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寝ても疲れがとれない「デジタル時差ボケ」急増…合計1日8時間以上、90分以上連続使用など要因に

2020年9月4日 18:00 AERA/photo・小黒冴夏

 寝つきが悪い、寝ても疲れがとれない――。そんな症状に苦しむ「デジタル時差ボケ」がいま、増えている。あなたは大丈夫だろうか? AERA 2020年9月7日号は、自己チェックの仕方と解消法を紹介する。

■目の疲れは脳の疲れ デジタル時差ボケ急増


「非常に寝つきが悪くなりました」

 フリーライターの女性(42)は嘆く。

 もともと朝型で、夕方6時には仕事を終えるようにしていた。それが、コロナ禍でオンラインでの打ち合わせや取材が増えた。しかも、相手の都合で夜に入れられるようになり、毎晩10時頃までパソコンに向かうように。すると、仕事を終えても、目が冴えてなかなか寝られなくなった。首の後ろや肩など、今までは痛くならなかった箇所が痛くなったともいう。

「寝つきが悪くなったことで、当然寝起きも悪くなりました。また眠りが浅くなってしまったためか、何度も夜中に目が覚めるのも悩みです」(女性)

 コロナ禍で睡眠リズムが崩れる人が増えており、「デジタル時差ボケ」として注目を浴びている。

「デジタル機器が発するブルーライトが、体内時計を乱し睡眠トラブルを引き起こしていると考えられます」

 眼科専門医で、Y’sサイエンスクリニック広尾(東京)理事長の林田康隆医師は言う。自粛モードでデジタル機器への依存度が増えたことによる、健康被害を危惧している。

 ブルーライトは太陽光にも含まれ、「睡眠ホルモン」とも呼ばれるメラトニンの分泌を抑制、覚醒作用があるとされる元来欠かせない光の一成分だ。

 しかしデジタル社会に生きる現代人は、四六時中デジタル機器の光を見つめるようになり、毎晩のようにブルーライトを取り込むことで体内時計を乱して睡眠トラブルを起こしていると、林田医師は指摘する。

■目と脳のバランス崩れ


 7月、林田医師はメガネブランド「Zoff」を運営するインターメスティックと共同で20代の男女500人を対象に、「デジタル時差ボケチェックシート」を使い「ブルーライトによるデジタル時差ボケが及ぼす、睡眠への悪影響の実態を探る調査」を実施した。すると58.8%もの人が「デジタル時差ボケ」に陥っていることが判明。そのうち95.9%が「寝ても疲れがとれない」、76.5%が「夜中に目が覚める」と回答した。さらに、テレワークをしている人はテレワークをしていない人に比べて、毎日寝落ちしている割合が約2倍になることも明らかになった。

 デジタル時差ボケに陥りやすいのは、合計で1日8時間以上デジタルデバイスの画面を見ている人、あるいは90分以上連続で使用している人など。しかし、今やデジタルデバイスは生活の一部。手放すことは難しい。そこで林田医師が勧めるのが、ブルーライトコントロールと、目の運動(眼トレ)だ。

「デジタル機器が発するブルーライトは微弱で安全ですが、これだけ過剰に見つめ続けるのは人類が初めて経験していることです。1日8時間以上スマホやパソコンを使用する人は、ブルーライトカットフィルムを画面に貼る、ブルーライトカット眼鏡をかけるなどの対策をしてほしい」

【「オンライン疲れ」の正体は“脳過労” 脳科学で考える「1日5分」効果的な解消法】

 また、目の使い方についてはこうアドバイスする。

「デジタル機器の使用中は、ピントは手元、視線は画面の範囲内、まばたきが極端に減るなど、目の使い方が非常に偏っています。その結果、目と脳の緊張のバランスが大きく崩れているので、これをほぐしてあげることが大切です」

■目の周囲の筋肉ほぐす


 そのためには、遠くを眺める、目をギョロギョロ動かす、目を閉じてホットタオルを当てて温めるなどが有効。さらに、目の周りの筋肉をほぐす「グーパーまばたき」、目でゆっくりとペンのキャップを追いかける「ペンさし運動」などは、簡単にできて効果も期待できるという。

「夜間の昼光色は脳を緊張させることもわかっています。ブルーライトだけでなく光を見つめ続ける現代、寝る前くらいはブルーライトを取り込まない方が無難です」(林田医師)

 脳科学者で公立諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授も、目と脳の疲れには密接な関係があるという。

「長時間作業を続けると目がゴロゴロして動きが悪くなったように感じることがありますが、実は、目が疲れたというのは脳が疲れたサインです」

 そのまま放置すると脳の疲れは蓄積し、肩凝りのように慢性化するという。そして、目の疲れを取るためにも眼球運動は大切だという。

「疲れたと思ったら、パソコンの四隅をゆっくり目で追うことで注意を分散させてみましょう。注意や集中力にかかわる脳のネットワークが活性化します。また、目を閉じたり開けたりするだけでも脳を休めることができます」

(編集部・野村昌二)

●デジタル時差ボケチェックシート

  • 日中、眠いと感じることが多々ある目の痛みや疲れ、乾きなどのトラブルを感じやすい
  • 合計1日8時間以上、テレビやPC、スマホなどの画面を見ているPC、スマホなどの電子機器を90分以上連続で使用することが多い
  • 紙の本や雑誌ではなく、電子書籍を利用することが多い
  • 寝る前にはたいていベッドでスマホを見る
  • 起床後、朝日を浴びる習慣がない
  • 首や肩が痛い、凝る
  • 移動時間や隙間時間はスマホやゲームをしている
  • 毎日適度な運動をする習慣がない


★6個以上…デジタル時差ボケ
★4~5個…デジタル時差ボケ予備軍

※AERA 2020年9月7日号より抜粋

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予測に縛られない思考は壁を超えるきっかけに しいたけ.さんが「10代を空費した」にアドバイス

2020年9月2日 18:00 AERA

 AERAの連載「午後3時のしいたけ.相談室」では、話題の占師であり作家のしいたけ.さんが読者からの相談に回答。しいたけ.さんの独特な語り口でアドバイスをお届けします。

*  *  *
Q:中学・高校と、不安や自意識から夢中になれることもなく、勉強ばかりしていましたが、結局病んでしまいました。それから、自分を見つめ直し、楽しいことを中心に今を生きていこうと決めました。今では趣味も見つかり、心の潤いを感じています。しかし、10代を空費したと時々、暗い気持ちになります。(男性/浪人生/18歳/やぎ座)

