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学校、仕事、結婚相手も「毒親」が望む選択 「何一つ、自分で選んでいない」男性の末路

2020年10月16日 19:00 AERA

 80代の親がひきこもる50代の子どもを支える「8050問題」。その背景には、「毒親」との関係が潜んでいることがある。 特にいままであまり語られてこなかった「母‐息子」問題。AERA 2020年10月19日号で、ノンフィクション作家・黒川祥子氏が「昭和的価値観」を押し付けた子育ての先にあるものに迫る。

【コロナで深刻化する「8050問題」 生活困窮の相談40倍…親も失職「もう支えられません」】

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「『何だろう、この息苦しさは……』って、昔からずっと思っていました」

 都内の男性(49)は大企業の正社員として妻子を養い、自宅も建て、一見、綻びのない人生だ。

 父は工業高校卒の工場勤務、母はトップ高から大企業に就職という、母が父より強い立場の家庭で育った。

 夫婦仲が暗転したのは6歳の時、きっかけは父の借金問題だ。

「母親からは『お父さんはろくでもない人間だ。おまえはああいう男になってはいけない』と散々言われて育ちました」

 父親の被害者である“かわいそうな母親”を、自分が支える構図ができあがった。母親は、呪文のようにこう語った。

「子をみりゃ、親がわかるって言うからね。おまえがろくでもない子に育ったら、おまえを殺して、私も死ぬからね」

 子育ての理想は、母自身の中学教師だ。初回の授業で騒いだ生徒を鉄拳制裁、全員を震え上がらせ、従順な生徒に仕立てた“手腕”を、母は賞賛した。

「小さい頃は暴力で、彼女に逆らってはいけないと身体で覚えさせられた。母親の意図を汲み取って行動しないと手が出る。殴られるのは本当に嫌だった。両手両足を縛られ、押し入れに閉じ込められたこともあった」

 10歳になった頃、暴力はなくなったが、母親の“目”をうかがって行動するのが常だった。

「今にして思うのは、母親は私の中に見えない壁を構築して、外に出ない人間にするように育てたんです。正直、母親のキッとなる目がすごく怖かった。だから、そうならないようにと先回りして行動していました」

 高校や大学の選択も、母親がどう思うかを優先した。ITエンジニアという今の仕事も、好きで選んだわけではない。

「何一つ、自分で選んでいないんです。壁などないのに、母親がいいだろうと思う方向をどうしても選ばざるを得ない。結婚相手も、『母親はこういうタイプが好きだよな』と決めました」

■感情でつながれない


 表面上、母親は「自由にしていい」と言うが、実際は母親の意向を加味するよう、内面がコントロールされていた。まるで孫悟空の輪。幼い頃に植えつけられた恐怖による呪縛だった。さらに「父親のようになってはいけない」という使命もあった。

「父親の汚名返上という思いは常にあったけど、どうすればいいのか。仕事ができるようになれば、やっと私は解放されると思っていたけど、終わりが見えない。何を目指して生きているのか、わからなくなって……」

 40代半ばでうつ病を発症し休職、半年ほどで復職した直後、妻は離婚届を残して家を出た。

「妻は私と気持ちが通じ合えないと、心の病気になったことがありました。でもまさか、離婚になるとは。私は父と違って、仕事をして稼いでいるし、家も買ったし、借金もしていない。それでいいと思っていたんです」

 妻は長年、夫との関係で悩み、そして踏ん切りをつけたのだ。

「仕事のように理屈でできるのは得意なのですが、感情的なところで、人とつながるというのがわからない。2人の息子とも同じです。感情でつながれない」

 男性は、母親が幼い孫たちに豪語した言葉を思い出す。

「あの子は、私の思い通りに育ったのよ!」

 母親の意図通りに作られた息子は、他者と感情的なつながりが持てない不自由さに喘いでいる。長年の息苦しさの根幹には、母親という存在があった。(ノンフィクション作家・黒川祥子)

※AERA 2020年10月19日号より抜粋

【非正規雇用者がコロナ禍で「116万人減」…失業者は一体どこに消えた?】

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【沖昌之】仲良し茶トラのトランとユリア 親しき仲にも礼儀あり?

2020年10月16日 19:00 AERA

 主に外猫を撮影し、猫の自然な姿をとらえた写真が人気の猫写真家・沖昌之さん。「今週の猫しゃあしゃあ」では、そんな沖さんが出会った猫たちを紹介します。今回は「ちょ、ちょっと……デリカシーって、知らないの!?」をお届けします。

【野球場でドヤ顔の黒猫 ここは俺様のテリトリーだニャ】

 早朝に雨が降っていた日。仲良しの茶トラのトランとキジトラのユリアが寄り添っていました。最初は、寄り添っている2匹を撮っていたんだけど、ブルンブルンしそうだな、と思っていたら、案の定でした。この写真、水しぶきが四方八方に飛んでいるし、トランは嫌そうに片目つぶっているし(笑)。ユリア、トランのこと大好きなのに、ツメが甘いなあと思った一枚でした。


<沖昌之>
猫写真家。主に外猫を撮影し、猫の自然な姿をとらえた写真が人気。写真集に『必死すぎるネコ』『明日はきっとうまくいく』など。インスタは@okirakuoki

※AERA 2020年10月19日号

【階段を転げ落ちる猫 ハチワレさんは七転び八起き!】

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亡くなった子を激痛に耐えて出産…“レインボーベビー”授かっても癒えない母親の傷

2020年10月16日 19:00 AERA

 死産や流産、新生児死などで赤ちゃんが亡くなった後に授かった赤ちゃんを指す「レインボーベビー」いう言葉。海外で生まれた造語ながら、近年日本でもブログやSNSなどで使われるようになった。希望の象徴のような言葉だが、無事に赤ちゃんを授かったとしても、決して以前の傷が癒えるわけではないという。AERA 2020年10月19日号では、葛藤を抱える母親たちを取材した。

【マスクつけたまま分娩室へ、夫は汗だくで15分だけ面会…コロナ禍での出産を記者が語る】

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 赤ちゃんを亡くした家族の心の支援を啓発する当事者グループ「Angie」のメンバーの平尾奈央さん(38)は12年前に死産し、翌年息子を出産した。

