20代から肩こりに悩まされてきたAERA副編集長(45)が、人気「肩こり解消動画」を公開する柔道整復師・迫田和也さんを訪ねた。実際に施術を受けた感想とその効果とは。AERA 2020年9月21日号は「さらば肩こり」特集。
【肩こりは「ファシア」を意識すれば根治できる! 専門医が伝授するセルフチェックと対策法】
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神奈川県藤沢市で「整体院 和」を経営する迫田和也さん(34)。いま大人気の「肩こり解消動画」の一つを配信している人物だ。
それまでの10日間ほど、取材のため数々の動画を見て体を動かしただけに、筆者の肩はここ数年で一番と言えるほどいい状態。だが目の前に立った筆者を一瞥して迫田さんは言った。
「肩甲骨がかなり前に出ていますね。今『調子がいい』と感じていても、そのままではまたすぐに症状が重くなりますよ」
猫背が肩こりの原因になる理由を迫田さんはこう解説する。
「肩甲骨が前に出ることで、僧帽筋(そうぼうきん)、菱形筋(りょうけいきん)など首と肩周りの筋肉が引っ張られます。肩こりで直接的につらいのはその部分ですが、ここをもんでも、引っ張られてピーンと伸びた筋肉をさらに伸ばすだけで逆効果。確かに気持ちはいいですが、次はもっと強い刺激が必要になって、『沼』にはまってしまいます」
では、どうすれば?
「必要なのは肩甲骨を前に引っ張っている方の筋肉を緩めてあげることです。具体的には、胸にある大胸筋、脇腹の後ろ側にある広背筋、そして前腕の屈筋の三つです」
人気の動画は、これら三つの筋肉を自分の手でグッとつかんでほぐすという内容だ。「それでは始めましょう。大胸筋はここです」と筆者の体に触れて直接説明し始めた迫田さんの表情が一変した。
「ここが広背筋……わっ、硬い! 辞書みたいですね」
辞書!? つかまれた痛みが残る場所を自分でもつかもうとしたが、手の力が足りないのか、脂肪が邪魔なのか、つかみきれない。そうか、俺は脇に辞書を入れて生きているのか……。
「直接触れた方がピンポイントで効率はいいのですが、大丈夫ですよ。ストレッチで伸ばしていきましょう」
■虫歯と同様予防が大切
まずは大胸筋だ。壁に向かって立ち、手のひらを上に向けた状態で右腕を真横に伸ばし、小指を壁に付ける。左手を肩の高さで壁に押しつけ、全身を左にひねると胸の筋肉がギューッと引っ張られているのがわかる。10秒。そこから顔を上に向け、また10秒。さらに体を左にねじり、10秒。逆も同様に。
次は前腕の屈筋だ。腕をまっすぐ前に伸ばし、指先が地面を向くようにして壁に右手のひらをつける。そのままぐーっと体を左にひねって10秒。腕の筋肉が伸びているのがわかる。顔を上に向けて10秒。左に向けて10秒、そして逆も。
いよいよ辞書……いや、広背筋。やはり壁に向かい、右手をまっすぐ上げたら、チョップするように小指を壁に押し当てる。おしりを後ろに出すようにして体を前に傾け、10秒。顔を左に向け、さらにおしりを突き出して10秒。今度は顔を右に向け、10秒。逆も。脇腹が伸びていく。
「これまでの悪い蓄積が残っていますので、まずは三つの筋肉をしっかり緩めましょう。その後はパソコンを使ったり文字を書いたりという肩甲骨が前に出るような動きをした後に、必ずストレッチをして筋肉を緩めれば大丈夫。虫歯にならないよう、ものを食べたら歯を磨くのと同じことです」
取材後、ストレッチを1日3回、3日間続け、キャスター・ひじ掛け付きの椅子とパソコンの画面を高くするスタンドを買い、この原稿を書き始めた。もちろん、30分おきに一休みし、紹介したエクササイズをあれこれ試しながら。ほぼ書き終えた深夜2時、肩こりは感じていない。肩こりは根治できる。そう確信できた。(編集部・上栗崇)
※AERA 2020年9月21日号より抜粋
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