在宅勤務の広がりとともに、夫婦間では家事分担をめぐる問題が浮上している。家事に対する相手の姿勢が見えるだけに「なぜ私だけ……」という怒りもたまりやすい。家事をめぐる夫婦の思いに迫った。
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「コロナ前は夫が在宅仕事で、子どものお迎えや夕飯の支度をしてくれていたのに、私が在宅になるとやらなくなった」
と憤るのは自営業の女性(44)だ。しかも、緊急事態宣言が解除されてからは女性の出勤が通常ペースに戻ってきたにもかかわらず、夕飯づくりはいまだ女性が担い続けているという。
「私が留守だから仕方なくやっていた期間があっただけで、夫には、家事に対する当事者意識が欠けていることが改めてわかった」
コロナ禍で働き方が変わったことで、夫婦間での家事分担や負担感に変化が生じている。緊急事態宣言下では多くの企業が、在宅勤務が可能な職種をテレワークに移行。働く人にとっては通勤の負担が減るメリットはあるが、在宅時間が増えることで家事量が増加しているという人も。これを機会に、夫婦での分担の適正化が図れればいいが、そうとばかりはいかない。
会社員の女性(49)は、フルタイムの共働きながら、結婚して20年以上ほぼすべての家事を担ってきた。そんなものだと思って過ごしてきたが、コロナ禍で改めて不満を抱くようになったという。
「私の働き方は変わらなかったが、夫が在宅勤務に。家にいる時間が長くなると汚れが目につくらしく『洗面台が汚れてるよ』『ホコリがたまっているからそろそろ掃除機かけた方がいいんじゃない?』などと言ってくる。そう思うなら自分でやればいいじゃない!と。腹が立つ」
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日ごろから家事分担ができていても、不満が生じるケースはある。会社役員の女性(46)は、自粛のイライラも手伝って不満を募らせたひとりだ。
「保育園の送迎や洗濯など夫の役割は明確化していて、それ以外が私。休園になって在宅時間が増えると私の仕事ばかりが増えた。夫が留守ならそれほど腹も立たないけど、目の前にいるのに何もしないと頭にくる」
コロナ禍では、イレギュラーな予定の調整や子どもたちの体調管理や予防といった、明確化できない家事・育児も増えた。お互いにコミュニケーションを取らないと、「私ばかり……」という不満がたまる。
夫婦の片方だけが在宅勤務のケースでは特に、「在宅になった私にだけ家事負担がのしかかった」(大学教員、45)など、在宅しているほうに負担が偏るという声も多く聞かれた。
家事シェア専門家の三木智有さんはこう指摘する。
「在宅しているほうが家事をやるべきという呪縛は、テレワークだけでなく、妻だけが育児休業を取得した家庭でもよくみられる現象です。まずは夫婦双方がこの意識を変えていく必要があります」
三木さんはまず、「仕事も家事も完璧に」「相手にも同レベルを要求」という意識を捨てることを提案する。家にいるからこそ、いつもより家事を完璧にしなければと思いがちだが、どこでも仕事をしていることには変わりない。通勤していた時間は家事に充てるなど、メリハリをつけるのが重要だという。三木さんの家庭では、どこで仕事をしていようと平日の9時から18時までは家事はしないし、相手にも期待しないというルールを設けているという。
「仕事が終わらないのに家事をこなした実績を作ってしまうと、パートナーにもできるんだと誤解されて、悪循環に陥ってしまいます」
今回の取材では、コロナ禍での家事分担に不満を抱いたり、分担を見直したいと考えていたりする人が多かったのに、実際に夫婦で話し合ったというケースはほとんどみられなかった。
そこで活用してほしいのが、「コロナ禍テレワーク版共働きの家事育児100タスク表」だ。100のタスクについて夫婦で話し合い、どの割合で分担しているかをシールなどで色分けし、見える化するのだ。タスクは家庭によって書き換えてもOKだ。
三木さんはこう話す。
「在宅時間が長くなるとパートナーが家事をする姿が見えやすい。長い間、役割が固定化されていた夫婦でも、改めて話し合ういいきっかけになるはずです」
(ライター・森田悦子)
※AERA 2020年7月27日号より抜粋
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