「悲しみと向き合わないままに次の出産を迎え、その後も育児に追われて娘の死と向き合えず、10年近く苦しみました」

 妊娠8カ月のとき、胎動が弱いと感じ、産婦人科を緊急受診したが、診察した医師に「寝ているだけ」と言われた。1週間後の健診で心臓が止まっていた。

 亡くなった子も陣痛を起こして自然分娩で産むと聞かされ、驚いた。まだ子宮口も開いておらず、棒状の器具を使って子宮口を広げる処置はかなりの痛みを伴うものだった。痛みに悶えながら、「産声も聞けないのに、なんでこんなにつらい思いをしないといけないの」と涙がこぼれた。その後半年間の記憶は今もほとんどない。

 2度目の妊娠、出産では、前回のつらい記憶が次々によみがえった。病院が開催した両親学級では死産の際に入院していた病室を見せられ、当時の記憶がフラッシュバックした。産後は亡くなった娘を助けてあげられなかった罪悪感が消えなかった。

 夫は長期出張も多く、24時間赤ちゃんと二人きりの生活で次第に追い込まれた。泣きやまない息子に向かってタオルケットを投げてしまったこともあった。すぐに我に返ったが、「待ち望んでいた赤ちゃんなのに命を大切に扱えないなんて」と自分が嫌になり、「こんなママでごめんね」と泣きながら謝った。

 死産や流産の当事者による「お話会」と呼ばれる集まりを探したが、多くは子ども連れの参加を認めておらず、気持ちを吐き出せる場所もなかった。

■つらさを口にできない


 この2、3年で死産や流産の経験をSNSやブログなどで発信する人が増えたが、レインボーベビーを授かったことやその後の苦しみは吐露しにくい。

 妊娠7カ月で息子を死産した経験を「チーちゃんママ」としてブログで発信する谷原嘉代さん(45)は、死産から約2年後に次の子を出産した。

「ちゃんと生まれたのだから弱音を吐いちゃいけない、つらいなんて言ってはいけないと思い、どこにも気持ちを吐き出せなかった。今振り返ると産後うつになっていたと思います」

 子どもに笑顔で接したいのに、笑えなくなった。離乳食や食事を作らなきゃと思っても起き上がれず、腐った野菜を見て自分に嫌気がさし、自己肯定感がどんどん下がっていった。

 谷原さんは、500人を超える死産や流産経験者の相談を受けてきた経験から、こう話す。

「悲しみからの回復には、気持ちを吐き出して、それを自分で受容していくことが大切ですが、レインボーベビーを授かるとそれが難しくなることがあります」

 谷原さんは友人が話を聞いてくれてずいぶん助けられたというが、次の子が生まれると、周囲から「もう大丈夫だ」と思われ、現在のつらさや過去の悲しさを口にする機会が失われてしまうケースが多いという。

「複雑な感情になるのは正常なことだし、次の子が生まれたとしても、亡くなった子を忘れることはありません。周囲の方々にも、感情を吐き出す手助けをしてもらえたら」(谷原さん)

 亡くなった赤ちゃんは限られた時間でも家族に幸せをもたらしてくれた尊い存在だ。だが、一般には赤ちゃんの死はタブー視され、話すと気まずい雰囲気になってしまい、話しにくい現状がある。だが、亡くなった赤ちゃんを一人の人として認めてもらえることで、当事者は戸籍にも残っていない命が確かに存在していたのだと実感でき、癒やされていく。

■もっと話しやすい社会


 前出の平尾さんは先日、小学5年生の息子から、同級生に亡くなった姉の名を教えたと報告を受けた。紙に「莉子(りこ)」と書くと、「かわいい名前だね」と言ってもらえたと聞き、救われる思いだった。

「もっとお空にいる子のことを話しやすい社会になったらいいのに、と感じます」(平尾さん)

 毎年10月9日からの1週間は赤ちゃんを亡くした家族のための国際的な啓発週間「Baby Loss Awareness Week」。最終日の15日の夜7時から8時はキャンドルを灯して亡くなった赤ちゃんとそのご家族を思う「Wave of Light」が行われる。海外では当事者ばかりでなく、子どもを亡くした知人にキャンドルの写真を送る動きも広がっていて、当事者の孤独感を和らげている。(編集部・深澤友紀)

※AERA 2020年10月19日号より抜粋

【相次ぐ芸能界の自死に思うこと コロナが奪った「ふとした『偶然』の出会い」の大切さ】

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コンビニでバイトしながら「村上春樹っぽい小説」を書いた日々 夏葉社代表・島田潤一郎<現代の肖像>

2020年10月16日 19:00 AERA

「ジャケ買い」という言葉があったが、夏葉社は、その名前で買われるという稀有な出版社だ。立ち上げたのは島田潤一郎さん。島田さんがいいと思う本だけを出版する。ある書店主は「夏葉社の本を置くこと自体が、書店の価値を上げる」と言った。その本づくりの核には、亡き人への思いと自分を救ってくれた「本」というものへの敬意がある。

【「8割おじさん」のはち切れそうなシャツから妻が感じたサイン】


 6月半ば、コロナ禍で観光客が消えた京都はずいぶんと歩きやすかった。ひとり出版社、夏葉社の代表、島田潤一郎(44)にとって、ここは勝手知ったる街だ。2009年の創業以来、年に3、4回は訪れる。昼はコンビニのパンを頬張りながら、ひたすら歩いて書店を回る。今回リュックには、できたばかりの『ブックオフ大学ぶらぶら学部』と『本屋さんしか行きたいとこがない』の見本を入れてきた。どちらも昨年、島田が立ち上げ企画・編集を手がける新レーベル「岬書店」から出したものだ。

「新しい店の開拓はしていません。信頼関係がある本屋さんと、ちゃんとつきあうことを大事にしているので。特に京都は個人で経営している小さな店が多いので、お互いに支え合っている感覚があります」

 お坊さんのような風貌。とても優しい声で話す。

 島田は33歳の時、東京・吉祥寺で全くの未経験から出版社を立ち上げた。以来、編集も営業も経理も発送も全部ひとりで担っている。文芸書を中心に年3、4冊を発行し、初版2500部を細く長く売るのが基本。派手な宣伝は一切しないが、着実に版を重ねるものが少なくない。

「最近は、夏葉社の本なら内容がなんであれ全部買う、という人も多いです。一冊買って気に入って、さかのぼって全部揃えたい、とかね。それだけ読む人を熱狂させる何かがある」

 そう話すのは銀閣寺近くの「古書善行堂」店主、山本善行(64)。本好きの間で「古書ソムリエ」としても知られる人物だ。著者名で買う客は多いが、出版社名で、というのは山本の長い経験の中でもそうそうないという。

