親からの影響はとても大きいものです。「毒親」という言葉が注目を浴び、親が子供に及ぼす影響が大人になっても続くことが認識され始めました。ここでは、そんな親の悪影響や、その克服法について紹介します。
子供に悪影響をおよぼす毒親の行動とは
「児童虐待」という言葉からは、殴る・蹴るなどの暴力という言葉が連想されてしまいます。しかし、暴力だけが虐待ではありません。次にあげる心理的虐待は、とても見過ごされやすい親の行動です。
ドメスティック・バイオレンス(DV)を行う
子供にとって、親がDVをしている様子を目撃することはトラウマに繋がる要素です。安全なはずの家庭が安全ではないと認識されてしまうのです。母親がDVを受ける様子を見ていると、「女性には、そのように接するものだ」という先入観が生まれてしまうこともあります。
子供を支配する
子供であっても自分の意志や自由があります。それを、親の思い通りに育てようとし、規則を守らせようとするのです。そして、自分の思い通りにならないと暴力や激しい言葉で支配しようとします。
子供の人格・価値観を否定する
子供にとって家庭は、無条件に自分を受け入れてくれる場所であるべきです。その家庭において、子供の人格・価値観を否定しようとします。中には、個人的な理由で否定する親もいます。
大人になっても消えない影響
毒親の影響は、大人になっても適切なケアを受けなければ、残ってしまうことが多いものです。次にあげるものは、その一例です。
・異性関係を含めた対人関係で、信頼できない。常に相手の顔色を見てしまう
・よく分からない不安がつきまとう。突然、不安になる
・自分の意見が分からない。自分がないとよく言われる
・自分に自信が持てない。
・感情の起伏が激しい。怒り、不安に振り回される
・支配する、支配される関係でないと人間関係が築けない
このような影響は、頭では分かっていてもなかなか変えられないものばかりです。
親からの影響を克服していくためには
親からの影響を自覚する
自分の親から刷り込まれた価値観にはなかなか気づかないものです。前述の「親の行動」と「影響」に心当たりがないかをよく見て下さい。少しでも、当てはまるように思われた場合は、毒親に該当している可能性があります。
必要であれば、専門的治療をうける
親の影響が強ければ、複雑性PTSDや解離性障害と呼ばれる精神疾患を発症してしまう場合もあります。この場合は、医療機関やカウンセリング・ルームなどで、専門的な治療を受けていく必要があります。治療としては、トラウマになってしまった記憶を過去の出来事にしていくEMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)、自分の感情をコントロールし、人間関係のスキル等を学んでいく弁証法的行動療法などがよいでしょう。
親との決別
最終的には、物理的にも、精神的にも親とは決別をしていく必要があります。そのためには、親と決別できる強さを持っている必要があります。時には、誰かの手を借りる必要があるかもしれません。しかし、親と何らかの形で決別しなければ、この問題は続いてしまいます。
自分の代で連鎖を止める
毒親の元で育った子供は、残念ながら毒親になってしまう可能性を持っています。毒親の両親も毒親の被害者かもしれません。このように毒親は後の世代に伝わっていくものです。しかし、適切な治療を受けることで、この悪循環を断ち切ることができます。
文:矢野 宏之(臨床心理士)