「夫に話しても共感してもらえない」「妻にアドバイスすると嫌そうな顔をされる」……。なぜ、夫婦の対話ではこうもすれ違いが多く見られるのでしょうか? 夫婦がわかり合えないなら、コミュニケーションの改善が必要です。「AERA with Kids秋号」(朝日新聞出版刊)では、著書『妻のトリセツ』で有名な、感性アナリスト黒川伊保子さんに取材。夫婦の対話がすれ違う原因や夫婦の接し方のコツなどをうかがいました。
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「子育て中の夫婦は、脳の使い方が真逆。だから話がズレて決裂しやすいんです」と言うのは、男女の脳の使い方の差異に注目する黒川伊保子さん。人は誰でも、問題が起きると「ゴール指向問題解決型」「プロセス思考共感型」のどちらかの脳回路をとっさに選ぶのだそう。
それぞれの脳の使い方の特徴は以下のとおりです。
<男性に多い、ゴール指向問題解決型>
◎感情を排して目標に向かう
◎オチのないおしゃべりが苦手
◎普段はぼんやりしているように見える
<女性に多い、プロセス思考共感型>
◎共感し合うことによって気づきを生み出す
◎過去の記憶を元に危機を回避する
◎感情や気分と記憶が結びついている
「どちらかというと外で仕事をする時間が長い父親は『問題解決型』の脳を使い、周りと助け合い育児をする母親は『共感型』の脳を使うことが多くなります」
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「日々の勉強、進路選び、将来設計と子育ては目標設定が不可欠です。つい命令や指示が多くなる。共感が減ると、家庭内の会話がギクシャクしがちなんです」
「夫婦で脳の使い方が違うと、議論が成り立たず、お互いを認め合うことはなかなか難しい。そこで日ごろの接し方や会話のテクニックがコミュニケーションをとるうえで大切になってきます」
<妻から夫へのトリセツ>
◎最初に会話の目的を伝える
問題解決型脳の夫には、経緯ではなく目的や結論から伝えて。「息子の塾を変えるつもり。理由は三つ。一つは…」と要点を論理的にプレゼンするのが、相手の意識をつかむポイント。
◎夫の言葉を裏読みしない
覚えておきましょう。多くの場合、夫の言葉に裏はありません。「おかず、これだけ?」「このゴミ俺が全部捨てるの?」は批判ではなく単なる確認。「そうだよ」と返せばOK。
◎自分のやっていることをキャンペーンする
家事の総体が見えていない夫には「朝の出勤前に洗濯と掃除をして、学童の迎え前にスーパー寄って、宿題見ながら夕飯作ったらこんな時間」など、事実を具体的にアピールすることも必要。
<夫から妻へのトリセツ>
◎気持ちを肯定してから論を言う
妻との話し合いで異なる意見があっても、否定から入るのは避けて。まずは共感し落ち着かせてから、「その考えもいいけど、こういう方法はどう?」など持論につなげる方がスムーズ。
◎LINEの返事に困ったらおうむ返しをする
妻が「オチのない愚痴」「今日の出来事」を延々と話してきて返信に困っても、スルーはNG。おうむ返しが効果的です。「急に雨が降ってきたよね」「それは大変だったね」というだけで、共感したように聞こえて妻の心は落ち着くものです。
◎妻の怒りにはプレゼントで記憶をプラスに
夫婦ゲンカが白熱したら、いったんその場を離れて。落ち着いたころに妻が好きなお菓子などを贈りましょう。甘いもの効果で脳の緊張が和らぎ、怒りが収まるだけでなく、ネガティブなケンカの情報が小さなポジティブな記憶に上書きされます。
「夫婦が同じ土俵に立って、毎回意見をぶつけあわせなくてもいいと思うんです。例えば『日常の細かいことは私が決めるけど、進路はパパの意見を聞かせてね』『娘のことは私もよくわかるけど、息子の相談はあなたが聞いてあげて』など、各分野で誰が決定権を持つかを決めてしまうのも一つの手です」
※「AERA with Kids秋号」では花まる学習会代表の高濱正伸先生を特別編集長に迎えて「今の時代に欲しい!『子育ての軸』」を大特集しています。誌面では子育ての軸を決めるにあたって大切な夫婦のコミュニケーション以外にも、ほめ方や叱り方、思春期の子どもへの接し方など具体的に解説しています。