 山本は10年前、島田が初めて店を訪ねてきた日のことを鮮明に覚えている。

「『前日に定休日だと知らずに来てしまったので、出直しました』と。東京からそんなにまでして来てくれたというのも驚きだったし、『初めて作りました』と出してきたのが『レンブラントの帽子』の復刊ですからね。感激しましたよ」

 バーナード・マラマッドによる『レンブラントの帽子』はアメリカ文学史上に残る傑作と言われる。日本では1975年に集英社から刊行されたが絶版となり、古本市場では、山本が客に薦めるのを憚るほど高値がついていた。それを目の前に現れた青年は、経験もツテもなしに復刊し、しかも、面識のない和田誠に思いを綴った手紙を書き、装丁を引き受けてもらったと言う。経営が苦しければコンビニで働いてでも、なんとかして読者に届けたい──。訥々と志を語る島田に、山本は「今どきこんな人がいるのか」と胸を打たれた。

 島田にとって、コンビニというのは例えでもなんでもなく、20代はそうしたアルバイトばかりをこなしてきた。1976年高知県生まれ。ロスジェネと呼ばれる世代のど真ん中だ。大学で文学に目覚め、学内の小説コンクールで一等賞を取ったのを機に純文学の作家を目指した。作家への近道は新聞記者だと考え、就活では地方新聞社を複数受けたが全敗。有効求人倍率が底に張り付き、「即戦力」や「コミュ力」が求められだした頃だ。

 就職を諦め、実家を出る決心をした。この時、島田から渡された一枚の紙を、母の佐津恵(69)はいまも大事に持っている。

「潤が小学生の頃、夫が出て行って、それからはずっと2人で暮らしていました。だから潤に一人暮らしを始めたいと言われた時、ちょっと複雑な思いがあったんです。そしたら、しばらくして『お母さん、これが僕の気持ちだよ』って」

 その少し黄ばんだA4の紙には、谷川俊太郎の「さようなら」という詩が印刷されていた。

「ぼくもういかなきゃなんない/すぐいかなきゃなんない/(中略)よるになったらほしをみる/ひるはいろんなひととはなしをする/そしてきっといちばんすきなものをみつける/みつけたらたいせつにしてしぬまでいきる/だからとおくにいてもさびしくないよ/ぼくもういかなきゃなんない」

 ぼろアパートで日中は「村上春樹っぽい小説」を書き、尊敬する作家たちの本を読み、夜はコンビニや中古CD店で働いた。翌年も新聞社の試験には受からず、結局27歳まで同じ生活を続けた。

「焦りや、やましい気持ち? それは全くなかったです。夜勤からアパートに戻って、眠い目をこすりながら『罪と罰』なんかを必死に読んでいましたから。怠けているどころか、周りの社会人よりよっぽど頑張ってる、くらいに思っていました」

 5年経っても芽は出ず、3度目の就職活動を始めた。だが一旦レールをはずれた人間に、社会は冷たい。唯一、雇ってくれたのは自費出版の会社だった。顧客対応や営業を担当したが、全員が深夜0時まで働いているような会社で、3年が限界だった。転職先の教科書販売会社では、営業成績は良かったが、本を読むため毎日さっさと帰り、飲み会にも一切出ない島田を、上司はよく思わなかった。1年で辞めた。次の転職先を探し始めた2008年4月のある日、母から電話が入る。

「ケンがもうダメだって」 

「ケン」とは高知にいた島田と半年違いの従兄だ。幼い頃、夏休みはずっと一緒で、高校卒業時には海外旅行にも行った。その従兄が電話から数時間後に息を引き取った。あまりに突然の死。従兄のいなくなったこの世界を、生きていかねばならない。そのことが、恐ろしくてたまらなかった。

 高知での葬儀を終え、東京に戻った。呆然と毎日転職サイトを眺めながら、手当たり次第に応募した。だが来る日も来る日も、届くのは不採用を告げるメールばかり。8カ月でその数は50社に達した。自分は世の中の誰からも必要とされていない──。ある日、実家の団地の8階で昼寝から覚めた時、体がベランダ側に引き寄せられていった。

「部屋がグワーッと斜めに傾くような感じで、自分の意思と関係なく体が動いて──。ハッと我に返って柱につかまりました。昔はベランダでタバコを吸ってたのに、あれ以来、近寄ることができないんですよ」

 人生は一度きり。雇われるのではなく、自分で仕事を作って生きてみようと決めた。とにかく誰かに必要とされたかった。その頃、繰り返し読んでいる詩があった。作者は100年前に生きたイギリスの神学者、ヘンリー・スコット・ホランド。死者が、残された人に語りかけてくる内容だ。その一編の詩を本にして、悲しみに暮れる叔父と叔母を励まそうと考えた。それが夏葉社の始まりだ。社名は従兄と遊んだ夏の光景から取った。

(文・石臥薫子)                                                 

※AERA 2020年10月19日号より抜粋

【コロナで深刻化する「8050問題」 生活困窮の相談40倍…親も失職「もう支えられません」】

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コロナで深刻化する「8050問題」 生活困窮の相談40倍…親も失職「もう支えられません」

2020年10月14日 18:30 AERA/写真・gettyimages

 ひきこもる中高年が50代を迎え、支える親も高齢化し80代。「8050問題」だ。近年の社会問題として論じられてきたテーマが、コロナ禍でさらに深刻化している。AERA 2020年10月19日号は「コロナ禍の8050問題」を特集。

【非正規雇用者がコロナ禍で「116万人減」…失業者は一体どこに消えた?】

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「もうすぐ50歳。親にもしものことがあれば、経済的に行き詰まる。早いうちに何とか社会復帰したい。焦りはあります」

 奈良県に住む男性(45)は、約20年、ひきこもりの生活を続けている。70代の両親と実家で3人暮らしだ。

 中学時代に受けたいじめを引きずり、人間関係をうまく築けなくなった。入学した大学も4年生まで講義には出ることなく、中退。当時は就職氷河期で仕事も見つからなかった。就職は一度もしたことがない。

「親は毎日のように『早く働け』と。険悪な関係でしたが、ここ10年ほどはあきらめもあるのか、言わなくなりました」

■母も娘も職を失った


 自治体が行う就職氷河期世代向けの公務員試験を受け続けてはいるが、倍率も高く、採用までは届かない。

「コロナ禍で一般企業への就職も狭き門になる中、この採用試験のライバルは増えるでしょう。その心配もありますね」

 8050問題──。ひきこもり状態が長引き50代を迎える中高年の子に、その子を支えてきた親も80代を迎え、それら家族を取り巻くさまざまな困難や、社会に支援体制が不十分なことで起こる問題などを言う。40代の子と70代の親で「7040問題」と言われることもある。


