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――みなさんの得意分野と、クイズに強くなるために今までどんな勉強や特訓をしてきたかを教えてください。
こうちゃん(以下、こう) ぼくは早押しボタンを押す競技クイズを始めたのは大学生からで、それまではやったことがなかったんですね。自分の知識も高校までに習ってきたことがベースになっていて、そのなかでも特に歴史が得意でした。そもそもなぜ歴史が好きで得意なのかというと、日本史も世界史も高校生レベルのことだったら、体系的に網羅して完全に理解できていたからだと思うんです。だから、どんな切り口でクイズを出されても、答えられるんですよね。たとえば年号を聞かれても、人物の功績を聞かれても答えられる。つまり深く理解することで、どんな問題にも対応できるようになる。
ふくらP(以下、ふくら) 年号で聞かれても功績で聞かれても答えられるようになるには、どんな勉強をすればいいの?
こう 高校生では試験のときに、相手が何を問うてくるのかというのを何パターンも想像して勉強をしていましたね。もしかしたらここの年号を聞かれるかもしれない、もしかしたらここの理由を聞いてくるかもしれないっていうのを無限に繰り返すうちに、覚えられたんだと思う。
ふくら 教科書に載ってることは全部、あれもこれも出るなっていうのを想定してやってたんだ。
こう そう。頭のなかではすべてストーリーになってるんですね。もちろん、大学でクイズを始めてから覚えた人物もいるけど、そういう新たな知識も全部ストーリーに組み込まれていく。たとえば世界史で、アウグストゥスの部下だったアグリッパという人物を新たに知ったとき、ぼくのなかではアウグストゥスの活躍の中にアグリッパが組み込まれる。
伊沢拓司(以下、伊沢) アウグストゥスとアグリッパ。覚えておきましょう(笑い)。
こう だから新しく覚えるときも、深く理解しているとすぐに対応できる。知識を覚えるうえで考え方のベースがあるのはすごく大事だと思っています。あとは、問題を問うてくる側の思考を何パターンも考えて自分で訓練、対策をすることかなと。
伊沢 さすが、歴史のゴッド。
ふくら ぼくはひらめき系と、計算問題はほかの人より得意かなと思います。何で得意かというと、クイズを始めたのは大学に入ってからだけど、クイズのために勉強をするというよりは、もともと算数の本がすごく好きだったんです。おもしろ算数トリックの本とか、ひらめき問題とか、「IQサプリ」を見たりとか。ほかの人よりたくさん問題を解いてる。それは好きだからこそできたことだと思ってます。
伊沢 量をこなすきっかけは、やっぱり好きだったから?
ふくら そうだね。だから結局、これを得意になろうと思ってやったというよりは、好きなものにいっぱい触れ合っていたという感じ。強くなろうと思って強くなったわけじゃなくて、「あ、これおもしろい。ほかにもこんなクイズないかな」っていうのを、どんどん本屋さんに行って探して。そこでわからない問題に出合うと解説を読んで、絶対に理解しようって。で、ぼくは同じ本を何度も読むんです。人間って忘れるから、また正解できない問題があって、「あーそうか、こうやって解くんだった」というのを繰り返す。最終的に全問正解できるようになると、次の本にいく。
伊沢 すごいね、そこまでやるって。何回も読んでるのがすごい。
こう オレも『読むだけですっきりわかる日本史』っていう本は15回くらい読んだな。
山本祥彰(以下、山本) それと数学はちょっと違くない?
