ)を震えの強弱であらわすアイテムで、相手にわたしておき、スマホなどで指示を送るとそのときの自分の思いを伝えることができるそうです。
ギャルに電子工作広めたい
きょうこさんは以前、ポールダンスに取り組んでいました。垂直に立てられた支柱に腕やあしをからませながら、さまざまな動きを披露する踊りのことです。踊るときに自分の衣装を光らせたいと考え、独学で電子工作を始めました。「本を買ったり、インターネットで調べたり。100円均一で売っている光るアイテムを分解して、つくり直すこともしました」とふり返ります。
まおさんは高校を卒業するまでタイで育ちました。中高生のころから日本のギャルにあこがれを持っていて「ギャルとして生き残るためにテクノロジーを手に入れよう」と日本の国立大学(工学部)に進学しました。ロボットコンテストに出場するなど、電子工作の楽しさを感じる一方で「自分が本当につくりたいものとはちがう」「もっとかわいいもの、かっこいいものを」という気持ちが募ったといいます。
そんなとき、友人を通して「電子工作に興味があるギャル」をさがしていたきょうこさんと知り合いに。「ギャルに電子工作を広めよう」と、2016年にユニットを結成しました。
自分自身が喜ぶことが大切
作品をつくるうえで、2人が大切にしているのは「自分自身が喜ぶこと」と声をそろえます。
きょうこさんは「作品を目にして、だれかが喜んでくれたらもちろんうれしい。でも、まずは自分がその作品を『見てみたい』という思いを大切にしています」。専門的とまではいかなくても、ある程度の知識さえあれば、自分がイメージするものを具体的な形にできる。こうした点が電子工作のおもしろさだといいます。
まおさんは「つくったものをばかにされたこともありましたが、音楽やファッションと組み合わせ、すごく喜ばれたことも……。ある環境では受け入れられなくても、場所をかえるなど別の環境になると評価がかわることがあります」。きょうこさんも「はみ出したところから新しいテクノロジーは生まれる」と強調します。
東京工業大学の大学院生でもあるまおさんは「完璧につくらないとだめみたいな風潮があるけれど、そんなことはない。一度つくってみてだめだったら、また考えてみればいい」と考えます。受験や日々の勉強に力を入れている中高生を念頭に置いたうえで「その姿勢は勉強も同じ。数学も手を動かして実際に解いてみないと、どこがわからないのかわかりません」。
きょうこさんも「自分がしたいことを周りから反対されても、いつかは自分の気持ちが望む方向に進むときがきます。そのときにとどまらず、一歩を踏み出してほしい」とアドバイスします。
最近は企業やアーティストとのコラボ商品をつくったり、ワークショップを開催したり、活動の幅が広がりつつあります。これからの目標について、まおさんは「ギャルが電子工作をして『光って盛れるギャル』がいっぱいになる世の中にしたい」、きょうこさんは「ポストアポカリプス(文明が退廃したあとの終末的な世界)でも生き残ること! 電子工作があれば新しい文明を築けるかもしれません」。
突き抜けた(!)発想は勉強によって広がる可能性と軌を一にします。
【ギャル電】「ギャルも電子工作する時代」をスローガンに2016年に結成。元ポールダンサーで現在は会社員のきょうこさん(右)と、東京工業大学大学院生のまおさんによるユニット。「パリピにモテる電子工作」をテーマに、個性的な作品を生み出す
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