 内閣府は昨年3月、40~64歳の中高年のひきこもりは全国で61.3万人いるという推計値を発表した。その問題に、コロナ禍がさまざまな影響を与えている。

 まずは経済不況で、当事者にとって「仕事を得ること」がさらに難しくなっていることだ。
「私は8050の予備軍だと思っています」

 こう話す東京都の男性(36)は、就職の経験は複数回あるものの、そのたびにうつ状態になり、ひきこもりを繰り返してきた。再度の就職を望んでいるが、もはや高いハードルだ。

「『コロナ禍で求人減』『失業率が悪化』などの情報が入ってくることが、さらに就職への精神的なハードルを上げています。今後の人生を切り開く自信を失っている状態です」

 職を失った人もいる。神奈川県に住む女性(62)は、33歳の娘が中学時代の不登校がきっかけで、現在までひきこもり状態だ。娘は今年初めにパチンコ店での仕事を得たが、1カ月ほどで店がコロナ休業となり、失職。さらに、女性自身も緊急事態宣言の翌日、10年間続けてきたソフトウェア関係の職を失った。「コロナ禍の業績不振」を理由とした解雇だった。

「もう支えられません。20年後、『未来の8050』が心配です。私は年金で暮らせますが、娘はそれも心もとない」

 厚生労働省によると、コロナ禍での解雇や雇い止めは10月6日時点で約6万3千人。毎月1万人のペースで増え続けている。

「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」広報担当理事でジャーナリストの池上正樹さん(58)は、こう警鐘を鳴らす。

「リーマン・ショックのときをはるかに超える規模で『新たなひきこもり層』が顕在化してくる可能性があります」

■外とつながる機会喪失


 そんな不安の中、KHJには非正規で働く子どもを案じたり、不登校になった子どもを心配したりする20~40代の親が、「将来、8050にならないでしょうか」と先々まで心配して相談に来るケースもあるという。

 もう一つのコロナ禍による影響が、家族会などの「居場所」の喪失だ。徐々に再開するところも出てきているが、公的な施設が会場として使われることが多いため使用制限があり、外とつながる貴重な機会が途絶えることになった。

「たとえば図書館など、息抜きとして出かけていた先も閉じてしまった。ますます家にとどまらざるを得ない」(池上さん)

 出かけられないのは家族も同様だ。家の中でお互いに「逃げ場」がなくなってしまい、緊張関係が高まり、中には家庭内暴力などのトラブルになるケースもあるという。

 解決策の一つが、オンラインによる開催だ。9月、東京都内で12人ほどが参加して開かれた家族会。当事者の視点から不登校・ひきこもりなどの本人とその家族に支援を行ってきた「生きづらさインクルーシブデザイン工房」代表理事の大橋史信さん(40)はその席で、「いまはオンラインの家族会をやってみるチャンス。ぜひやってみて」と訴えた。
「『今度Zoomの会があるからやり方教えて』と、ひきこもっている子どもに聞けばコミュニケーションのきっかけにもなる。子どもから教えてもらったら、報酬として必ずお小遣いをあげて。家の中で就労体験ができる機会にもなる」

 ただ、リアルでの開催を希望する声も根強い。参加者の一人である50代の女性は、以前にひきこもった経験があり、現在は妹がひきこもり気味。東京都多摩市で昨年から「引きこもり女子会」を開催している。「体温や人とのつながりをより感じるので、なるべく対面でやりたい」と話す。

 また8050に該当するような中高年の家族は、ガラケーの人も多く、ITリテラシーが低い場合もある。結果、支援のサービスからさらにこぼれ落ちる人もいる。大橋さんはこう言う。

「政府にはマスクよりスマホを配ってほしい。経済事情でスマホやパソコンを持てない当事者は多い。対面かオンラインか、もしくはハイブリッド。どれで支援を受けるか、当事者が選べることが大事です」

■オンラインでゆるく


 その「選ぶ」ための情報をインターネットで提供している人がいる。「ひきプラ(ひきこもりプラットフォーム)」を運営する田島尊弘さん(40)だ。全国で開かれている当事者会の情報や、ひきこもりの人が参加できるボランティア情報を掲載している。

「ひきこもりの方の居場所の情報は、その会にホームページがなかったり、チラシなどの紙媒体にしか載っていないことも多い。情報にたどり着きにくいし、たどり着いても参加の方法もわからない。『もったいないな』と思ったのがきっかけです」

 ひきプラが掲載している当事者会は、コロナ流行前は9割以上が対面で開催。緊急事態宣言後の5月末には、登録団体の半数以上がオンライン開催を始めたという。

 田島さんは、オンライン開催は8050世代などにはハードルが高いことは認めつつ、そのメリットについてこう話す。

「地域の壁がなくなり、地元の会以外にも参加できます。電車に乗る、人混みに出る、顔を合わせるなどにハードルの高い人が多いので、その点でも参加しやすい。交通費もかからず、参加後も自由に入退室できます」

 ひきこもりなどの当事者会を運営している任意団体の「うさぎプロジェクト」は、コロナ禍前からオンラインを積極的に活用している。代表のマイメロさん(30代)は、「対面で会うのが理想的ですが、オンラインには補助的な役割がある」としつつ、その強みをこう話す。

「対面は『その場限り』も多いけど、オンラインなら簡単に連絡を取り合える。関係をゆるく続けるには、オンラインがおすすめです」

 ひきプラの田島さんは活動の中で、当事者と家族などの支援者がお互いの思いを知れる「場」を強く求めていることを、あらためて痛感しているという。

「当事者も家族も、相手が『何を考えているのだろう』と悩んでいることがすごく多い。家族会と当事者会だけではなく、今後はその間をつなぐ役割をするイベントをやりたい。そこの悩みを解決することが、8050問題にとっても大きなポイントになるのでは」

■人材育成が大きな課題


 コロナ禍では、民間の支援団体の活動だけでなく、行政による支援もほぼストップした。一方で、ひきこもり支援の窓口である社会福祉協議会への相談件数は、生活困窮などにより40倍にもなったという。

「ひきこもりに関する業務が回らない状態が続いています。加えて、支援者は感染対策でアウトリーチ(訪問)もできない」(前出の大橋さん)

 前出の池上さんも、いまの行政には課題があるという。

「圧倒的に人材の育成が課題です。現場の相談員の多くが、ひきこもる人の心情や特性、家族の苦しみなどを想像できてない。そこをきちんと勉強して理解する。その上で当事者や家族にとって有益な情報収集をする。でないと相談する側が傷つき、支援の拒絶につながります」