A:さらっと書いていますが、本当にすごいことだと思います。楽しいことを中心に今を生きようと決めるのは、なかなかできることじゃないです。

 病んでしまうくらいまで一度入り込むと、今度は楽しむのも「楽しまなければいけない」とプレッシャーになってしまう。楽しいって、バランスが難しいことなんです。

 10代をほとんど空費してしまったというあなたにお伝えしたいのは、「ムダってすごく大事なもの」ということ。よく言われるかもしれないですけど、聞いてくださいね。

 大人になるとどの人も、何らかの形で仕事に関わらなければいけなくなります。仕事とは、予測された成果を出すために努力する行為だと思うんです。気晴らしでやるのは仕事ではないし、こうなったらいいなという希望的観測だけじゃなくて、どうそこに近づけていくか。数値の目標も出てきて、たどり着くために頑張らなきゃいけない。

 そんな中、仕事が思った以上に面白く転がったり、仕事で面白い人たちと結びつくことができたり、奇跡を起こす人たちが出てきます。その人たちこそが「ムダを知っている人」だと僕は思うんです。

 仕事や勉強に勤勉であることの最大のデメリットは、「予測に対して縛り付けられてしまうこと」だと思うんですよね。それも素敵な能力ではあるのですが、まじめで予測に忠実なだけでは壁にぶち当たる。その壁を越えるときに、一見ムダな経験が力を発揮するんだと思うんです。

 それは「どこかで帳尻があうようにできている」という僕の占師としての感覚でもあります。5回中5回当たりを引いて幸せを手に入れちゃうと、実は崩壊が早い。1回ぐらいハズレくじを引いておく必要がある気がするんですよね。仕事でも、これは明らかにハズレくじなんだけど、これをやると自分にとっての新しい扉が開くかもしれない、ということがあります。

 10代を空費してしまった、というハズレくじと付き合っていけば、いつの間にか自分の限界を超えて、とても面白いことになると思います。

 昔の人は、新品の服を買ったときはあえてどこか汚しておいたそうです。日光東照宮の「逆さ柱」も、あえて未完成の状態にしておき魔よけの意味を持たせた。「あえて完璧にしない」というのは昔から思想としてあるんですね。

 やぎ座はプライドが高くて、間違ったこと、外れたことをやってしまった時に傷つきがち。でも、外れている部分こそが個性であり、才能として伸ばせる部分なんです。

しいたけ./占師、作家。早稲田大学大学院政治学研究科修了。哲学を研究しながら、占いを学問として勉強。「VOGUE GIRL」での連載「WEEKLY! しいたけ占い」でも人気

※AERA 2020年8月31日号

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コロナ後遺症「なし」はわずか13% 徒労感や呼吸困難、ICUでのストレスも関係か

2020年9月2日 18:00 AERA/写真・朝日新聞社

 新型コロナウイルスに感染して回復した後も、油断はできない。後遺症が何カ月も残る人のいることがわかってきた。AERA 2020年9月7日号から。

*  *  *
「感染から4カ月たっても微熱や倦怠感が続いている」
「嗅覚や味覚が戻らない」

 SNSやYouTubeなどに投稿された動画で、新型コロナウイルスによる肺炎などからいったん回復して退院した後にも、さまざまな症状が残り、なかなか復調しないで困っている体験を紹介する人が、世界中で後を絶たない。

 ローマにあるバチカン・カトリック大学付属病院の医師らは7月、新型コロナウイルスで入院していた元感染者のフォローアップ外来を受診した143人の体調を米医師会雑誌に発表した。発症の約2カ月後にまったく何も症状が無くなった人は18人(13%)だけだった。32%は1~2種類の後遺症があり、55%には3種類以上の後遺症があった。44%は、生活の質が下がったと感じていた。

 後遺症としてもっとも多くの人が挙げたのは疲労感(53%)で、次いで呼吸困難(43%)、関節痛(27%)、胸痛(22%)が多かった。嗅覚障害や味覚障害が残る人もいた。

 中国やフランスなどの医師からも、新型コロナウイルスで中等症以上の重い肺炎になった患者の多くは、肺炎から回復しても肺の機能が低下し、退院後も息苦しさなど呼吸器関係の症状が残ることが報告されている。

 新型コロナウイルスの長期的な影響についてはまだわからないが、同じコロナウイルスの仲間によって2002~03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)では、発症から半年以上経っても、後遺症に悩まされている人が一定程度いた。

 香港大学の医師らがSARS発症から半年後の元感染者110人を調べたところ、3割の人はエックス線検査で肺に異常がみられた。さらに2年後に調べたところ、肺の機能が正常に戻っていない人がまだ2割いた。身体的な後遺症にとどまらず、2割近い人は2年後になっても、うつや心的外傷後ストレス障害(PTSD)といった精神的な後遺症に悩まされていた。

 こういった後遺症が残るのはなぜだろうか。

 日本呼吸器学会理事長の横山彰仁・高知大学教授によると、肺の機能が落ちるのは、ウイルスに感染して肺炎が起きた際、免疫細胞がウイルスを攻撃しようとして出すサイトカイン(生理活性物質)が過剰に出て、肺自体も傷つくからだという。

 特に、肺で酸素と二酸化炭素のガス交換を担っている「肺胞」が損傷してしまう。肺胞は、空気を含む袋状で、柔軟に伸び縮みすることでガスを交換しているが、損傷すると線維化して硬くなり、ガス交換が十分にできなくなる。それが、呼吸困難をもたらすという。

 肺機能の低下は、新型コロナウイルス以外が原因の重い肺炎やARDS(急性呼吸窮迫症候群)になった後にもみられる。

 一方、ほかの原因では起こりにくい、新型コロナウイルスに特徴的な後遺症には、血の塊が血管内でできる「血栓(けっせん)症」や、心筋炎、腎障害などがある。

「血管の内側の内皮細胞が、ウイルスに直接、攻撃されたり、ウイルスを攻撃しようとして免疫細胞が出したサイトカインによって傷ついたりして生じる血管障害によって、肺や心臓、腎臓などに後遺症が生じている可能性がある」(横山さん)

 重い肺炎で人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO(エクモ))をつけて集中治療室(ICU)で治療を受けた患者が、退院後にうつやPTSDになるのは新型コロナウイルスに限らない。チューブが気管に入れられて身体が拘束された状態になっているために大きなストレスを感じるだけでなく、会話もできないといった状態が原因となっている。

