今年デビュー10周年を迎え、メンバーそれぞれの活動も多岐にわたるKis-My-Ft2。メンバーの藤ヶ谷太輔は、今年の10月から11月にかけて上演されたミュージカル「ドン・ジュアン」で主演をつとめ、その多彩な表現力と圧倒的な存在感で観客を魅了した。
今回は藤ヶ谷に、自身の「歌声」について話を聞いた。その魅力をひもといていくと、ファンを魅了する歌声の裏に隠された「ボーカリスト」としてのたゆまぬ努力とストイックさが垣間見えてきた。
特殊な状況で「学んだことも多かった」
藤ヶ谷が演じるドン・ジュアンは、スペインのセビリアであらゆる女性を魅了し、悪徳と放蕩の限りを尽くす男。粗暴ながら色気に溢れるダークヒーローが次第に愛を知り、悲劇に導かれていく過程を見事に表現していた。
役柄ゆえにKis-My-Ft2で普段歌っている楽曲より迫力あるドスのきいた歌唱が多い。一方で愛をささやく柔らかいニュアンスが求められるシーンもあり、藤ヶ谷の幅の広さを存分に堪能できた。
ミュージカルという、自分ではないキャラクターを演じながら歌う特殊な状況。さまざまな困難があるだろうことは想像に難くないが、藤ヶ谷自身はとてもポジティブだ。
「今回の『ドン・ジュアン』では、呼吸の仕方や声を当てる場所など、学んだことも多かったので、今後キスマイの楽曲やライブでも色々と試しながら、高いキーや低いキーをもっと楽に出せるようになって、表現の幅が広がればと思っています」
語っていた展望、過去の公演では困難も
「僕は全部のジャンルをやりたいと思っています」。以前、LINE NEWSのインタビューで藤ヶ谷は「歌と踊りはもちろん、MCもやって、バラエティー番組に出て。他にも映像、芝居、ストレートプレイ、ミュージカル...その全部を網羅してる人って、ジャニーズにもいないんじゃないかな」と語っていた。
ジャンルを横断した活動がKis-My-Ft2にフィードバックされ、グループを次のステージに進めることができる。Kis-My-Ft2というホームグラウンドがあるからこそ、のびのびと新しい領域にチャレンジできるのだろう。
2019年公演の再演となった今回の「ドン・ジュアン」。初演は藤ヶ谷にとってミュージカル初挑戦の舞台でもあったが、その裏で困難にも直面していた。
「初演のときに喉の調子が悪くなった時期があって、公演前に病院でステロイドを打ちながら本番に臨んでいました。不安もありましたが、気力とカンパニーのサポートのおかげでなんとか走りきれました」
長く活動するには欠かすことのできない喉のケアも、公演を通して学んだと藤ヶ谷は語る。「それからは、本番前の発声と、本番後のクールダウンには一層気を使うようになりましたね」
音楽との格闘、ブレない"強い意志"
キャリアを重ね数多のレコーディングを経験してきた藤ヶ谷は、それにあぐらをかくことなく、現在進行形で音楽との格闘を続けている。「近年のKis-My-Ft2のレコーディングで印象に残っている曲は?」という問いには、シビアな答えが返ってきた。
「『Fear』という楽曲です。1サビ後半のソロパート、ファルセットと地声が繰り返される箇所は、かなり苦労しました。なかなかうまくいかず何回も録り直しましたね」
納得がいくまでとことん突き詰める──。こうした厳しい基準をもって自分に向き合えるのは、やはり「ファンに届ける」という強い意志をブレずに持ち続けているからだろう。
無観客ライブでも「声を届けたい」
コロナ禍の影響で無観客配信になってしまった今年のメットライフドームでのライブ(「LIVE TOUR 2021 HOME」LIVE DVD & Blu-ray 12月15日リリース)でも、そこは変わらなかった。
「ライブでは音程やピッチなどは気にしますが、一番はライブ感を大切にしています。置きにいき過ぎず攻めていくことも意識しながら、その日に出せる自分なりの感謝のスタイルを表現できればと。今年のライブは無観客での配信ライブにはなりましたが、"声を届けたい"という想いで臨みました」
ストイックな姿勢は、藤ヶ谷が目標とするアーティストからも読み取れる。
「目標は安室奈美恵さんです。あれだけ激しく動いても声量やピッチがずれないのは、かなりハードなトレーニングなどをされていたからだと思います。そして、それを表に出さない生き様もとてもかっこよく美しいです」
目の前にいるファンやリスナーのために、媚びへつらうことはせず一心に最高のパフォーマンスを見せることで応えていく。最後までアーティストとして真摯なアティチュードを崩さなかった安室さんの背中を追って、藤ヶ谷はまだまだ高みを目指していくだろう。
10年での変化、ファンとの関係性
10周年を迎えた今、デビュー当時と比較して自分の声質はどう変化したと自己分析するだろうか。
「声の幼さや若さのようなものはなくなったと思いますね。でも、自分の歌声を気にしてチェックしたことがあまりないので、歌声の変化はファンの皆さんの方が詳しいと思います(笑)」
この発言からも、自身の変化をいつも見守ってくれているファンへの信頼を感じられる。「ファンはタレントの鏡」とよく言われるが、Kis-My-Ft2とファンの間には積み重ねてきた関係性が滲み出ている。
"誰かの何か"に──。これからの10年
最後に、今後思い描くアーティスト像を語ってもらうと、藤ヶ谷からある想いが飛び出した。
「"誰かの何か"になれたら幸せだなと思っています。そのためにも、まずは自分が楽しめているかどうかを大事にしていきたいです。その上で自分にしかできないこと、Kis-My-Ft2にしかできないことを表現していきたいと思います」
若手と呼ばれる時期は過ぎ、さまざまな出逢いを経て人としてもグループとしても着実に成長していく。
未来への期待を込め、「今後も沢山の方々に出逢いたいです」と語る藤ヶ谷。アーティストとして円熟味が増していくであろう次の10年の藤ヶ谷太輔とKis-My-Ft2から、ますます目が離せない。
藤ヶ谷太輔 (ふじがやたいすけ)
1987年6月25日生まれ。神奈川県出身。AB型。舞台やドラマ、映画と俳優としても幅広く活躍しながら、TBS系「A-Studio+」(毎週金曜23:00-23:30)ではMCを務める。また、ニッポン放送「藤ヶ谷太輔 Peaceful Days」(毎週土曜 22:30-23:00)でソロレギュラーラジオを担当。今後、主演映画「そして僕は途方に暮れる」も公開予定となっている。
Kis-My-Ft2 LIVE DVD & Blu-ray「LIVE TOUR 2021 HOME」
Kis-My-Ft2が10周年の序章として開催した配信ライブ 「LIVE TOUR 2021 HOME」が、LIVE DVD & Blu-rayとなって2021年12月15日(水)にリリース。LIVE本編と合わせトータル7.7時間に及ぶ豪華映像コンテンツに加え、10周年を記念して最新ソロ曲やこれまでCD未収録であったソロ曲の数々も特典CDとして収録。
詳細はKis-My-Ft2 公式サイトへ。
【取材・文 : 張江浩司 写真 : 二宮ユーキ 編集 : 前田将博、荒川のぞみ(LINE NEWS編集部) 】