腸内環境の改善には、食習慣の改善がテッパンとはいえ、一朝一夕で結果が出るものではない。「そんなに気長に待てない」「効果を体感したい」というせっかちな編集部員たちが、手軽に生活に取り入れられるイージーな腸トレ法を、体を張って探してみた。
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企画に参加した4人の編集部員は、事前にヘルスケアシステムズの腸内環境検査キット「腸活チェック」を使って検査。その後、それぞれ1週間の“超短期”腸トレに取り組んだ。
「腸内環境を変えるには、2~4週間が一つの目安。悪くなるのはすぐですが、よくなるにはある程度続ける必要があります」
と同社研究開発部部長の石川大仁さんは心配顔だが、結果はいかに。
まず、目覚ましい体重減があったのが、男性部員(46)。朝起きぬけの水を飲むことと、藤田紘一郎医師おすすめの酢キャベツを食べただけで、1週間で110キロから106キロと、4キロも減った。食べた酢キャベツは、1日1回100グラム。家で食事するときに一品加えるだけなので、続けやすかったという。
「一度作ると1週間もつので、手軽に感じました。和にも洋にも合って、漬物やピクルスを食べる感覚でした」(男性部員)
一方、「1日で便が変わった」というのは女性部員(41)。朝起きぬけの水、腸ヨガなどの腸トレに励んだ。腸ヨガにはぜん動運動など腸の動きを整え、老廃物をきっちり排泄できる体作りに効果があるという。
全国にホットヨガスタジオを展開するLAVAでは、これまで度々「腸」をテーマにしたヨガクラスを開催してきた。今回は、LAVAのトップインストラクター・横田佳代子さんに「腸に効くヨガ」を監修してもらった。横田さんがおすすめするのはズバリ、「ネコ・トラ・ワニのポーズを、朝と寝る前に1セットずつ」。
それぞれのポーズには、腸の位置を整えたり、腸の働きを促進したりする効果がある。
まずはネコのポーズで、腸を正しい位置に戻す。特にデスクワークなどで日中座りっぱなしの人におすすめという。トラのポーズでは、腸トレに必要な筋肉を鍛える。腸腰筋を鍛えることで腸のぜん動運動を活性化し、腹筋を鍛えることで便を排泄する力も強くなる。最後のワニのポーズも、腰をひねることで腸のぜん動運動が活性化する。
女性部員は「お通じがいつも以上にスムーズになり、500グラムですが体重も落ちた」とうれしそう。「運動嫌いで、普段ほとんど動かない」から効果もテキメンだったのかもしれない。
「腸を整える生活習慣を考えるうえで、切っても切れない関係にあるのが『自律神経』です」と語るのは、順天堂大学医学部教授・小林弘幸医師だ。
まずは自律神経と腸の関係についておさらいを。
自律神経とは体中にある末梢神経の一種で、血管の拡張・収縮や呼吸、腸のぜん動運動などをコントロールする重要な役割を果たしている。自律神経には二つあり、一つは、活発に動いているときや緊張しているときに働きが盛んになる「交感神経」。もう一つが、リラックスしているときや睡眠中に働きが盛んになる「副交感神経」。双方のバランスが取れていると、腸の動きが安定し消化吸収がスムーズになる。
「自律神経の状態がよくなると、腸が安定して血流がよくなるので、代謝が上がり、エネルギー効率がよくなります。腸内環境が悪いと『悪玉菌』が出す硫化水素やアンモニアなどの影響で、エネルギー源が細胞に行かずに脂肪細胞に流れ込んでしまう。だから腸内環境が悪いときは太り気味になってしまうんです」
近年ではストレスが原因で自律神経のバランスが乱れ、心身の不調を訴える人も多い。
「頭痛、めまい、倦怠感、食欲不振などを訴えることも多いですが、それらは血流障害。自律神経の活動量が落ち、交感神経が上がることで、腸の働きが鈍り、血流が悪くなっているのです」(小林医師)
副交感神経を上げるうえで、特に大切なのが朝の習慣だ。小林医師によれば、朝やるべきは、1杯の水を一気飲みすること、しっかり朝食をとること。
「一気飲みというところが重要です。胃に重力をかけて、大腸を押す。起きた直後は脱水になっていますから、自律神経的にはあまりよくない。水を飲むことで少しでも脱水を改善しましょう。腸に刺激を与えると腸が動き出します。起きた直後は食欲がなくても、水を飲んで腸に刺激がいくと交感神経が上がって、朝食もとることができるようになります」
食事は腹8分目に抑えてしっかり3食とる、エスカレーターを使わずなるべく階段を使う、ぬるめのお風呂に15分浸かって血流をよくする、なども自律神経を整えるのに役立つそうだ。
「冷え性の人には便秘が多い。便秘で悩む人はシャワーではなく毎日湯船に浸かることが大切です」(小林医師)
寒くなるこれからの季節、特に気をつけておきたい。
このような生活習慣の改善に取り組んだあと、あなたは意気揚々とトイレへ向かうだろう。
最後の味方になってくれるかもしれないユニーク&グローバルな腸トレ(?)商品もある。アメリカで2013年に発売されたスクワティポティーだ。洋式トイレで使う足置き台のようなもので、これを使うことで、和式トイレのようなウンチングスタイルになる。
開発したのは、ロバート・エドワードさん(44)。母ジュディーさんが長年便秘で悩んでおり、ある日、医師から洋式トイレの前に小さい椅子を置いて足を置くとよいとアドバイスされた。実際にその姿勢をとるとスムーズに排便できるように。ロバートさんは、狭いトイレに毎回椅子を持ち込むのは大変と考え、洋式トイレの根元部分に収まるスクワティポティーを考案した。
鍵は、恥骨直腸筋と直腸の位置関係だ。台の上に足を置くと、上半身と太ももの角度が狭まる。これによって恥骨直腸筋が緩み、直腸の位置が肛門に対して直線上になることで、力みのいらない排便が可能になる。
日本でも15年に発売され、今では世界60カ国以上で35億円以上の販売実績があるという。
専門家を訪ね、さまざまな腸トレ法を取材してきたが、人によって効果が出にくいものも、1日、1週間で効くものもあった。手を替え品を替え、自分の腸に効く方法を見つけてほしい。(編集部・小長光哲郎、高橋有紀)
※AERA 2019年10月28日号
【体温から考える「体のピーク」と「脳のピーク」、そして「絶対に寝てはいけない時間帯」】
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