【キンプリ永瀬廉 「めっちゃ気持ちよかった」自粛生活中に見つけた新たなリラックス法】
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「ハウ・トゥー・サクシード」は『努力しないで出世する方法』という本に出会った主人公が本の教えを実践するうちに、トントン拍子に大企業で出世を果たす軽妙洒脱(けいみょうしゃだつ)なサクセスストーリーだ。増田さんは主人公・フィンチを演じる。海外ミュージカルへの出演は夢の一つだったという。
増田貴久(以下、増田):お話をいただいた時は「ヤッター!」と大声で叫ぶくらいうれしかったです。うれしさ100、楽しさ100、プレッシャー100……でも、やはりうれしい気持ちが強いです。ミュージカルへの思いは、歌やダンスの経験を積んでいく中で自然と高まっていったものです。
34歳にして初体験ということは、経験や勉強を重ねなければできなかったお仕事だと思うんです。国内外のいろいろな舞台を見てきましたが、この作品はダンスも素晴らしいし、展開のテンポもいいし、見たら元気になれる最高の作品。今、出会えたことに運命を感じています。
増田:稽古場で他の役者さんと合わせて、相手の間や声を聞くことによって、一人で台本を読んで考えたのとはまったく違う化学変化が起きる。お芝居はそれが面白いんですよね。僕は基本的に演出家さんの求める通りにやりたいタイプなので、「僕はこう思うんですけど」ということはほとんどないですが、期待値は超えていきたいという目標があるんです。僕というフィルターを通すことで、さらにいいものになったね、と思ってもらいたい。今の増田貴久にどこまでできるのか、そうみなさんが想像したレベルも超えていきたいですね。その目標を達成できたのか、確かめるのは難しいですけれど(笑)。とりあえず「フィンチスマイル」という、僕がニコッて笑うと照明も変わってキラーンみたいになる印象的なシーンがあるので、そこは見せ場にしたい。僕もジャニーズ歴22年、笑顔は得意なので。
増田:普通だったら嫌われそうなところも、フィンチだからうまくいく。僕にも、「この人だから応援したい」と思ってもらえる魅力があるとうれしいです。人が好きなので、人付き合いは得意ですね。たとえば先輩と一緒にご飯を食べているとき、じゃあ次はワインにしようか、となれば「僕もワイン大好きなんですよ!」と目が輝くし、ウイスキーにしようかとなったら「ウイスキー大好きなんですよ!」とナチュラルに言えます。そういう面は、フィンチとよく似てますかね。うそをついてるわけじゃないんですよ。少しだけ大きく言うというか、クイックに相手に合わせられるというか。好きなものが一緒とかそういう小さなことって、大切じゃないですか。人付き合いの中で学ぶことも多いし、人間力も鍛えられると思うので、自分のそういう姿勢は大切にしたいなって。
増田:読んでみたい。あったら買いますね。普通に努力はしますけど、サラリーマンだったら出世はすごく意識しちゃうタイプだと思うので。大卒で入社したとしたら、勤続年数22年は役職もつくころですよね。そんなことを考えることもあります(笑)。まぁ、先輩と後輩に挟まれる中間管理職的なところはあります。ただ、人の活躍を見て焦ることはあまりないですね。もちろん、うらやましいなぁと感じることはありますが、自分は今はその時じゃないんだろうな、と思うので。結局、僕は歌やダンス、お芝居などで表現することが大好きなので、その作品を通して誰かを元気にできたり、ファンになってもらえたりすることが一番うれしい。それは全力でやり続けますし、少しずつでもレベルアップしていけたらいいなと思っています。
増田:自分たちが作ってきた音楽や作品、ファンの方や支えてくれるスタッフさんとの関係性には自信があるし、大切に思う気持ちは何も変わらずそのままです。僕が担うことも、以前からやっているライブの演出、衣装を考えたりする部分は変わらないと思います。でも、もっともっと知識は欲しい。コンサートの演出に使う最新の機構や照明については小さいことでも全部知りたいし、常にセンスを磨いていきたい。また、グループとして一つ上の階段にのぼれる年齢になってきていると思うので、逆に今までできなかったことにも挑戦していきたいと思っています。それも一歩ずつ、ですけど。
増田:仕事ができること。外出自粛期間中、自分一人ではなにもできないということを改めて感じました。スーパーに行って、この野菜を作ってくれる人がいるから食べられるんだと思うと、にんじんを見て泣きそうになったりもしました。だからいま、キャスト、スタッフ一丸となって作り上げていく舞台に向き合えるのが本当にうれしい。気分が沈んでいる人も多いと思いますが、「ここ何年かで一番楽しい1日だった」という時間を提供できるように準備しているので、楽しみに来てください。
(構成/ライター・大道絵里子)
※AERA 2020年9月7日号