 来年4月には、8050問題を見据え「ひきこもり」「介護」「貧困」の分野ごとのタテ割りをなくし、一括して相談に応じる自治体を国が支援する「改正社会福祉法」が施行される。

 前出のマイメロさんは、ワンストップでの対応は利用者のプラスになるとしつつ、自治体の対応についてこう提案する。

「ひきこもりの家族は近所の人に知られたくない思いが強く、遠い自治体を利用することはよくある。そんなとき、『あなたは対象外の地域です』と断り、何も代替案を示さないのは行政の怠慢です。支援者は自分たちのテリトリーだけでなく、幅広く他の支援者や相談先を把握し、提案することが求められます」

(編集部・小長光哲郎、高橋有紀)

※AERA 2020年10月19日号より抜粋

【風呂よりトイレをまめに消毒 家庭内感染から子どもを守るために気をつけるべきこと】

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ウォーキングは「朝」「夕」どっちが効果的? ダイエット、モチベーションアップに最適な時間帯とは

 ウォーキングをする人は、大きく「朝派」と「夕方派」に分かれる。仕事のモチベーションのアップ、 体内時計リセット、ダイエット。その効果を最大限に受けとるための時間帯とは──。AERA 2020年10月12日号が迫る。

【お尻の筋肉を使っていますか? ストレッチと歩幅見直しで歩き方を改善】

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 新型コロナウイルスの感染拡大による自粛により、運動不足に悩んでいる人は多い。感染拡大が少し落ち着き、気持ちがいい季節になった今こそ始めたいのが、ウォーキングだ。

 アエラが9月に行った「歩くこと」に関するウェブアンケートには、110人が回答。通勤や通学、買い物以外に歩くための時間を取っている人は、「ほぼ毎日」39.1%、「週に1度以上」24.5%、「不定期」23.6%。9割近い人が、意識して歩く時間を持っていることがわかった。

 ウォーキングは体力面だけでなく、精神面にも多くのメリットがあることがわかっている。実際、アンケートでも散歩やウォーキングで得られる効果について、「心が整う」(45歳・男性・出版社勤務)、「頭がすっきりする」(21歳・女性・学生)、「リラックスできる」(60歳・女性・アルバイト)などを挙げる人が多かった。

■睡眠の質も向上する


 そこで問題になるのが「いつ歩くか」。歩く時間帯を聞いてみたところ、朝派35人、夕方派35人。昼間や夜と回答した人もいたものの、大多数が朝か夕方に歩いている、という結果になった(複数回答)。

「朝が弱い人や気持ちが疲れている人ほど、ぜひ朝散歩をしてみてください」

 そうすすめるのは、精神科医の樺沢紫苑(しおん)さんだ。

「うつ病をはじめとするメンタル疾患を抱える患者さんの中には、昼頃まで寝ている人が多くいます。そこで、10年くらい前から朝散歩をすすめるようにしたところ、よくなったという報告がたくさん届きました」(樺沢さん)

 樺沢さんによると、精神の安定や安心感をもたらす脳内物質であり、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌が少なくなることでうつは起きる。セロトニンは朝日を浴びることや、リズム運動で活性化する。朝の散歩にはこの二つの要素が含まれているというわけだ。

 セロトニンの分泌が活発になると、清々しい気分になり、やる気がわき、仕事のパフォーマンスも上がる。


 ポイントは起床後1時間以内に15~30分程度歩くこと。太陽の光と運動には体内時計をリセットする効果がある。起床から時間が経ってしまうと、遅い時間に体内時計がリセットされてしまう。とくに自宅勤務などで通勤の必要のない人は、朝散歩の時間を作り、体内時計をリセットしたい。大切なのは「起床からの時間」なので、無理に早起きする必要はない。10時に起きたら11時までに歩けば大丈夫だが、できれば午前には歩きたい。また、日中にセロトニンを増やすと、その後に睡眠ホルモンのメラトニンが作られるので、睡眠の質を上げることができる。

 健康な人であれば15分くらいでセロトニンが分泌されるというが、疲れがたまっている人、精神的に弱っている人はセロトニンの分泌が少なくなっている可能性がある。少し長めの30分くらい歩くといいという。

 太陽の光を浴びたほうがいいので、紫外線対策をしすぎないこと。長袖やサングラスなどで全身を覆うよりも、顔に日焼け止めを塗るくらいにとどめたほうがいい。「イチ、ニ、イチ、ニ」とリズムを刻む。速歩きならさらに効果的。深く呼吸をして、空や木々を見て、季節の移ろいを感じながら歩く。

「朝散歩は、メンタルにおける最強の健康法といえます」(同)

■ダイエットも朝が有利


 そんな樺沢さんも、もともとは夜型人間だったという。

「朝はギリギリまで寝て、遅刻寸前。午前中にぼーっとしていることが多かったですね。朝型に切り替えてから、私の人生が変わりました。今は朝から午後2時くらいまでに仕事の8割が終わるようになり、仕事の量も質も3倍くらいに上がりました。最初は週1回、5分から始めてみてください。河原を歩いていて、あー気持ちいいと思う。それこそが一番の効果ですね」

 では、夕方や夜のウォーキングには、あまり意味はないのだろうか。

「セロトニンの活性効果は得られません。ただし、週2、3回の軽い運動でも、認知症のリスクをかなり減らすという研究があり、運動不足予防など一般的な健康効果は得られます。朝が一番おすすめですが、しないよりしたほうがいいのは確かです」(同)

 セロトニンの分泌や体内時計リセットでは、朝ウォークに軍配が上がるようだ。では、ダイエットではどうか。体内時計の専門家である早稲田大学准教授の田原優さんに聞いてみた。

「以前は脂肪燃焼では夕方が有利とされていましたが、最近は朝のほうがダイエット効果が高いとされています」(田原さん)

 朝食と夕食後、それぞれランニングマシンで走ってもらい、その時の血液中の指標をみたところ、夕方のほうが脂肪燃焼効果が出たという研究がある。アスリートのベストレコードが夕方に多いことも、夕方のダイエット効果を後押しした。だがここ数年で、長期に及ぶ研究が発表された。

「午前と午後に運動した人の10カ月後を比較した米国の研究では、午前に運動した人のほうが体重や腹囲の減少が大きいという結果が出ました。長期のダイエットでは朝ウォークが有利といえます」

■夜は軽めにしておく


 田原さんは体内時計のリセットという観点からも、朝ウォークをすすめる。

「朝の運動は体内時計をリセットしてくれますが、夜の運動は体内時計を遅らせてしまいます。とくに20時以降の激しい運動は、避けたほうがいいですね。ちなみに、昼の運動は体内時計にはあまり影響を及ぼしません」