 新型コロナウイルスの場合はより精神的な影響が大きくなる可能性があると懸念されている。感染防止のために家族とも面会ができないのが一因だ。また、通常の肺炎では、鼻マスクなど拘束のより少ない方法から始めるが、新型コロナウイルスでは患者がウイルスを周囲に飛散させる可能性を考慮し、いきなり人工呼吸器をつけることが少なくないからだ。

 英国医師会雑誌は8月3日付の論説で、「新型コロナウイルスの感染者は、SARSで長期経過を調べた患者よりも高齢で、持病のある人が多い」として、新型コロナウイルスの長期的な影響については、SARSと同程度だとは限らないと指摘した。

 高齢者は、身体的な後遺症だけでなく、精神的な後遺症も重くなる傾向がある。新型コロナウイルスに限らず、ICUなどで入院治療を受けた患者には、せん妄が起きることがある。英国民に医療を提供する国民保健サービス(NHS)によると、若い患者の多くは回復すればせん妄も消失するが、高齢患者の場合、25%の人は退院後3カ月経ってもせん妄が残り、20%は半年後も残るという。(ライター・大岩ゆり)

※AERA 2020年9月7日号より抜粋

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新型コロナ「ワクチン開発」の現在地 世界と日本の動きに違いは?

2020年9月2日 18:00 AERA/写真・朝日新聞社

 新型コロナウイルスのワクチン開発には「壁」もあるが、なかには異例のスピードで治験に入っているものもある。AERA9月7日号ではワクチン開発の今を取材した。

*  *  *
「来年前半までに全国民に提供できる数量を確保することを目指す」

 8月28日午後、辞任の速報がニュースで流れるその直前に安倍晋三首相は政府の対策本部で、新型コロナのワクチンについてこう述べた。

 衝撃が走った官邸同様に、ワクチンをめぐる動きも慌ただしい。1週間前の21日には、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会があり、続く記者会見で会長の尾身茂氏は、高齢者、持病がある人、治療にあたる医師らを優先して接種する方針を説明した。高齢者施設や保健所の職員の優先の必要性など、今も検討は続く。

 さらに尾身氏は、記者会見でこうも述べている。

「一般的に、呼吸器ウイルス感染症に対するワクチンでは、感染予防効果を十分に有するものが実用化された例は今までなかった。(中略)発症予防とか感染予防効果については、今後の評価を待つ必要がある」

 ワクチンさえできれば元の生活に──そう期待が大きいだけに、尾身氏の言葉には面食らった人たちもいるだろう。

 日本ワクチン学会理事長を務める福岡看護大学の岡田賢司教授は、こう説明する。

「呼吸器ウイルスについては、ワクチンに対して最終的に何を求めるかということだと思います。感染予防なのか、発症予防なのか、重症化予防なのか。感染予防を求めるのが理想的です。ただ、今のインフルエンザワクチンを注射して血液の中に中和抗体を作っても、ウイルスが気道に付くことは防ぎ得ません。インフルエンザワクチンは重症化予防が主な目的で、感染予防までは望めないと思います」

■ワクチン開発に「壁」


 それにしても、ワクチンに詳しいナビタスクリニック(東京都)の久住英二医師は、尾身氏の発言には疑問を感じるという。

「第2相試験まで順調な結果が出ているワクチン候補もあります。さらに第3相試験で打つことに利益があると判定されたものについて接種するわけですから、尾身先生が呼びかけるべきは『皆さんが自分事として接種に協力してほしい』ということだったのではないでしょうか」

 まずは開発が成功しなければ元も子もないが、感染症のワクチン開発にはそもそも特有の壁がある。感染の流行は、地域性や季節性などの変動要因から、治験を進めにくい面がある。日本製薬工業協会は「日本のみならず、事業性の側面からも見通しが立てにくい感染症領域は非常に取り組みにくい領域」としている。

 しかし、各国では次々と開発が進む。

 世界保健機関(WHO)の発表によれば、世界では8月25日現在で31種類が人に投与する治験に入っており、142種類が治験前の段階にある。英オックスフォード大と英製薬大手アストラゼネカが開発中の「ウイルスベクターワクチン」など6種類が、1万人以上で発症や重症化を防ぐ効果をみる第3相試験に入っているという。

■異例のスピードで治験


 前出の岡田教授は、中でも「核酸ワクチン」と呼ばれる新しい種類のワクチンに注目する。

「今回はウイルスのDNA配列が早く公開されました。核酸ワクチンは、そのDNAを使って人にとっては異物である『スパイクたんぱく質』を体内に発現させて、免疫を作ります。従来のワクチンはウイルスそのものを5~10年かけて不活化したり弱毒化したりしていましたので、今回は極めて異例なスピードで治験に入っています」

 日本国内で最初に治験が始まり、製薬企業アンジェス(大阪府)と大阪大が共同開発する「DNAワクチン」もその一つだ。ほかには、塩野義製薬が国立感染症研究所と共同開発する「組み換えたんぱくワクチン」、KMバイオロジクス(熊本市)が東京大学医科学研究所などと進める「不活化ワクチン」などの候補がある。(編集部・小田健司)

※AERA 2020年9月7日号抜粋

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なぜ大学閉鎖なのにGoToはあり? 1年生に深まる孤立と不満「後期もオンラインなら心が折れる」

2020年9月2日 18:00 AERA

 コロナ禍のなか、4月に入学して以降、一度も大学に行っていないという新入生も多い。 孤立を深めるなか、「後期は対面授業」を切望する声が上がる。大学はどう応えていくのだろうか。 AERA 2020年9月7日号から。

*  *  *
「いつになったらキャンパスの土を踏めるのだろう。後期は対面授業を本当に受けられるのか」

 中部地方の実家で暮らす大学1年生の女性(18)は、じりじりした思いで大学の後期授業の発表を待っている。今年4月、首都圏の大学の農学部に入学した。しかし、キャンパスに足を踏み入れたことは一度もなく、写真でしか知らない。入試は地元で受験し、合格はインターネットで確認。新型コロナウイルスの感染拡大で入学式がなくなり、前期の授業は全てオンラインだった。

 この間、実家で暮らし、学校近くに借りた部屋は毎月7万円の家賃だけが引き落とされていく。夏休みの今も、大学の友だちと呼べる人はいない。前期はひたすら部屋にこもってひとり課題をこなしてきた。

