新型コロナのワクチンを接種すると、当面の間献血ができなくなってしまう。基準はまだ示されていない。接種後の献血制限期間はどれくらいになるのか? AERA 2021年4月12日号から。
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医療従事者を対象とした新型コロナウイルスのワクチン接種が始まって約1カ月経った3月下旬。ある医師がツイッターでこうつぶやき、話題になった。
「献血してます。新型コロナワクチンを打つとしばらく献血できないから」
■インフルは制限24時間
ツイートしたのは「産婦人科医」のアカウント名で発信している産婦人科専門医の太田寛さん(56)だ。出産では出血は珍しいことではなく、輸血用血液が十分にあることが大切だと現場で実感していて、日頃から時間をつくって献血に行くという。今回は特に、ワクチン接種前にこだわった。
「血液は人工的につくることができないので、献血量が足りなくなると助かるはずの人が助けられなくなることもあります。コロナワクチンを打つとしばらく献血できなくなるので、接種前に行っておこうと思いました」
血液事業を行う日本赤十字社は2月下旬、新型コロナのワクチンを接種した人の献血の受け入れ基準について、「国において検討中の段階であることから、基準が示されるまでの間、献血はご遠慮いただく」と発表した。
実は、新型コロナに限らず、ワクチンを接種した後は一定期間献血ができない。インフルエンザなどの不活化ワクチンは接種後24時間、風疹やおたふくかぜなど弱毒生ワクチンは4週間、破傷風などの抗血清は3カ月といった基準が設けられている。今回はどうなるのか。
新型コロナのワクチンはこれまで使われてきたワクチンとは異なる過程で作られていて、不明な点も多く、献血制限期間も国によってまちまち。「制限期間なし」もあれば、ワクチンの種類や副反応の有無によって期間を変えている国もある。
国内での制限期間については、厚生労働科学研究班が2月に薬事・食品衛生審議会血液事業部会で「すべての種類の新型コロナワクチンで接種後4週間」という見解を示した。ワクチンの種類によっては、多くの国で長めの4週間ほどの制限期間を設けているものもあり、献血者が接種されたワクチンの種類を正しく認識していない恐れもあることから、全てのワクチンで一律の制限期間とされた。
■4~5月頃基準を示す
厚生労働省血液対策課の担当者によると、この見解をもとに再度検討し、4~5月頃には基準を示す予定だという。
2回接種するため、接種スケジュールによっては、制限期間が実質7~8週続くこともある。
ワクチンの接種者の献血制限期間について審議する中で、有識者からは、「かなり大規模な集団接種になる可能性があり、血液製剤の供給に影響を及ぼす可能性は大いにあるのではないかと危惧する」という意見も出た。インフルエンザのように毎年接種が必要となれば、接種時期によっては献血者不足をきたす恐れがあるとの指摘もあった。
日赤のデータによると輸血を受ける人の85%は50歳以上。少子高齢化が進む中、将来の献血を支える若い世代の献血協力が必須だが、10~30代の献血者数は2010年の約275万人から19年には約180万人と、この10年で3分の2以下に激減。このままでは今後、血液の安定供給に支障をきたす恐れもある。
冒頭で紹介した太田さんは、これまで「妊婦の夫は献血を」と呼び掛けてきたという。
「妊娠中の妻に夫ができることは少ないけど、献血は必ず誰かの役に立つことができる。これから一般の方にも新型コロナのワクチン接種が始まるので、今度は『ワクチン接種前に献血を』という意識が広まるといい」
普段献血に行かない人や献血デビューしていない人も献血を意識するチャンスになるかもしれない。ただ、血液は長期保存できず、献血者が殺到するのも安定供給に支障が出る。混雑と集中を避けるためにも事前予約を。(編集部・深澤友紀)
※AERA 2021年4月12日号
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