ふくら こうちゃんは歴史の事柄を何千個、何万個と覚えてると思うけど、数学の計算問題のバリエーションとか公式の数って、実はめっちゃ少ないんだよね。あとはそれをどう応用していくか、使い方の部分だけだからね。100問載っている本を完璧に覚えたら、かなりのパターンが網羅できる感じ。
山本 いろんな言葉が出てきて、「あ、これ覚えてなかった」っていうのはわかるけど、「解き方を覚えてなかった」っていうのはあまりないな。
こう 数学の本って、あんまり何回も読むものじゃないよね。
一同 (笑い)
山本 算数パズルの本とか見たことはあるけど、何回も読むものじゃない(笑い)
ふくら 何回も読むよ! 結局、ぼくは正解が好きで、9割正解できる本でも全然楽しく読めちゃう。問題にドヤ顔で心の中で答えて、「あーやっぱり正解した!」っていうのが楽しい。
伊沢 オレ、完全に逆。正解できないことが好きなの。それは単純に、正解できないことの先に正解している自分がいるからで、知らないことを知るのがめっちゃ好きだから。一番好きなのは音楽だけど、音楽も基本的には知らない曲ばっかり聞くわけ。で、探ってみて「なるほどね」というのがおもしろい。最近は「オールマイティーのゴッド」とか「ノンジャンル」とかいわれて、ほかの人の得意分野で戦わされたりすることが多いから、知らないことに出合いまくってて、全部吸収することができるのがおもしろいなと。でも、知らないことを知ることって、最初の一歩がだるいのよ。この仕事をこれだけやってても、いまだに最初に参考書を開くのとかはだるい。でも、その一歩目を超えたら、おもしろい世界が広がってるんだよね。そうやって何度もジャンプを繰り返すことによって自分の体に覚え込ませて、知らないことに飛び込めるような感覚がある。
こう すげぇな。
伊沢 今、動画で水彩画を描いてるけど、水彩画入門の本をばーっと買って、読み直すのとかはめっちゃおもしろい。そんなの普通だったらやらないもん。
ふくら 自分では水彩画をやらなくても、水彩画にハマっている人が世の中にはいるんだから、絶対に魅力ってあるわけだからね。
伊沢 そう。社会人になって、本を買ったり知らないことを知ることにお金を使えるようになったのは本当にいいことだなと。
――知らないことに飛び込むことが、知識を広げたり、クイズに強くなったりすることにつながるんですね。
伊沢 小中高生って、その一歩目を超えるハードルが低い。特に好きなものに関してはね。オレ、昔「ボーボボ」(澤井啓夫によるギャグマンガ)のまとめノートをつくってたの。第32話はこんなことがあったとか、亀ラップの歌詞を書き写したりして、親にめちゃくちゃ怒られた。「もっとほかにやることがあるでしょう」って。
一同 (笑い)
伊沢 でも、子どもってそういう作業を「めんどくさいな」とは思わないんですよ。だから若いうちにそういうことをいっぱいやって、一歩目のハードルが低い状態で大人になれたらすごいお得だと思います。
山本 ぼくも知らないことに出合うのが好きで、知っていることが書いてある本はあまり読まないかな。クイズの得意ジャンルは漢字と日本語ですけど、特に漢字は小さいころから好きで親しんでやってきました。その延長線上でいろんなものが得意になっているなという感覚があります。ぼくは外国人の名前より日本人の名前のほうが早く覚えられるんですけど、それは全部漢字で書いてあるからイメージで覚えられるんですよ。たとえば、「かだのあずままろ」っていう人を―
こう 荷田春満ね。オレはわかる、日本史だね。
山本 初めて見たときに、荷物の荷に田んぼの田、春が満ちるっていうイメージもセットで覚えられるんですよね。漢字の話でいうと、最近、漢字検定1級の勉強をしていて、また漢字にハマっていますね。まだ全然知らない漢字やことわざがいーっぱいあって。
伊沢 今の漢検1級とか、本当にヤバい次元にいってるからな。1級って毎回新作の問題が出るから、参考書に載っていない問題とかが出るんですよ。だから本当に漢字が好きで、中国の古典の勉強とかしていないと満点は取れない。
山本 漢検も昔よりかなり難しくなっていて、公式の問題集を1冊全部覚えても、まず合格できないんだよね。
一同 ええーっ!?
ふくら 漢検もインフレしてるんだな。
こう ぼくの知り合いで1級を持ってる人がいるけど、今の1級は絶対に受からないって言ってたよ。
伊沢 インテリタレントさんで「漢検1級を目指します」っていう人がいっぱいいるけど、「大変だ……!」って思いますね。漢検1級に合格するためだけのサークルとかありますからね。クイズを極めるほうがよっぽど簡単。
山本 でも、やっぱり好きなことから派生して、いろんなことにつながっていく感じはしますね。
ふくら 特に国語と算数はベースになっていて、国語をやったら日本史を覚えやすいし、算数をやったら理科も覚えやすいっていうのはあるね。
(構成 ジュニアエラ編集部・吉田美穂)
【大人気集団QuizKnockメンバーが答えた 「かつて好きだったクイズ番組は?」】
※『クイズで88本ノック 最強クイズ集団からの“謎解き”挑戦状』より