 体内時計が乱れると、規則正しい生活ができず、風邪をひきやすくなったり、生活習慣病のリスクが上がったりするという。ただし、軽い運動なら夜ウォークの効果も期待できる。

「20時以降の激しい運動はよくないと言いましたが、寝る2時間ほど前の軽いウォーキングには寝つきをよくする効果が期待できます。リラックス効果が増し、副交感神経が優位になり、運動後の深部体温低下をもたらし、眠りやすくなります」

 朝は体を目覚めさせるしっかりめ、夜はリラックスするための軽めのウォーキングがおすすめだという。ただし、起きてすぐの朝ごはん前は体が十分に目覚めていない。ある程度体がほぐれるまで無理をしないこと。水分不足にならないように、十分な水分補給をしてから始めよう。(ライター・井上有紀子)

※AERA 2020年10月12日号より抜粋

【150日で30キロ減の医療記者が明かす「必ず結果が出るダイエットの考え方」】

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トランプ米大統領「前例ないコロナ治療」で強行退院 「司令塔でクラスター」の異常事態

2020年10月14日 18:30 AERA/写真・gettyimages

 トランプ米大統領は新型コロナに感染するも早期に退院を果たした。だが、専門家は命を顧みない判断であり、感染を周囲に広げるリスクがある退院だと懸念する。AERA 2020年10月19日号で掲載された記事を紹介。

【「くそったれショー」と酷評された米大統領候補の討論会 トランプ氏は人々に恐怖引き起こす発言も】

*  *  *
 祖国への強大な敵に打ち勝った英雄の帰還のようだった。

 10月5日夜、トランプ米大統領の選挙チームが公開した動画は、ハリウッド映画の予告編さながらの演出だった。主役は大統領本人。新型コロナウイルス感染の治療を終え、大統領専用ヘリ「マリーン・ワン」で首都に戻ったシーンを劇的に強調した。離陸するヘリに、マスクなしで敬礼する大統領の後ろ姿で終わっている。ホワイトハウス到着後、マスクを外しメディアに手を振った直後に撮影された。

「コロナを恐れるな」

 退院前の投稿通り、世界を苦しめるコロナにも負けない「偉大な米国」を自身に重ねたお得意の「リアリティー・ショー」だ。

 しかし、実際にはコロナに勝ったわけではない。それどころか、感染を周囲に広げる危険性の高い強引な退院だった。


■感染のリスク伴う退院


「発症が10月2日であれば、退院日は12日になるはずで、5日の退院は早すぎる。周囲へのウイルス伝播は発症後8日くらいまでみられる。大統領は10月10日ごろまで感染性がある」

 そう指摘したのは、浜松医療センター院長補佐兼感染症内科部長の矢野邦夫医師(65)。

「高齢者、肥満、男性の3条件に加え、酸素濃度が低下した人では炎症が強くなっており、重篤化する危険性がある。少なくとも12日までは十分な観察が必要。自分の命を顧みない退院判断だったと思う」

 感染をめぐる公開情報が絞られる中、断片的な情報から経緯が見えてきた。これをもとに、大統領の重症度を矢野医師に分析してもらった。

「酸素濃度が93~94%まで低下していることから、ウイルス性肺炎を合併したのは間違いないと考える。日本では『中等度・・呼吸不全なし』に分類され、重症ではない」

 医師団による治療では、重症患者向けのレムデシビル(開発中だが緊急使用は認められている)やデキサメタゾンが投与された。コロナ治療としては臨床試験中で未承認の抗体カクテルもだ。三つが同時にコロナ治療で使われるのは前例がなく、「地球上で大統領が唯一の患者」(CNN)。一般の患者ではあり得ない特別対応だった。

 矢野医師によると、レムデシビルと抗体カクテルはウイルスの増殖を抑えるため、デキサメタゾンは炎症反応を防ぐために使われる。今回は、レムデシビルと抗体カクテルを早期に投与してウイルスの増殖を抑え、炎症が引き起こされないようにしながら、デキサメタゾンで既に始まっている炎症を何とか抑え込むようにしたと思われる。

「レムデシビルと抗体カクテルをハイリスク患者で既に肺炎を合併している患者に早期に使用するという戦略なので適切と思う」と矢野医師。日本では新型コロナでの抗体カクテルの使用例はないという。

■司令塔のはずが感染源


 濃厚接触者を探すうえで重要な感染時期について、医師団は明確にしていない。これについての矢野医師の見解はこうだ。

「10月2日に高熱と酸素濃度の低下があり、その日を発症日とすると、潜伏期を5~6日程度にした場合の感染時期は9月26日の最高裁判事指名のころと推定される。潜伏期は2~14日と幅広いが、最も多いのが5~6日。しかし、発症後5日程度で呼吸苦が出てくるのが通常なので、発症日と感染日はもっと前だった可能性はある」

 最高裁判事指名の発表の会場は、座席が密に置かれたホワイトハウスのローズガーデンで、出席者約150人の大半がマスク未着用だった。大統領夫妻やコンウェイ元大統領上級顧問ら10人以上が感染した。不在だった大統領最側近のヒックス氏らの陽性も判明した。

 コロナ感染者760万人超、死者21万人超で世界最多の米国だが、感染防止策の司令塔となるべきホワイトハウスがクラスター化する最悪の状況に陥っている。仮に感染が9月26日前後だったとすると、その後に行われた民主党バイデン大統領候補との討論会や、ニュージャージー州などでの選挙資金集会の出席者にも濃厚接触者がいる可能性がある。

 米疾病対策センター(CDC)は、接触者の追跡に向けてホワイトハウスの調査をする意向だが、大統領側が受け入れていないというから驚く。(朝日新聞GLOBE編集部・山本大輔)

※AERA 2020年10月19日号より抜粋

【きっかけは最高裁判事の死 米大統領選で有権者を投票に駆り立てる“ある事情”】

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アメリカの自己主張力をはぐくむ教育法 子どもに選ばせる・その選択を否定しない

2020年10月14日 18:30 AERA

 欧米社会では自己主張が大切だ、とよく言われます。アメリカに暮らしている身としても、しみじみそう感じます。アメリカ人は自己主張が強い。自分が何者か、どんな考えをする人間なのか、お互い開示して理解を深めていくのがこちらのコミュニケーションのスタイルです。ただ、日本で生まれ育った日本人としては「自己主張が大切だと言われましても、主張したい自己がないんですけど」と思うこともあります。

