【NEWS増田貴久「出会えた運命を感じてる」 にんじんを見て泣きそうになったことも】
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――ソロアクトライブ「中丸君の楽しい時間」は、2008年に初演、17年に第2弾、19年に第3弾を上演し、今回で第4弾となる。前回はコントや自身がレギュラー出演している「シューイチ」を彷彿(ほうふつ)とさせる番組のパロディー、洋画のアテレコ、驚異の速さを誇る「ブラホック外し競技」の実演などで笑わせつつ、プロジェクションマッピングなどを駆使したスタイリッシュなパフォーマンスでも観客を魅了した。今回はどういう企画で楽しませてくれるのか。
■自分が面白いものを
中丸:ひたすら自分が面白いと思うことを自由にやる、というのは今回も同じですね。だいたい、いつも七つくらいコーナーがあるんですが、前回のライブでウケが良かったものを半分残して、半分は変える形でやっています。ただ、今まではコーナーを優先して、全体のストーリーみたいなものは二の次だったんです。でも、全体を通して繋がっているメッセージみたいなものがあると、ライブとしてもっと上質なものになるんじゃないかなと思って、今回はそういう方向も強化しています。ちなみに、取材では“ブラホック”のことばかり聞かれるんですが、冷静に考えたら恥ずかしい競技ですし、親も呼べないので、それに代わるチャレンジ企画を考えています。ただ、あれを超える企画にしようと思うと、また親を呼べなくなりそうですけど(笑)。
■家でも楽しんでほしい
――今までの公演と大きく異なることもある。新型コロナウイルスの感染拡大防止で会場の客席が半分しか使えない。だが一方で、配信も決定した。
中丸:客席が半分に減るということで、限られた予算のなかでいかに面白いものを作るか。配信も意識した演出にしなきゃいけないですし……それを考えるのは大変ではあるんですが、アイデア次第ではチャンスにもできるな、と思っています。せっかくだから、誰もやったことがない新しいテクノロジーを使ったことにも挑戦したい。そういう新しい機材の情報などは、日ごろから世界中のパフォーマーの映像をYouTubeでチェックしたりして、アンテナは張っていますね。もちろん、やりたいものがすべてできるわけではないんですが。
――背中を丸め、ときに「えーと、なんだ……」と言葉を探りつつ、飄々(ひょうひょう)と語る姿に独特の存在感があり、どこか「アイドルらしくない」。そんな彼が作り上げるコントの世界も独特のセンスで構築されている。
中丸:僕、糸井重里さんがシナリオを担当している「MOTHER2」というゲームがめっちゃめっちゃ好きなんですよ。キャラクター設定や、セリフ、音楽、すべてにおいてセンスがすごくて、僕の人格形成に関わるくらい影響を受けているんです。僕が作るコントや、言葉のチョイスにも当然その影響はあると思います。
――KAT−TUNのメンバーも自分からは誘わない。KAT−TUNがホームなら、この舞台はあくまで個人の「ローカルな場」。そんな自由な場だからこそ出せた遊び心が、思いがけず、ホームとつながることもあった。
■オタ芸版をライブで
中丸:KAT−TUNの楽曲をいじるコーナーがあるんですけど、去年「Keep the faith」にオタ芸のコールを入れたオタ芸バージョンを作ったら、ものすごくウケたんですよ。もう、驚くほど笑ってくれて。それを会場で見ていた上田(竜也)くんが、「KAT−TUNのライブでやりたい」と言ってくれたんです。でも、僕はかっこいいKAT−TUNのイメージが崩れることを危惧して、僕の舞台にとどめた方がいいと思った。上田くんは、「それでもやったほうがいい」と強く言ってくれて。そうしたら、亀梨(和也)くんも納得して、去年発売したアルバムに、僕が歌詞をつけたオタ芸の曲も入れることになったんです。KAT−TUNのライブでやったら、またそこでも非常にウケて。加えて、自粛期間中にネット配信したライブでも、その歌を感染予防の替え歌バージョンにして、ファンの皆さんに楽しんでもらいました。一人で勝手に遊んでいたものが、いろいろな形で発展していくのは、不思議というか、面白いもんだなあと思いましたね。
――ライブの準備はコロナ以前から進めてきたことだが、外出自粛期間を経て思うことがある。
中丸:エンターテインメントに関わる者として、何もできなくて無力さも感じました。それで自分にできることを考えて、「ステイホーム4コマ漫画」を描いて、事務所の公式SNSにアップしたりしましたが……。エンタメってなくても生きていけるかもしれないけど、エンタメがないと人生はだいぶつまらない。僕自身がそう実感しました。この舞台も、息抜きの娯楽としてみなさんに楽しんでいただけたらうれしいです。
――公演中はどうリラックスしているのだろうか。
中丸:なんやかんや1日2回公演やったりすると、体力的にしんどくなってきたので、マッサージは必須ですね。最近、ずっと欲しかったものを買ったんです。半年くらいまったく服も買ってなかったので、気分転換の意味も込めて。「シューイチ」でベランピング(ベランダキャンプのこと)のグッズを紹介したんですが、僕もベランピングをやろうと、リクライニングできてゴロンと横になれる椅子を買いました。舞台で疲れたらそこに寝て日光浴してリラックスしたい。まだ届いてないんですが、今から楽しみにしています。
(構成 ライター・大道絵里子)
※AERA 2020年9月27日号