「体育の実技までオンラインでした。部屋でひとり、体操をしながら『何の力がつくのだろう?』とむなしくなりました」

■「新しい友いない」3割


 課題が提示される場所や提出場所は、教員によってまちまち。見落として失敗しても、自己責任にされてしまうのか。なぜ学生に寄り添ってくれないのだろう。まだ見ぬ「大学」への不信感と疎外感ばかりが募る。

「後期授業も全部オンラインになったら、心が折れます……」

 コロナ禍で、今春、多くの大学は入学式をやめ、学校を閉じ、オンライン授業にシフトした。「学生や教職員の健康を守りつつ、教育を提供する」ための試行錯誤のなか、新たな課題も噴出した。「大学1年生の孤立問題」はそのひとつだ。

 新歓イベントをはじめ、教室での授業、サークルの勧誘など、従来、新入生が大学コミュニティーに溶け込むきっかけとなってきた出会いや交流の場が失われた。オンラインでの代替や独自のサポートをする大学もあったが、全国大学生協連の7月調査では、1年生の28%が「新しい友だちがいない」と回答。オンライン授業のみを受けてきた1年生では33%に上る。

 7月中旬、前出の女性が「私と同じ」と胸を打たれたマンガがSNSに登場した。美大1年生のmakiさん(18)が描いた「大学生は、いつまで我慢をすればいいのでしょうか。」だ。多くの共感を呼び、「いいね」が40万件つき、17万回リツイートされた。


 5月下旬、都市部の緊急事態宣言が解かれると、小中高校や飲食店は再開し、社会が動きだした。ところが大学は門を閉ざしたままで、大学生だけが社会から取り残された。

 小中高校と大学の違いについて言われるのは、大学は学生が広域から通学し、万単位の人が行き交う。教室の席が固定されておらず、移動範囲も広いため、感染者が出たときに追跡が難しい。大学生は酒を飲む機会もあるため感染リスクが高い。

 これに対し、makiさんはこう反論する。

「広域の移動や感染の追跡ができないことが理由で、大学生が学校に入れないのなら、なぜ『GoToトラベル』はありなのでしょうか? お酒を飲むのは、サラリーマンも同じです。いつまでも大学生だけを閉じ込めないでほしい」

 大学1年の子を持つ、保護者たちも危機感を募らせている。

「娘は朝から晩までパソコンと向き合う、実質引きこもり状態でした。こんな生活を延々続けて、社会に出てから大丈夫なのでしょうか?」(東京都・52歳)

「オンラインで講義を受けるだけなら『大学に行く意味は何?』と考えてしまいます。今後、大学選びも変わっていくのでは」(大阪府・51歳)

■裏カリキュラムの喪失


 若者の事情に詳しい、関西学院大学社会学部の鈴木謙介准教授は言う。

「学生たちの不満は孤立以上に、自分たちが割を食った点にある。6月時点で、大学側の丁寧な説明が必要でした。いま重点的に目を向けないといけないのは、大学から離れた場所で孤立している学生や留学生たちです」

 前期終了後、各大学は夏休みや後期授業の方針をホームページなどで発表した。前期は全面オンラインだった大学も、後期は対面授業を組み合わせる「ハイブリッド型」を表明しているところが少なくない。

 しかし、対面授業を実施するには、教室内のソーシャルディスタンスの確保など感染対策が不可欠。大学のキャパシティー面からも、全ての授業を対面で実施することは難しい。実習や実験を優先するなど、限定的なものになる可能性が高い。冒頭の女性の大学も、後期は週に1日程度、対面授業が受けられるようにする方針を打ち出しているが、詳細はまだわからない。

 果たして、限定的な対面授業の再開だけで「1年生の孤立」や「学生コミュニティーの構築」の課題は解決されるのか。鈴木准教授は「別の手だても考えないと難しい」と言う。さらに「全面オンラインの一番の問題は『裏のカリキュラム』が失われた点にある」と指摘する。

「表のカリキュラム」は大学が提供する「学び」。「裏」はサークルなど、授業以外の学生同士の協働だ。それによってコミュニティーが形成され、授業や学校生活でわからないこと、困ったことがあったときに「縦・横の助け合い」が機能してきた。

「重要なのは『表』も『裏』も有機的に働き、不可分な関係にあることです。大学の授業はかつてと違い、一方通行の一斉講義だけでなく、アクティブラーニングなどの協働型のものが増えている。学生同士のコミュニケーションベースとなるつながりが大事で、大学も関係作りをサポートするようになっている。私自身も担当学部で携わっています」(鈴木准教授)

■メンタル不調が倍近く


 今年の1年生が大学コミュニティーに参加しきれなければ、来年以降、続く新入生の拠り所も脆弱になりかねない。

 オンライン授業は、Zoomなどを使う「同時双方向型」と、収録した授業動画やテキスト教材を好きな時間に受講する「オンデマンド型」がある。鈴木准教授は、学生の通信環境への配慮などから、教員たちはデータ容量の大きい同時双方向型の授業の抑制を求められたが、それが学生の孤立を招く一因にもつながったと指摘する。

「いつ、だれが受けているのかわからないオンデマンド型の授業が多いと、孤立感が増すのは当然です。加えて、オンデマンド型では協働型の授業は難しく、問題は大きい。解決するには、通信環境が十分でない学生が同時双方向型を受講できるよう、大学内に発話のできるパソコンブースを整備する必要がある。今後の重要課題のひとつです」

 学生からは、メンタルの不調を訴える声も上がる。筑波大学の保健管理センターで学生を診察する、精神科医の白鳥裕貴さんはこう危機感を口にする。

「毎年、春の健診でスクリーニングに引っかかる学生は5%程度。今年はウェブでの問診になりましたが、10%と倍近いです」

■学生と教職員で自治


 不調の原因で最も多いのは睡眠不足。オンデマンド型の授業はいつでも受講できるからと、生活リズムを崩しているケースが少なくない。孤立が原因の場合は、可能な限り実家で過ごすようにして、安心できる居場所の確保が大事だという。

「学生の苦境には、大学教員も心を痛めてきました。ただ前期は、教員自身もオンライン授業の整備に必死で、手いっぱいだった側面があります」

 そう語るのは、関西学院大学法学部の岡本仁宏教授だ。多くの教員にとって、オンライン授業は初めて。しかも短期間での整備を余儀なくされた。岡本教授が3月末、フェイスブックに立ち上げた「新型コロナ休講で、大学教員は何をすべきかについて知恵と情報を共有するグループ」には2万人が参加し、活発な情報交換を重ねてきた。

