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「現状を理解し、相手の出方を予想して自分の指し手を決める。対局はその連続なので、子どもは自然と集中力や考え抜く力、先を読む力や決断力など、さまざまな力を育んでいきます」
「相手がいるから対局できることに感謝し、礼儀正しい振る舞いもできるようになります。相手の立場で考える姿勢も芽生えるでしょう」
◎将棋の「ここがスゴイ!」
1.駒の動きを駆使して先を読む
駒は王将をはじめ、金将、銀将、飛車、桂馬など8種類で、それぞれ動かし方が決まっている。つねに相手の駒の動きを予想しながら、自分の駒の動かし方を決めるのは、まるで「得意技の違う選手を上手に使って試合を勝利へ導く監督」の気分!
2.「負けました」と言って終わる
自分の負けを悟ったら、「負けました」という宣言「投了(とうりょう)」をしないと対局は終わらない。負けを認めるのは悔しいが、声に出す勇気を振り絞って潔く言うことで、悔しさを折りたたんで心の中にしまうことができ、気持ちを切り替えられる。
3.感想戦をして、ゲームを振り返る
対局の後、勝者と敗者が一緒に内容を振り返る「感想戦」があるのも将棋の特徴。敗者は敗因に気づくだけでなく、お互いが「相手はどんなことを考えていたか」がわかるので、さらに良い手を考えるきっかけとなり、意欲的になれる。
「ルールがあるなかで、“次はここに指せばこうなって……いや、相手がここを指したらまずいな……”などと多方面から考えに考えるので、自然と論理的思考力が育ちます」と安次嶺さんは言います。
「 “負けを受け入れる”ことで、自分の判断で駒を動かした責任を実感し、自分の弱さを謙虚に認める姿勢をもてるようになります。失敗や挫折を乗り越えるチャンスですね」
◎囲碁の「ここがスゴイ!」
1.好きな場所に自由に石を置ける
盤上に何もない状態からスタートし、好きなところに石を置いていけるので、何をするのも自由! まるで真っ白なキャンバスに絵を描いていくよう。ゼロから自分の作戦を自由に組み立てていく楽しさがある。
2.石の連なりから発想していく
同じ色の石たちをつなげてできる連なり(線)から、どう伸ばせば相手の石や陣地を囲めるかを考えるので、盤上の黒と白の石が織り成す模様を「図形として」視覚的にとらえるようになる。つねに盤上全体を見るので、大局観で物事を俯瞰する力が伸びる。
3.終了は自分と相手の二人で決める
将棋のように王様の駒を取られると終了、オセロのように盤上のマス目に石がすべて置かれたら終了というのではなく、石を置きたいところがない場合は「パス」をし、双方のパスが続いたら終局となる。対局の終わり方にも正解がない。
「ゼロから始めて、自分のやりたいことの具体的な目標を立て、それを達成するために、一カ所に固執せず、常に全体を見ながらバランスよく対応していく。囲碁にはそんな力を育む要素がたくさんあります」と水間さんは話します。
「自分の色の石で相手の石を囲ったらそれを取ることができ、最終的に陣地の広いほうが勝ち」と、それだけです。もちろんシンプルゆえに奥が深いのですが……。「初心者の子どもには、最初から勝ち負けを教えるのではなく、2人でやりとりしながら陣地を分けるストーリーを作る遊びとして、純粋に楽しんで囲碁に慣れてもらうようにしています」と水間さん。
「碁盤をキャンバスにした“絵”として見るようになるので、囲碁は右脳を活性化するともいわれています」
(取材・文/船木麻里)