人が上昇志向を持つのは自然なことだ。だがそれが、時に「自己犠牲」がキーワードになる王室や皇室が絡むと、難しい面も出てくる。共感を集められないメーガン妃と小室圭さんの共通項を読み解く。AERA 2021年3月29日号から。
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どことなく似ている。英国のメーガン妃(39)を見てそう思った。誰に似ているかというと、秋篠宮家の長女眞子さま(29)のお相手、小室圭さん(29)だ。予定調和でない感じ。アンコントローラブルな感じが重なった。
■対照的でも共通点
3月7日夜、米CBSテレビで放送されたメーガン妃のインタビューで最も注目されたのは、長男アーチー君(1)を妊娠中、「肌の色がどれだけ濃いのかという懸念」について、王室内でやりとりがあったという告白だった。ことの真偽はわからない。が、世界中で「ブラック・ライブズ・マター」が支持されている時代に、アフリカ系米国人の母を持つメーガン妃が、アフリカ系米国人のインタビュアーにそれを語れば、どれほどの反響があるか。夫妻はしっかりわかっていたはずだ。
元女優のメーガン妃がインタビューを重要視することは、夫妻が公務から引退した2020年時点で王室も予測したはずだ。が、これは、想定を大きく超えていたに違いない。
そう思い、小室さんが浮かんだ。語るメーガン妃に、沈黙の小室さん。対照的だが、「想定を超えている」という面では、同じだ。王室、皇室、国民。それぞれの想定を大きく超えてくる2人だと感じたのだ。
眞子さまと小室さんが婚約内定の記者会見をし、母の「借金問題」が発覚したのが17年。翌年2月に結婚延期が発表されると、半年後、小室さんは米国の大学に留学した。「(借金問題は)母も私も解決済みと理解している」という文書を発表したのが19年1月、以後は音沙汰なしだ。
一方、眞子さまは20年11月に「文書」を公表、結婚への強い意志を明らかにした。同時に「様々な理由からこの結婚について否定的に考えている方がいらっしゃることも承知しています」と述べた。
「返さない400万円」と、結婚時に眞子さまに支給される「1億円超の一時金」が大きいことは間違いない。事情はさておき、さっさと返すか、いずれ返すと表明する。それが嫌なら、一時金の辞退か。それなら返した方が早いのに、と思うのが、大人というものだ。
その後秋篠宮さまは「結婚を認める」としつつ、「見える形での対応が必要」と会見で語り、宮内庁長官は12月の定例会見で小室さん側の「説明」に言及した。2人とも「大人の対応」を求めたわけだが、小室さんは無反応。しみじみ想定を超えた人だ。
■「公」より「私」寄りの人
メーガン妃と小室さんに共通するのが、上昇志向だと思う。誰がどんな志向を持とうと自由だが、それゆえに王室、皇室入りを望んだのかもしれないと感じてモヤモヤする。2人を、どうとらえればいいか、識者に話を聞くことにした。
名古屋大学の河西秀哉准教授(歴史学)から出たのが、「自己犠牲」という言葉だった。
「今の皇后である小和田雅子さんは、今の天皇に見初められ、何度も結婚を求められて承諾しました。美智子さまも同様です。外交官だった雅子さんがわかりやすいですが、2人とも『上昇しなくていい人』でした。つまり皇室入りにはいいか悪いかは別として、皇室外交という自己実現はあったにせよ、ある種の自己犠牲という面がありました。2人とも『お役にたつ』という思いがあったと思います」
小室さんもメーガン妃も、「公」より「私」寄りの人と見える。そういう人が皇室、王室に現れるのは、社会的現状と重なると河西さん。「新自由主義的な世の中」が影響しているというのだ。「新自由主義的な世の中では自己実現が重要で、それには『上昇』です。上昇志向的な人が増えているのは間違いないと思います」。でも、だからこそ平成から令和にかけて皇室を敬愛する人が増えたという。
例えば上皇、上皇后夫妻が高齢にもかかわらず、毎週のように被災地に足を運ぶ姿。自己犠牲と自己実現の板挟みで病を得て、何とか折り合いをつけて皇后になった雅子さま。ギスギスした世の中にあって「無私の心」で生きる人たちを見て、若い人も皇室を敬愛するようになった。
その点小室さんは、若い人たちには自分たちと同じように感じられる。皇室が大切にしてきた「丁寧に語る」ことをしないことも、炎上のガソリンを投下してしまっていると河西さん。
「人には上昇志向的な部分と自己犠牲的な部分と両方がある。例えば紀子さまが秋篠宮さまと結婚した時、上昇したいという思いがゼロだったかといえばそうではないでしょう。でも当時、マスコミは『キャンパスの恋』『3LDKのプリンセス』という美しいストーリーを描き、国民も受け入れ、祝福しました」。結婚する人、国民、双方の微妙なバランスで成立していたこの関係、今後は崩れるだろうと河西さんはみている。
「これから皇族と結婚しようという人は自己犠牲の思いがあったとしても、上昇志向的な面を粗探しされてしまうでしょう。100パーセント無私の人などいるはずもなく、佳子さま、愛子さま、悠仁さまの結婚のハードルはすごく上がってしまった。小室さん、罪だなあと思います」と河西さん。(コラムニスト・矢部万紀子)
※AERA 2021年3月29日号より抜粋
【眞子さま 前代未聞「納采の儀を経ず結婚」の可能性と苦難の道の始まり】
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