 大学が再開に慎重になる背景には、3月の京都産業大学や8月の天理大学ラグビー部の集団感染などでの激しいバッシングがある。岡本教授は言う。

「対面授業を再開した場合、感染のゼロリスクは不可能。最新の感染状況や疫学的知識に基づく公的指針が明示され、大学の負うべき現実的な責任範囲が限定されること。さらに、若者の教育を担う大学を支えるための社会的合意や支援が重要です」

 加えて、学生は困ったことや不満があれば、大学に対し声を上げていい、という。

「ただし、単なるサービスの受け手としてでなく、学生と教職員が共にこの未曽有の危機を乗り越えていくために。それが大学の自治ではないでしょうか」

(編集部・石田かおる)

※AERA 2020年9月7日号

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関ジャニ大倉、男性同士の恋愛映画に“はにかみ” 「今だからこそ演じられる役だった」

2020年9月2日 18:00 AERA/写真・getty images

 主演映画「窮鼠(きゅうそ)チーズの夢を見る」の公開を控えた大倉忠義さんがAERAに登場。アイドル、そして俳優として確実にキャリアを積む大倉さんが現在の活動にかける思いを語った。AERA 2020年9月7日号から。

*  *  *
 撮影スタジオに流れる音楽のリズムに合わせ、軽やかに身体を揺らす。朝から何本もの取材を受けてきたというが、疲れを見せることなく、爽やかな笑顔でカメラに向かった。

 関ジャニ∞でドラムを担当し、ドラマや映画、舞台で俳優としても活躍する。質問に対し、落ち着いた口調で静かに語る姿は、主演映画「窮鼠はチーズの夢を見る」で演じた大伴恭一と重なる。学生時代から知る今ヶ瀬渉(成田凌)から思いを寄せられ、初めは煙たがるも次第に惹かれていく。つかみどころのなさが魅力であり、心のなかが読めないからこそ誰もが恭一に吸い寄せられていく。

「何を考えているのかわからないですよね。虚栄心だったり、プライドだったりを無理に隠そうとしているんじゃないか、とも感じました。実は他人からよく見られたいと思っている人なのかもしれないですよね」

 男性同士の恋愛を描いた作品は、大倉の俳優としてのキャリアのなかでも強い印象を残す。完成した作品を観たときはどう感じたのか。そう尋ねると、はにかんだ笑顔を見せた。

「自分の出ているシーンが多いので、客観視ができなかったです。出演した作品を観るといつも『これでいいのかわからないなー』という気持ちになります」

 少しだけ熱っぽく語ったのは、年齢ごとに演じられる役が異なる、という話題に及んだときだ。もし20代で恭一を演じていたら、奥行きのない人物像になっていただろう、と。

「仕事でもプライベートでも、20代で経験したことは自分の人生にとって大きなことばかりでした。それらがすべてつながったいまだからこそ、この役を演じることができたのだと思います」

(ライター・古谷ゆう子)

※AERA 2020年9月7日号

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「オンライン疲れ」の正体は“脳過労” 脳科学で考える「1日5分」効果的な解消法

 自粛生活やテレワークでデジタル機器を使う時間が急増。それとともに、「オンライン疲れ」を訴える人が増えている。オンライン中心の生活では視覚情報が中心となり、偏った脳の使い方で脳の一部が疲弊、使われない機能はさびつき、衰えてしまう。AERA 2020年9月7日号は「テレワークの弊害」を特集。解消法をレクチャーする。

*  *  *
 午後5時30分、テレワーク終了。都内の機械メーカーに勤務する女性(49)は自宅のパソコンのスイッチを切った瞬間、ぐったりとソファに倒れこむ。

「とにかく、疲れています」

 新型コロナウイルスが拡大した3月から、女性の会社では在宅勤務が始まった。仕事は一般事務。最初の数週間は最高だった。何しろ毎朝早く起きる必要はないし、通勤時の満員電車の苦しみもない。ビデオ会議がなければメイクもせず部屋着のまま、自分のペースで仕事ができた。

 でも、1カ月もすると、どうしようもない疲労感が襲ってきた。考えられる原因は、拘束時間の午前9時から午後5時30分までトイレや食事に立つとき以外、ずっとパソコンの前に座っていること。頭が休まる暇が全くないのだ。

 在宅で仕事を怠けていると思われたくないので、メールの着信があれば、即返事、ビデオ会議のTeams(チームズ)の呼び出しがあれば、即受信。会社だと、その場でひと言聞けば解決するようなことでもメールの確認が必要になり、膨大なメールを処理するように。Teamsでの会議はイヤホンを使っているが、耳に声がこもったり、相手の声がよく聞こえなかったりしてそれがストレスにもなる。

■ツイッターに80万件


 かくして、今では定時になりパソコンを切ると、何もする気力が起きずソファに倒れこんでいるのだという。

「もともと肩こりや腰痛持ちでしたが、それが悪化したのはもちろん、全身に疲労感があります」(女性)

 コロナ禍で外出自粛が叫ばれる中、オンライン会議やオンライン授業、オンライン飲み会などオンラインを活用した仕事や交流が積極的に行われるようになった。場所を選ばずどこでもできるというメリットがあるが、一方で、先の女性のように「オンライン疲れ」を訴える人が増えている。

 都内の会社員の女性(39)も、オンライン疲れで体調を崩した。

「朝から晩までオンライン会議が4、5件あり、そのせいか食欲不振、吐き気を覚えるようになってしまいました。電話が鳴っているような空耳もあり、心療内科に通い、抗不安剤を服用しています」

 NTTコム オンラインがツイッターの投稿内容を分析したところ、2月1日~5月14日に「オンライン疲れ」という単語を含んだ投稿は約80万件あったという。

「オンライン疲れの背景には、デジタル機器の使用による“脳過労”があると考えられます」

 そう話すのは、脳神経外科医で「おくむらメモリークリニック」(岐阜県岐南町)理事長の奥村歩(あゆみ)医師だ。

 脳過労とは脳の処理能力が落ちた状態を指し、「大事な会議を忘れてしまった」「よく顔を合わせる同僚の名前が出てこなかった」……といった“もの忘れ”の症状を訴える人が多い。

