ホコリのなかには細菌やカビ、ダニなどの病原菌がいっぱい。飛沫やウイルスも付着する。 家庭内のウイルス対策として、正しい掃除法を身につけたい。 AERA 2020年12月28日-2021年1月4日合併号から。
* * *
■NG1「ホコリがあっても人は死なない」
30年以上にわたり病院の環境衛生にかかわってきた松本忠男さんは、これを真っ向から否定する。
「ホコリは細菌やカビ、ダニなど病原菌の温床であり、飛沫やウイルスも付着します。ホコリや汚れをきちんと除去することは、コロナ禍でとくに重要です」
さらに松本さんは、消毒する前に正しい掃除をすることが、家庭内でのウイルス対策として有効だという。
「ほとんどの場合、ウイルスはホコリや汚れと共に存在する。つまり、その汚れを除去するだけでも、かなりのウイルスを減らすことができるのです。高齢者や免疫力が低下した人、感染の疑いがある人がいる場合を除けば、家庭内の感染対策は正しい掃除でかなりまかなうことができます」
反対に、掃除もせずに除菌シートでごしごし拭いたり、除菌スプレーを吹きかけるだけでは一時的にウイルスの働きを弱めることができたとしても、ウイルスを減らすことにはならないという。
だが、家のなかの隅々まで磨き上げるのは負担が大きい。感染防止を考えたとき、とくに気を付けたい場所として松本さんがあげるのは「ダイニングテーブル・洗面所・トイレ」の3カ所だ。
ダイニングテーブルはホコリや油汚れもたまりやすい上に、家族が集まって話すことも多いため、家庭内で最も飛沫が落ちる場所。
洗面所は水が流れるのでホコリの影響は少ないが、手洗いやうがいの際に飛沫が飛び散る。周囲の床や壁など広範囲に注意が必要だ。
トイレは排泄物による感染リスクはもちろん、便座や便器のふたなど、無意識に触る箇所が多い。換気扇の影響もあり、床や壁にはホコリが多く集まる。それぞれの場所に応じた掃除が必要となる。
■NG2「テーブルはいきなり水拭き」
テーブルはまず何で拭くか。水拭き、除菌シート、アルコール消毒液をシュッシュとやる人もいる。いずれもNGだ。
家のなかのウイルスや病原菌はほとんどの場合、ホコリなどのハウスダストと混ざって存在している。テーブルのホコリはふわっとした取り除きやすい状態だ。しかし、いきなり水拭きをしてしまうと、ホコリや汚れが水の力で雑巾やクロスに張り付き、テーブル全面に「塗り広げて」しまうことになる。
さらにアルコールは消毒剤であると同時に溶剤でもある。油汚れなどが付いている場合、油を溶かし、ウイルスなどと混ざってコーティングしてしまい、アルコールが接触しないウイルスの割合が増え、消毒効果を半減させてしまう。
では、どうするべきか。すべての汚れは「まずは乾拭き」が正解。使うのは繊維が細かく小さな粒子を回収しやすいマイクロファイバークロスがおすすめ。
拭き方にもポイントがある。進行方向を逆方向に戻すなどしてクロスを往復させてしまうと、せっかく先頭部分にたまっていた汚れが残ってしまう。クロスの先頭が変わらないよう、テーブルの端まで来たらUターンして、S字に拭いていく。先頭のホコリや汚れを「運んでいく」イメージだ。床をモップやワイパーで拭く場合も同様だ。
この乾拭きだけでも汚れはかなり落ちるが、最初に水拭きした場合は汚れを増やしてしまう。
もちろん、乾拭きだけでは取れない汚れもある。汚れに応じて洗剤や消毒液を使うことも必要だ。油汚れがある場合は乾拭きをした後に洗剤拭きをする。飛沫が気になる場合は、消毒剤を使って拭く。最後にまた、一方向S字の乾拭きで汚れを「どかす」。つまり最初と最後は必ず乾拭き。これを汚れがとれるまで繰り返す。
「見た目の汚れがとれさえすればいいのであれば、いきなり水拭きでもいいでしょう。でも、それではホコリやウイルスが除去できません」
(編集部・小長光哲郎)
【「夫が捨ててくれない」「妻が勝手に捨てる」 夫婦間の「ものによる代理戦争」平和的な解決法】
※AERA 2020年12月28日-2021年1月4日合併号より抜粋
外部リンク