「週刊少年ジャンプ」連載の人気漫画『鬼滅の刃』の勢いは、とどまるところを知らない。ヒットの要因としてアニメ化によるところが大きい。AERAでは、「メガヒットの条件」を特集。アニメを制作したアニプレックスの高橋祐馬プロデューサーに戦略を聞いた。
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「昔は原作ありきでアニメ化、それが売れて映画化の流れが一般的でした。でも、今はスマホや配信の普及に伴い、作品のファーストウィンドーの選択肢も広がっています」
「投稿できるプラットフォームができたのは大きい。最近はTikTokが主流になっているようです」(小新井さん)
今では一つ、二つのメディアミックスは当たり前。隙あらば次なる展開へと歩を進めるコンテンツが増えるなか、一線を画するのがネットフリックスだ。アニメジャーナリストの数土(すど)直志さんは、こう指摘する。
「アニメが映像だけではなく権利を回して稼ぐビジネスなのに対して、ネットフリックスはこれまで『オリジナル作品』のライツもライブ配信もやらないというポリシーが貫徹している。そのスタンスが今後どうなるのか興味深く見ています」
人喰い鬼の棲む世界を舞台に、主人公の竈門炭治郎(かまどたんじろう)と鬼との戦いを描いた「週刊少年ジャンプ」の人気連載。コミックスの累計発行部数は4千万部を突破し、オリコン週間コミックランキングでは、なんとトップ10すべてを3週連続で独占した。昨年にはアニメ主題歌を担当するLiSA(32)が紅白歌合戦初出場を果たし、その勢いはもはや「社会現象」とまで評された。前出の小新井さんは言う。
「18年6月のアニメ放送決定時点で250万部だった作品が、約1年半で4千万部超え。そんな伸び方は初めて見ました」
「原作が面白く、映像も最高のものを制作していただいた。それをたくさんの方に届けたく、配信先を多くしました。テレビに例えると、全チャンネルで放送しているようなイメージです」
「口コミが広がり、面白そうだなと感じた方が集まれる場を作りたかったんです。ストーリーに合わせて役を演じるキャスト情報を発表したり、盛り上がりを細かく意識しました。今年公開する劇場版はアニメ以上のお祭りにしたいです」
「作品の感想を共有したい欲求が強いコア層の視聴者が多くいます。一方、愛着を示す『ファン度』は3位。今後さらにファンを育成、獲得することでよりマネタイズの幅も広がります」
(編集部・福井しほ、小柳暁子)
※AERA 2020年3月16日号より抜粋