■一部だけが疲弊する


 ロート製薬が5月に10~50代の男女562人を対象に実施した調査では、在宅勤務が毎日という人は26%、週に3日以上という人は21%。また、デジタル機器との接触時間は、在宅勤務を取り入れている人ほど長い傾向にある。「コロナ禍において、1日あたりのデジタル機器との接触時間に変化はありましたか」という質問には、毎日在宅勤務という人は62%以上が「のびた」と回答、1日あたり5時間以上増えたという人も22%にのぼった。

 なぜ、デジタル機器の利用が脳過労につながるのか。

 奥村医師によると、脳の司令塔的存在である前頭前野(ぜんとうぜんや)で情報処理をする場合、次の三つの役割に分担されているという。

(1)浅く考える部分…記憶を一時的に保管する「脳のメモ帳」。ワーキングメモリという
(2)深く考える部分…前頭前野の熟考機能で司令本部的な働きをする
(3)ぼんやりと考える部分…デフォルトモードネットワークという。ぼーっとしているときに働く

 脳過労というと、脳全体を酷使しているイメージがあるかもしれないが、実はデジタル機器による脳過労は(1)だけが酷使されて疲弊し、(2)と(3)が使われずにさびついていく状態なのだという。

 パソコンやスマホはある意味、脳に楽をさせてくれる。固有名詞が思い出せなくても検索すればいいし、覚えるべきことも写真を撮って後から見ればいい。地図が読めなくてもGPSがあれば目的地にたどり着ける。つまり、情報を覚えたり思い出したり、深く考えたりという「脳が本来やるべき仕事」をする機会が奪われているのだ。

 さらに、オンライン中心の生活は、メールなどの文字情報の確認、ネットでの調べもの、オンライン会議など「視覚過多」の状態。もともと人間は情報の8割以上を視覚から得るといわれているが、オンラインではその傾向がさらに強くなり、視覚以外の五感が使われない傾向がある。

「私たちの脳は視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感を通じて情報を『インプット』し、前頭葉と呼ばれる場所で情報を取捨選択して『整理』を行い、言葉や行動として『アウトプット』しています。視覚からのインプットばかりが多くなって脳の整理が追い付かず、脳がゴミ屋敷のようになっていくのです」(奥村医師)

 この「情報メタボ」ともいうべき生活を長く続けていると、物忘れや記憶力の低下、思考力や集中力、コミュニケーション力低下などの症状が表れ、うつ病につながることもあるという。また、脳過労を訴える患者のほぼ全員が、寝つきが悪い、眠りが浅いなどの睡眠トラブルを抱えていると指摘する。

「睡眠時、脳内では、疲労物質を代謝したり、脳細胞を修復したりといったメンテナンス作業が行われていますが、最近の研究では、認知症の原因物質となるアミロイドβを除去する作業が、寝ている間に進められていることもわかっています。睡眠トラブルは脳の衰えと将来の認知症リスクに直結します」(同)

 夜間のスマホやパソコンの利用が、睡眠を防げているという。

■21世紀最大の発見


 脳の疲労はいつの間にか蓄積し、放っておくと深刻な状態に発展することも多いという。起きている間はずっとデジタル機器を使っているという人は注意が必要だ。解消するには、スマホやパソコンなどから一定期間離れる「デジタルデトックス」が有効だが、実行できない人も多い。奥村医師は言う。

「そこで重要となるのが、デフォルトモードネットワークを活性化させることです」

 これは前出の(3)ぼんやりと考える部分のこと。デフォルトモードネットワークは聞き慣れない言葉だが、21世紀の脳科学の最大の発見の一つだという。

 従来の脳科学では、脳は、何もしないでぼんやりしている時は活動していないと考えられてきた。しかし実は「ぼーっと」している最中、脳は決して活動をやめているわけではなく、内側前頭前野や後部帯状回など、脳内の複数の離れた領域が、同期・協調して働いてネットワークでつながり、活性化していることがわかった。デフォルトモードネットワークを稼働させることで、ひらめきやアイデアが浮かびやすくなり、(2)の熟考機能がフォローされ、記憶力が鍛えられたり、脳の老化が抑えられたりという効果もあるという。

 奥村医師はデフォルトモードネットワークを「我に返る脳機能」と呼ぶが、この時、脳は活動時の15倍ものエネルギーを消費し、それまで蓄積された情報を整理整頓して頭をリフレッシュしてくれるという。ただし、このネットワークは、視覚を遮断した時にしか活性化しない。デジタル画面を眺めていてはフリーズして働かないのだ。そこで奥村医師はこうアドバイスする。

「1日5分でいいので、ぼんやりする時間を作ってほしい。その5分間は、目をつぶる必要はなく、対象物を追いかけず、ぼーっとするだけで大丈夫。パソコンやスマホから完全に離れてメールや電話などの邪魔が入らない環境で、窓の外に目を向け、自然を眺められればさらに効果的です」

(編集部・野村昌二)

※AERA 2020年9月7日号より抜粋

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上白石萌音、新アルバム完成もまだビクビク? 「すごい曲ばかりでプレッシャー」の理由とは

 圧倒的な表現力で、俳優、歌手として躍進する。完成したアルバム「note」には錚々たるアーティストが参加。上白石萌音の今の思いが色濃く反映されている。AERA 2020年9月7日号に掲載された記事で、制作秘話を聞いた。

*  *  *
「幼少の頃から歌うことが大好きで、常に歌は生活の中心にあった」と語る上白石萌音。初主演したミュージカル仕立ての映画「舞妓はレディ」(2014年)での堂々たる歌いっぷりは観客の心を鷲づかみにした。18歳でCDデビューして以来、歌手としても順調に歩んでいる。

 今回完成したアルバム「note」には、YUKIや野田洋次郎(RADWIMPS)、内澤崇仁(androp)、水野良樹(いきものがかり)といったアーティスト陣が手掛けた計10曲が収録されている。

上白石萌音(以下、上白石):すごい曲ばかりでプレッシャーでした(笑)。まだビクビクしています。一曲一曲を大事に書き留めるような時間だったなと思って“note”というタイトルを付けました。

 曲を作ってくださった方たちと事前に打ち合わせを重ねたんですけど、私を深く知ったうえで、今の私に当て書きしてくれたんです。印象的だったのは、「From The Seeds」を書いてくださったGLIM SPANKYのお二人。どういう曲にしようか? という話はまったくせず、雑談のような質問をいっぱいされて(笑)。