 日本で大切にされているのは、伝統や決まりを守る姿勢、穏便さ、協調性など。だから日本人は比較的、「一般的に正しいとされる考え」や「厄介事を起こさないような方法」、「みんなに当てはまるであろう意見」を察し、そこに個人の意見を寄せて一体化させるのが得意です。でもそれをずっと続けていると、自己と他者の境目が溶けて見えなくなってしまう気がします。

 対してアメリカ人は、給与の額からランチに食べるサンドイッチの中身まで、確固たる自論を持っています。納得いくまで上司に給与額の交渉をし、サンドイッチ屋さんではパンのトースト方法、はさむ具、ドレッシングの種類を事細かにオーダーしている様子を見ると、そこまで労力をかける姿勢、何より万事に渡って自らの意思が存在していることに驚いてしまいます。典型的日本人としては「そんなことまで自分で決め(られ)るの?」という気持ちですが、アメリカ人に言わせると「自分のことなのに自分で決め(られ)ないっておかしいでしょ?」だそうです。

 アメリカ人がここまで自己主張に秀でているのは、教育に秘密がある気がします。たとえば、こんなことがありました。我が家の4歳の娘が通うピアノ教室でのこと。教本に「CDE(ドレミ)の3つのキーを使って、曲を作ってみましょう」という課題があったのですが、娘はなぜか憮然として指を動かそうとしません。聞けば、「CDE(ドレミ)だけじゃなくて、ABCDE(ラシドレミ)の5つを使いたい」と主張するのです。

【コロナ禍で「あーん」「もぐもぐ」がわからない子どもたち 保育や家庭でできること】

■達成感で輝く娘の顔


「決まりなんだから、言われたとおりにしなさい」と、私なら注意していたでしょう。しかし先生は、こう言いました。「そうなんだ、やる気があるのね。じゃあちょっと難しいかもしれないけど、5つ使って曲を作ってみようか」

 曲は、最後の音だけC(ド)に指定されていました。最後がドだと、それまでがはちゃめちゃでもなんとなくハ長調の曲に聞こえる気がしないでもありません。しかし娘は、またも無茶な主張をしました。「C(ド)じゃなくて、A(ラ)で終わらせたい」と言うのです。

 思わず「ワガママばかり言ってないで、言われたとおりにしなさい」との言葉が喉を出かけました。だって、ピアノ初心者の4歳児に深遠な考えがあってそう主張しているとは思えません。曲の成り立ちを教えるためにも、教本どおりにしたほうがいいに決まっている。私はそう思ったのですが、先生はこう言いました。「実は私もAのほうがいいかなと思ったんだ。じゃあ書き換えてみようか」。そして、教本に書かれたCの字を消し、Aにしてくれました。

 娘は大満足で自作の曲を弾きました。ドから始まってラで終わるメロディは、親の耳にはとても曲には聞こえない5音の羅列でしたが、娘の顔は達成感で輝いていました。

 そもそも教本には、「自分で曲を作ってみよう」という課題がひんぱんに登場します。ピアノを始めたばかりの初心者なんだから決められた音を決められたように覚えてなぞるほうが上達が早いんじゃないか、私が日本でピアノ教室に通っていたときはそうやって練習したぞ、なんて思ってしまうのですが、少なくとも初心者対象の場合、アメリカ流の練習法は指示遂行・反復練習・暗記とは対極にあるようです。

 学校の授業でも同じです。バーチャル学習用の宿題を見ると、「自分で考えてみよう」「自分で作ってみよう」という方向性の問題が多いことに驚かされます。「アルファベットのAから始まるものは何か考えてみよう」「おうちの中でくりかえしの柄になっているものを探してみよう」「〇△□の形を使って顔を作ってみよう」など。決まった答えがない分、採点や指導の労力がかかりますが、娘は実に楽しそうに課題をこなしています。

■学校の給食でも毎日飲み物が選べる!


 学校の給食は、毎日飲み物が選べるようになっています。水、牛乳、チョコレート牛乳、オレンジジュースの4種類から選ぶそうで、それを知ったときは「そんなん4歳の子どもに任せたらチョコかジュース三昧になるに決まってるやろ!」と憤慨したのですが、どうやら娘の話では、水や牛乳を選ぶ日もあるそうなのです。選択肢があり、自分にその選択が任されると、案外子どもって賢明な判断をすることができるものなんだな──と考え込んでしまいました。

 娘の友だちと会うときも、親が「そろそろ遊びは止めておやつにするよ。クラッカーとバナナ、どっちにする?」などと子どもに選ばせる場面をよく目にします。それはスムーズに物事を運ばせるための戦略なのかもしれませんが(どっち?と訊くことで、子どもが「まだ遊びたい~」「アイスクリームが食べたい~」と駄々をこねる確率は低くなります)、些細な物事でも選択肢を与えてその選択を肯定することで、子どもの自己を確立させ、自己主張力を高める側面もあるように見えます。

 ということで、私はアメリカの教育法を「日々子どもに選択させ、その選択を否定しないことによって子どもの自己主張力を高めている」と見ているのですが、その自説をアメリカ人の夫に披露したところ、一刀両断されました。「アメリカ人はそんなことまで考えていないよ。単に、楽しく学ばせることに重きを置いているだけだ」

 それから話は、アメリカの教育がいかに「楽しさ」を重視しているか、そのメリットとデメリットについての、夫の独演会となりました。私はしみじみと思いました。成り立ちはどうあれ、アメリカ人ってほんとに自己主張が強いよな、と。日本人的穏便さで聞き役に回っていると、あっという間に会話の主導権を奪われてしまいます。

※AERAオンライン限定記事

◯大井美紗子
おおい・みさこ/アメリカ在住ライター。1986年長野県生まれ。海外書き人クラブ会員。大阪大学文学部卒業後、出版社で育児書の編集者を務める。渡米を機に独立し、日経DUALやサライ.jp、ジュニアエラなどでアメリカの生活文化に関する記事を執筆している。2016年に第1子を日本で、19年に第2子をアメリカで出産。ツイッター:@misakohi

【相手の姿が見えなくなるまで見送る日本人 アメリカ式の解散なら人生100日は節約?】

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稲垣えみ子「相棒のちゃぶ台の修繕期間中に、ちゃぶ台なしの生活をふと考えてみた」

2020年10月14日 18:30 AERA

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【稲垣えみ子「共助とは『助けたつもりが助けられていること』なのかもしれない」】

