「しんどさ」を感じる親との付き合い方についてアルテイシアさんにインタビュー
恋愛・結婚に関してあれこれ口出ししてくる親が、たまらなくしんどい。「もしかすると、自分の親は毒親かも」と考えるときもある。そんなオトナ女子は少なくありません。
そこで、『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』の著者である、毒親育ちの作家・アルテイシアさんに、「しんどさ」を感じる親との付き合い方について伺いました。
アルテイシア・プロフィール
夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』でデビュー。女性が自分らしく、オリジナルな幸せを追求して生きていくための方法や考え方を発信。『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』他著作多数。
「親はもういい」と思えたのは、全肯定してくれる人と出会ったから
―――強烈すぎる毒親エピソードが満載の『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』。不謹慎ながら、どのページも爆笑せざるをえないエッセイで、笑い泣きしながら拝読いたしました。
親との関係についてのお悩みを持つ人はたくさんいます。恋愛・結婚と親問題は、切っても切り離せない話なのでしょうね。
アルテイシアさん:子供の恋愛・結婚に口出ししまくるのは、毒親仕草の大定番ですからね!
―――ただ、親についての悩み相談の場合、「うちは毒親というほどではないかもしれないのですが……」と前置きされるケースが多々あります。
自分の親を「毒親」と言い切ることに抵抗があり、だからこそ親との関係を諦められず、苦しんでいる方が多いのかもしれません。
アルテイシアさんはいつごろ、ご両親との関係を諦められたのでしょうか。
アルテイシアさん:母との関係を諦められたのは、28歳のときですね。身体を壊して広告会社を辞めたと伝えたところ、母の返事は「あなたは辞めていないわよ」。頑なに事実を認めようとしなかったんです。
「自分の娘=いい会社で働くエリートでないと嫌なんだな。娘の体調より、自分の見栄や世間体のほうがずっと大切なんだな」。そう痛感しましたね。わかっていたこととはいえ、深く傷ついたし、でもだからこそ諦めがつきました。
父との関係を諦められたのも、同じく退職した直後です。私が経済的にすごく不安定な状況にもかかわらず、お金を無心されまして。「貸してくれないなら自殺する。俺が死んだらお前のせいだ」と、モラハラ大魔王もびっくりの手口で。
お金の無心は初めてではなかったとはいえ、今この状況でそう来るか……と。もう限界だ、と感じました。
なけなしの100万円を渡して、「もう二度と関わらないでほしい」と念押しして、携帯番号もメールアドレスも変えて。そこから一切の連絡を絶ちました。
―――満身創痍の状態だったのですね。
アルテイシアさん:ただそれでも、親からの愛情を求めてしまう気持ちがゼロになったわけではなくて。悲しいかな、子供ってそういうものなんですよね……。
心の底から「親はもういい」と思えるようになったのは、夫と出会ってからなんです。無条件に愛してくれて、味方になってくれる存在と出会えたことで初めて、「この人がいるから、もう大丈夫」と思えるようになって。
―――夫さんを「無条件で愛してくれる存在」だと感じられたのは、どういうときですか?