 同曲は未来へ向かって芽を伸ばしていく覚悟を歌う楽曲だ。そのミュージックビデオでは、ドラマなどで見せる表情とは異なり、力強さが表現されている。

上白石:あの会話にどんな意味があったかはわからないですけど、後になって松尾レミさんと話す中で、歌詞は「私が抱いた萌音ちゃん像を書いてみた」とお聞きして。ちょっとだけ私も自分のことを知れたような気がして嬉しかったです。外から「あなた、こんなふうに見えてるよ」と教えてもらったような感じですね。

 4月にはツイッターでキーワードを募集し、それらをもとに上白石が作詞する企画「#もねうたうたね」を実施。約2千人から送られたすべての言葉に目を通し、「あくび」という曲の歌詞を書き上げた。土曜日の朝、マンションの角部屋で目覚めた“僕”は、隣でまどろむ“きみ”を見て、今日はどこへも行かず部屋でまったり過ごしたいと思う。そんな何げない日常を切り取った詞だ。

上白石:こういうのが私にとっての理想なんです。角部屋に住んでいること以外は全部想像ですけど(笑)。書いている途中で、一歩も外に出ないステイホームの歌詞にしようと思いついて、風景描写も窓から見えるものだけにして、家の中でゴロゴロしながら作りました。……いや、そんなふうに言うと余裕で書いたみたいですけど、実際は作詞する時は毎回もう、頭を抱えながら作っています。「明後日レコーディングだ、どうしよう!」って。

 そうして作り上げたアルバムが発売日を迎え、多くの人が聞くことになる。その心境は、映画や舞台の発表前とは違う?

上白石:映画とかもめちゃくちゃ緊張するんですけど、今はちょっとだけ楽しみが強いです。それはできたアルバムの一曲一曲が本当に大好きだし、良い曲だという確信があるから。

(編集部・藤井直樹)

※AERA 2020年9月7日号より抜粋

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姜尚中「安倍政権の最大のレガシーは『慰安婦合意』 日韓交渉の大きな担保になる」

2020年9月2日 18:00 AERA/写真・朝日新聞社

 連続在任期間を更新したばかりの安倍首相が8月28日、突然辞任を表明した。安倍政権が私たちに遺したものとは。AERA 2020年9月7日号は、巻頭エッセイ「eyes」で連載中の政治学者の姜尚中さんに聞いた。

*  *  *
 安倍晋三首相は連続在任日数で佐藤栄作元首相を抜き歴代1位となり退陣します。改めてその長期政権を振り返り、特徴は何かと考えると、「選挙」と「外遊」に集約されると思います。

 長期政権だったことを鑑みても、総選挙をこれほど実施した政権はこれまでどこにも存在していません。憲法上は疑義があるにもかかわらず、内閣総理大臣の専権事項として何度も選挙を繰り返し、有権者から判断を仰げば全権委任という解釈で来たわけですから、「選挙独裁」といっても過言ではないでしょう。

 また、国内政治で何らかの障害に当たるたびに外遊を繰り返した政権も珍しいと思います。安倍首相は外交が得意技であると言われており、「アベノミクス」と「外交」が政権の二枚看板だったわけです。経済についてはご専門の浜矩子さんにお願いするとして、ここでは外交を中心に見ていきたいと思います。

 8年近くの歳月があったにもかかわらず、まったく進展のない拉致問題。膨大な武器の購入。イージス・アショアの破綻。自由貿易に相反するような要求をのんでしまった日米関係。日ロ首脳会談を27回も行ったのに、北方領土問題は鳩山由紀夫内閣のやった日ロ交渉以前の状況に戻ってしまい、そればかりか、EU諸国との関係を鑑みれば日ロの「蜜月」はマイナスでしかありませんでした。

 習近平氏の来日キャンセルによる誤算も大きく、インドなどを中国包囲網に抱き込もうとした鳴り物入りの「地球儀俯瞰外交」も結果を残せないままフェードアウトしています。

 こうして安倍外交を振り返ると、問題をランダムに取り上げて、あるところがダメだと違うオルタナティブにスイッチして、それがダメだともう一つのところに飛びつく。深掘りをするわけでもなく、どうやって「見せる化」していくか。これが外交ショーとして繰り返されました。安倍政権にとって、外交というのは支持基盤を高めるための大きなテコだったのです。

 結局、選挙と外遊は裏と表の関係でした。何か問題が起きると外交に走るか、時期をみて選挙に走るか──。ひたすら支持率を上げるため、テコ入れとして繰り返してきたのだと思います。つまり、動きだけは非常にたくさんあるけれど、具体的な成果に乏しかったと思います。

 長期政権ゆえに、国際的に「ABE」という名前が色んな場で印象づけられたことは確かです。これもレガシーだというならレガシーでしょう。しかしそれは長かったゆえであって、具体的に外交政策として何が成功したのかと考えると、日米関係をはじめとする巨大なお荷物を背負ったまま、結局おもちゃ箱が散乱している状態と言えます。

 ただ、まさに歴史の皮肉だと思うのですが、安倍首相は自らが一番やりたくなかったことでレガシーを遺しました。2015年の慰安婦問題日韓合意です。当時、米国からの強いプッシュのもとに日韓は合意に至りました。朴槿恵(パククネ)政権から文在寅(ムンジェイン)政権になり、韓国側の頑なな対応で事実上この合意が形骸化してしまい、現在の日韓関係は大きくこじれています。

 とはいえ、瓢箪から駒でも日韓合意に踏み込んだということがいずれは安倍政権のレガシーとなることは間違いありません。なぜなら、今後日韓が歴史問題を解決しようとするとき、安倍首相にとって不本意だったこの日韓合意が必ずや大きな担保になるからです。そういう点でも、まさにこれは歴史のパラドックスだと言えるでしょう。(聞き手/編集部・三島恵美子)

※AERA 2020年9月7日号

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コロナ後も「新たな感染症は必ず見つかる」 野生動物と人の生活圏が重なり危機はすぐそこに…

2020年8月31日 18:00 AERA

 新型コロナの猛威に震える世界だが、次の新興感染症のリスクも身近に迫っている。長い歴史の中で知られることのなかった新たな感染症が、近年次々広まる背景には何があるのか。AERA 2020年8月31日号で専門家らに取材した。

*  *  *
 新型コロナウイルスよりも致死率の高い、正体不明の肺炎が流行している──。

 7月9日、在カザフスタン中国大使館が突如、ホームページ上にそんなメッセージを掲載、カザフスタン在住の中国人に注意を呼び掛けた。同じ日までに同国で発表されていた新型コロナウイルスによる死者は250人程度だったが、この「謎の肺炎」では1月以降1700人以上が死亡しているとしており、大きなニュースになった。