*  *  *
 社会人になり一人暮らしを始めて30年以上になるが、案外物持ちの良いタイプらしく、ほぼ30年間つき合っている家具やら道具やらが幾つかある。

 その一つが、折りたたみ式の木のちゃぶ台だ。

 駆け出しの頃勤務していた京都の中古家具屋で手に入れた、おそらくは昭和初期のもので、確か4千円だった。以来、健やかなる時も病める時もともに過ごした配偶者レベルの相棒である。だが寄る年波には勝てず、天板は三つに割れ、足を支えていた釘も緩み、ついに崩壊寸前に。さりとてここまで共に生きてきたものを捨てるなど考えただけで頭にドナドナが……。なので案外必死になり、このような低級家具を修理してくれる有り難いお店を探し出した。

 ハゲた天板の塗り直しもお願いしたところ、かなりの大修理となり提示された修理代は2万円。迷わずお願いする。4千円のちゃぶ台を2万円で直すとはこれいかになどとは露ほども思わず。配偶者が瀕死の病で手術するとなればごちゃごちゃ言うてる場合ではない。

 というわけで入院半月と相成りまして、その間我が家から机が消えた。仕方なく、小さなお盆が食卓代わり。まーこれが小さすぎて何も乗りゃしねえ。茶碗一杯の飯、小さな椀に味噌汁、小皿の漬物で満員。味噌汁をでかくしたり、奴を添えたりもできぬ。修行のごとき食生活である。


 ところがですね、これで案外満腹なのであった。ずっと「味噌汁・大」さえあれば十分と思っていたが「小」でも全くいけたのだ。それに、ちゃぶ台がないと部屋が広いったらなかった。これまで「会社を辞めて小さな家に引っ越して……」などと自慢げに語っておったが、小さいどころか宇宙のごとく広い。意味なくデンぐり返しなどしてみる。身にあまる広さである。

 ふと思う。いずれは最愛のちゃぶ台も卒業し、もっと小さな部屋で、お盆だけで生きていく日が来るのやもしれぬ。もっともっと身軽になって、その挙句に死んでいく。まるで猫の如く。それは究極の理想である。

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

※AERA 2020年10月12日号

【稲垣えみ子「ご近所ホテル泊、我が家で感じる自然の涼に改めて感動した」】

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パンプスよりもブーツを選べ 足の形の変形を防ぐために「習慣化したい足ケア」

2020年10月14日 18:30 AERA

 足の形が変形しているのに、自覚していない人が多いという。足の形が悪いと歩き方が悪くなり、足だけでなく体全体に負担がかかる。あなたの足の形は大丈夫だろうか。AERA 2020年10月12日号は、「足ケア」の方法を専門家に聞いた。

【ダラダラ「1万歩」は「何もしない」人と大差なし!? 筋力・持久力アップに効くのは「速歩き」】

*  *  *
 歩き方の見直しで注目したいのは、「足の形」だ。アシックススポーツ工学研究所主席研究員の市川将さんによると、足の形と歩き方には「鶏と卵」のような関係があるという。

「足の形が悪いと歩き方が悪くなり、歩き方が悪いと足の形も悪くなります。私たちは足で体を支えて、立ち、歩いている。例えば外反母趾(がいはんぼし)が進行している人は、『かかとで着地して親指の付け根で蹴る』動作がうまくできず、ペタペタ歩きになる傾向にあります」(市川さん)

 足裏にはかかと、母趾球(ぼしきゅう)、小趾球(しょうしきゅう)の三つの支点があり、それぞれを結んで三つのアーチを作っている。このアーチは着地の際のクッションになり、蹴り出すときはバネになる。

 アシックスでは100万人以上の足形のデータを収集しているが、歩き方同様、足形も50歳を境に変形が見られたという。

「50歳以降の変化で特徴的なのは、足の幅が広くなること。長年体重をかけ続けることで横のアーチがつぶれ、幅広になっていくのだと考えられます」

 日本で唯一の「足の総合病院」である下北沢病院の菊池守院長(45)は、足は消耗品であり、日常的にケアすることが不可欠だと指摘する。

「足が変形していることに気が付いていない患者さんが非常に多い。足のアーチがつぶれた状態では足をうまく蹴り出すことができず、足首や膝などに負担がかかります。早い段階からケアに取り組むことが大事です」(菊池院長)

 菊池院長が最近特に気になるというのは、足指の付け根を曲げられない人が増えていること。試しに足で握りこぶしを作ってみてほしい。第一関節は曲げられても、付け根まで曲げられなかったら、足の筋肉が衰えている証拠だ。

 そこで菊池院長がすすめるのが、タオルを指でつかむタオルギャザー。足裏や足指、足のアーチをつくる筋肉を鍛える効果があるという。足のアーチがきれいに保たれていれば、体重は理想的に分散され、足に無理な負担をかけずに歩くことができる。


 正しい歩行ができているかどうかは、靴底のすり減りでも確認できる。

 理想的な歩き方ができていれば、かかとのやや外側とつま先のやや内側がすり減っているはず。かかとの内側が大きくすり減っている場合は、重心が内側に傾いている可能性がある。左右非対称の場合も、足のアーチの崩れが考えられる。

「靴の裏のすり減り具合は年齢によっても異なります。高齢者は足全体でペタンと歩くため、かかとが減りません。また、若くてもヒールをはいてペタペタ歩きがクセになっている人は、かかとがすり減らない傾向にあります」(同)


 どんな靴を履くのかも重要だ。やはり、ハイヒールやパンプスなどは、足への負担が大きいという。

「不安定な靴を履くと、足を筋肉で支えなければならず疲れやすい。特にハイヒールの場合は体重が足先にかかってしまう。人さし指の下に縦向きのタコができるし、外反母趾になる可能性もあります」(同)

 最近はスニーカー通勤も受け入れられるようになってきたが、ハイヒールやパンプスを履かなければならないこともあるだろう。その場合は、できればヒールが4センチ以下で、足首や甲が固定できるものを選ぶとよいという。<ブーツ→ブーティー→ストラップ付きのパンプス→パンプス>の順に、足にかかる負担は増す。気楽そうに感じる大きめのサンダルなども足が固定されず、意外に負担がかかるというから要注意だ。

「負荷のかかる靴を履いた日は、足をケアすることが大切です。風呂上がりに10分程度、ふくらはぎをもみ、足指を曲げて伸ばし、足指の間を広げる習慣をつけてください」(同)

(ライター・井上有紀子)

※AERA 2020年10月12日号より抜粋

【お尻の筋肉を使っていますか? ストレッチと歩幅見直しで歩き方を改善】

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