アルテイシアさん:毒親育ちって「見捨てられ不安」が強くて「お試し行動」をしてしまうんですよ。私も例に漏れずで、それまでは誰と付き合っても「もう別れる!」と叫んで家を飛び出す→あっさり振られる、の繰り返しで(笑)。
夫にも同じことをやったわけですが、夫はキッパリ「俺は別れる気はない!」と言ってくれたんです。そこでようやく「この人は離れていかない」と確信できました。
あとは、「自分はメンヘラクソビッチだから、こんな自分を変えない限り幸せになれない」と思っていたのですが、夫は「今まで大変なことがたくさんあったんだから、不安定になるのは当然。別に変わらなくていいんじゃないか」と言ってくれて。
「それでいいのだ」と生まれて初めて全肯定されたことで、心底安心して、メンタルも安定したんです。
―――夫さんとの結婚で、人生が大きく変わったのですね。
アルテイシアさん:「結婚」したから変わった、ということではないです。「彼が私を全肯定してくれて、このままの私でいいと思えた」から変わった、が正しいですね。
もともと「結婚」がしたいわけじゃなかった。ただ私の場合は、「法律婚をすることで戸籍上も親と離れられる」というのが、めちゃくちゃ大きなメリットだったんです。
法律婚していない状態だと、私が意識不明で病院に運ばれたとして、真っ先に連絡が行くのは親。自分の治療方針を親に決められるなんて、絶対に避けたい! でも法律婚しておけば、そういう事態は免れられます。
もちろん、大前提として「彼と一緒に人生を歩んでいきたい」という思いがあって、法律婚という道を選びました。
「親をしんどいと思う自分はダメだ」なんて思わなくていい
―――話は戻りますが、そもそも自分の親を「毒親」と言い切れない人も多いです。そういう場合、アルテイシアさんのような大きな変化を得るのは難しいのでしょうか。
アルテイシアさん:「毒親とまではいかないけれど」という枕詞をつけて話すパターン、本当に多いですよね(笑)。
そういう子に対しては、私は「自分の親が毒親か毒親じゃないかなんて、考えなくていい」と言っています。
だって「親がしんどい」と思うようになったのは、親に感情を無視されたり、否定されたり、それまでたくさん悲しい思いをしてきた経験が積み重なったからじゃないですか。自分自身まで、「しんどい」という感情を無視したり、否定したりしないであげてほしい。
しんどいものはしんどいし、親に言われて嫌なものは嫌。そう感じる気持ちが本物で、他人がどうこう判断するものじゃないんですよ。
とにかく、自分の感情を大切にしてほしい。自分の感情を大切にしてほしいんです!! 同じ話を何度もして申し訳ない、JJ(熟女)なので(笑)。
―――たとえば親から「早く結婚しなさい」と言われたとして、「親は私のためを思って言ってくれているんだから、うるさいなんて思ったらいけない」とか、「うざいと思う自分はダメな人間」なんて思う必要はないということですね。
アルテイシアさん:もちろん! 当たり前田のクラッカー!! JJなので古語が飛び出して申し訳ない。
人は自分の生き方を自由に選ぶ権利があります。性別や人種など、ありとあらゆる属性に関係なく持っている、誰にも奪われない権利です。たとえ親であっても、「こう生きろ」と押し付けるのはおかしいこと。
あとは、盆正月には必ず帰省していて、はたから見たら親との関係は良好そうな人だったとしても、実際のところは「実家にいるとイライラする。3日が限界」とか、あるあるだから。世間は「親子の絆」を強調するけど、むしろ血が繋がってるからこそややこしいんですよね。
基本、親子は適度な距離を置いたほうが関係が良くなりやすいです。ここでも、「これ以上距離を置いたら、周りからよく思われないのでは……」なんて考える必要はないです。「自分が置きたい距離」を置けばいい。それが適切。
―――「親孝行」という行為については、どう思われますか?
アルテイシアさん:親孝行すべきとか、親と仲良くするのが正しいとか、そういう価値観で子供を苦しめるのはやめろ!と思いますね。
どんなにひどい親だったとしても、子供は「親を捨てるなんて可哀想、自分は人でなしだ」と、自分を責めてしまうものなんです。だからこそ、私は標語のごとく「敵は己の罪悪感!!」と繰り返しているわけですが。
しかも世の中には、「毒親ポルノ」が溢れてる。「疎遠だった親子が許し合って仲直り系」の、お涙頂戴コンテンツのことですね。そういうのはもう、毒親に悩んでいる人間にとっては有害でしかない。話し合ってわかり合える親なら苦しんでいませんから!!
なので私は毒親フレンズに「テロリストとは交渉しない」と提唱してます(笑)。
許せないものは、無理に許さなくていい。だって、もらってないものは返せないから。この言葉に救われたと言ってくれる読者さんも多いです。
『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』には色々過激なことも書いてますけど、「そんなふうに思っていいんだとホッとした」という感想もよくもらいます。
現実には、こういう思いを抱える毒親育ちもたくさんいますからね。この本を読んで、自分だけじゃないんだ、と思ってもらえたら嬉しいです。
文:All About 編集部