 一方で、複数の中央アジア関係筋はうがった見方で証拠もないとしつつ、こんな見解を示す。

「新疆ウイグル自治区で新たな感染症が発生して、その責任を国境を接するカザフスタンに押しつけようとしたのではないか」

 実際、国際感染症学会が運営する感染症モニタリングサイトProMED-mailを引用した一部報道によると、カザフスタン国境に近い新疆ウイグル自治区のチョチェク市の病院で6月、感染性肺炎の集団感染が発生し、患者や医療スタッフが隔離されたという。また、関連は不明だが、同市では6月初旬、鳥インフルエンザによるガチョウの大量死が報告されている。

 結局、「謎の新型肺炎」騒動はカザフスタン保健省がフェイクと否定し、WHOも新型コロナの見落としか通常の市中肺炎ではないかとの見解を示したことで事実上終息した。新疆ウイグル自治区での集団肺炎の真偽も明らかでない。しかし、コロナ禍のさなかでの新たな流行病の恐怖に世界がざわついた。

 近年、新型コロナに限らず、次々と新たな感染症が出現している。コロナウイルス関連では重症急性呼吸器症候群(SARS)と中東呼吸器症候群(MERS)が知られ、2009年にはブタ由来のインフルエンザのパンデミックが起きた。今年8月には中国で「新型ブニヤウイルス」による死者が増えているとの報道もあった。これは日本でも60人以上の死者を出しているマダニ由来の感染症「重症熱性血小板減少症候群」のことで今年新たに出現したウイルスではないが、00年代以降に発見された新興感染症のひとつだ。

 なぜ、長い歴史のなかで知られていなかった新たな感染症が次々に生まれるのか。また、新型コロナの「次」の新興感染症の危機は迫っているのだろうか。パンデミックインフルエンザウイルスの出現機構を解明したことで知られる北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターの喜田宏特別招聘教授はこう話す。

「近年発生する新興感染症はどれも、ヒトとそれ以外の脊椎動物の両方に感染する人獣共通感染症です。人口爆発に伴う森林伐採や灌漑(かんがい)などで地球環境が激変し、野生動物と家畜やヒトの境界がなくなった結果、1970年ごろから次々に新たな感染症が生まれるようになりました」

 野生動物とヒトの生活空間が重なり接触機会が増えたことで、動物のウイルスの一部がヒトに感染するようになったのだ。

 人獣共通感染症の原因となるウイルスは、自然宿主と呼ばれる野生動物と共生している。自然宿主には無害だが、中間宿主となる家畜など別の動物に感染すると、宿主の身体で増殖しやすいウイルスが優勢になり、人間にも感染することがある。

 インフルエンザを例にとると、自然宿主であるカモが越冬のためシベリアから南へ飛来し、糞便と共に排泄されるウイルスが水を介して別の鳥や動物に感染する。ウズラなどキジ科の陸鳥に感染したあと、ニワトリに広がって感染を繰り返すと、全身で増殖する高病原性鳥インフルエンザウイルスが生まれる。また、鳥とヒトのウイルスにブタが同時感染し、遺伝子再集合という仕組みによって新たに生まれるのがパンデミックインフルエンザウイルスだ。09年の「新型」をはじめ、過去のパンデミックインフルエンザはいずれもブタ由来と考えられている。

 新型コロナも、コウモリだとされる自然宿主から中間宿主を経てヒトに感染するウイルスとなった可能性が高い。中間宿主はセンザンコウやヘビだとする説があるが、確定していない。ただし、特異な点もある。

「ヒトで流行するようになったばかりのウイルスは普通、伝播性は高いものの体内での増殖は緩やかです。ヒトからヒトへ感染を繰り返すうちに増殖しやすいウイルスが選ばれる。しかし、新型コロナは当初からヒトで増殖しやすく、病原性の高いウイルスでした」(喜田特別招聘教授)

 インフルエンザなどの知見をもとに考えると、新型コロナウイルスは1月以降武漢で流行した段階で、既にヒトからヒトへの感染を繰り返していた可能性を示唆している。

「中国圏は新型コロナのほか、SARSや過去のパンデミックインフルエンザであるアジア風邪、香港風邪などの発生源となってきました。これは、生きた鳥や野生動物を扱う市場が多くあり、自然宿主から中間宿主、ヒトへのウイルス感染が起きやすい環境だからです。さらに、動物が持つ未知のウイルスは無数にある。今後も新たな感染症は必ず生まれます」(同)

 新たに生まれた感染症はいったん流行が収まっても終わりではない。より大規模に再流行したり、別の地域で発生したりする再興感染症となりうるのだ。1976年にスーダンで初めて流行したエボラ出血熱は、今もアフリカ各国で流行を繰り返している。13~14年の流行では西アフリカで1万人以上が死亡した。アフリカで発生して世界に広がったウエストナイル熱は00年代に入ってアメリカとカナダで流行し、600人以上の死者を出している。人類が闘うべき感染症は増え続けている。

 一方、有史以来人類が根絶に成功した感染症は天然痘のみ。WHOは次の目標としてポリオと麻疹の根絶を目指すが、これら三つはヒト独自の感染症だ。

「人獣共通感染症はヒトでの流行が収まっても、自然界でウイルスが受け継がれるため根絶できません。発生を予知して被害を食い止める先回り対策しかない。既に知られた感染症は自然宿主と伝播経路を突き止め、モニタリングして発生に注意を払うこと、未知のものは野生動物が持つウイルスの遺伝子と実験動物に対する病原性を網羅的に調べ、結果をデータベース化しておくことが必要です」(同)

 北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターでは海外の研究機関とも協力し、野生動物から網羅的にウイルスなどの微生物を分離、ライブラリー化を進める。分離したウイルスを実験動物に感染させ、病原性を示したものが次の新興感染症の「第1候補」だ。これまでに、マウスで致死性を示す新型のアルファヘルペスウイルスがインドネシアのオオコウモリから、クリミアコンゴ出血熱に似た症状を起こす新型のナイロウイルスがザンビアのキクガシラコウモリから、ヒトとコウモリのウイルスが遺伝子再集合して生まれたと見られるオルソレオウイルスがザンビアのブタの糞便から見つかった。これらのウイルスなどが近い将来、猛威を振るうかもしれない。世界はいま新型コロナ一色だが、新たな感染症も迫っている。(編集部・川口穣)

※AERA 2020年8月31日号

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