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二宮和也(以下、二宮):原案の写真集を見て、ミリ単位で修正しながら、僕らもなりきって撮影しました。写真に関しては、平田さんがとても上手だった印象です。どの写真を見ても、一番完成度が高くて。
■人との間に壁作らない
もう一つ、この物語を牽引(けんいん)する大きな動力となるのが、政志の人間的な魅力だ。ときには周りの人を振り回す、自分勝手なところもあるのに、どういうわけか許せてしまう憎めないキャラクターだ。「それをどこまで嘘っぽくなく、説教くさくならずに出せるかがすべてだったと思う」と言う。
二宮:物語の中盤、政志が写真家としてうまくいきかけたときに、東日本大震災が起こって、シャッターを切ることができなくなるんです。そこに行く前に、政志の魅力というか、この人だから助けたい、この人だから一緒にいたい、という“この人だから”という感覚を共有できてないと、嘘っぽくなってしまうんじゃないかと思いました。でも、そこは監督がしっかりコントロールして、政志の魅力が伝わるように、丁寧に演出してくださったと思います。
しかし、二宮本人がまとう「人たらし」の雰囲気も、政志を魅力的に見せる大きな要因となっているのは間違いない。
二宮:う~ん……自覚はないんですけど、僕は普段から、あまり人との間に壁を作らない人間だから、そう見えるのかもしれませんね。
■4人がいると心強い
二宮:ただ、わりといつもそうですけど、僕は役作りをして役に近づいていくのではなく、役を自分に引き寄せて演じるので、そういう意味では、政志も僕に寄せて演じているとは思います。というか、ここまでは自分で、ここからは政志という、役に切り替わるスイッチみたいなものもないんですよ。本番になるといつも自然に切り替わるというか……うまく切り替わらなかったことは一度もないですね。そういうやり方で、小さい頃からきているので。
政志が写真家としてくすぶっているときも、才能を信じ、勇気をくれる人がいた。自身にそんな経験はあるだろうか。
二宮:僕、相談って、本当に誰にもしないんですよ(笑)。上の方がなにか気を使ってくれて言葉をかけてくださることはありますけど。
物語を通じて一番伝えたいことは「人の縁」の面白さだ。
二宮:この映画を観たら、きっと人の縁を大切にしたくなると思います。
(ライター・大道絵里子)
※AERA 2020年10月5日号より抜粋