上昇相場のときに投資信託のファンドランキングのリターン(1ヶ月間)を眺めていると、「○○日本株4.3倍ブル」、「ブル3倍日本株ポートフォリオ」といった名前のレバレッジがかかったファンドが上位に並びます。
これらのレバレッジのかかった投資信託は「ブルベアファンド」といいます。
ブルベアファンドは使い方次第では便利で大きく儲けることや、下げ相場でも利益を出すことができます。
市場が上昇するなら倍の値動きをする投資信託を買って寝ていれば大きく儲かるのでは?と思う人もいるかもしれません。
しかしブルベアファンドは長期でポジションをとるにはあまり向いておらず、どちらかというと短期売買に向いています。
本記事ではブルベアファンドを使う際の注意点と使いどころについて解説します。
ブルベアファンドとは?
ブルベアファンドとは、対象とする市場の値動きに対して倍の値動きをするように運用される投資信託のことです。
先物やオプションなどを利用することで、基準となる市場の値動きを大きく上回るように設計されています。
ちなみにブル(牛)は、投資の世界では角を下から上に突きあげる動きから上昇相場のシンボルで、ベア(熊)は、腕を上から下に振り下ろす動きから下落相場のシンボルになっています。
そのため株価の上昇で値が上がるレバレッジのかかった投資信託はブル型ファンド、株価の下落で値が下がるファンドをベア型ファンドといいます。
ブルベアファンドは保ち合い相場に不向き
ブルベアファンドを買う前に、ブルベアファンドが保ち合い相場に向いていないことに注意しなければいけません。
上の図はインデックスファンドと3倍のブル型・ベア型ファンドを保ち合い相場で持った場合の値動きの折れ線グラフです。
インデックスが毎日5%ずつ上げ下げを続けた場合、そのインデックスに対して3倍の値動きをするブル型・ベア型を並べてみると、インデックスよりも価格が下がってしまいます。
ブルベアファンドは日々の値動きに対する倍率
ブルベアファンドは日々の値動きに対する倍率で価格が決まります。
例えば上の図はインデックスが5%ずつ上げ下げを繰り返した場合のシミュレーションです。
インデックスが5%上がった日はブル型は15%の上げ、ベア型は15%の下げ、という具合に計算を続けていくと、保ち合い相場ではインデックスファンドよりも価格が下がってしまうようにできています。
さらにブル型・ベア型ファンドは信託報酬がインデックスファンドより高めに設定されているため、保ち合い相場が長く続くとポジションを持っているだけでマイナスになります。
ブルベアファンドの使いどころ
ブルベアファンドは保ち合い相場が長く続くと、持っているだけでマイナスになっていく性質があります。
しかし、一方的な上昇相場や下落相場ではブルベアファンドは大きく利益を狙える可能性もあるため、一概に中長期保有が悪い訳ではありません。
ブルベアファンドは使い方次第では便利なので、使いどころをご紹介します。
信用取引をしたくないけど、レバレッジをかけたいとき
信用取引口座やCFD口座を開設していなくても、一般的な口座で簡単にレバレッジがかかった取引ができるのはブル型・ベア型ファンドの強みです。
また設計上、投資した以上にマイナスになることはないため、追証の心配もありません。
普通の株や投資信託を買うのと同じ感覚で取引できるところにメリットがあります。
信用取引をしたくないけど、下げ相場に備えたいとき
信用取引やCFDの魅力は空売り(ショートポジション)をとれることです。
しかしベア型の投資信託ならば擬似的なショートポジションをとることができます。
信用取引やCFDができない環境でも、株や投信を普通に買うのと同じ感覚で、下げ相場でも利益をあげることも可能です。
ブルベアファンドは長期保有には不向きだが短期では使いやすい
ブルベアファンドは保ち合い相場では、ポジションをとっているだけで普通のインデックスよりも下げてしまう設計になっているため、一方的な上昇相場や下落相場ではその限りではありませんが、一般的には長期保有向きではありません。
信託報酬も通常のインデックスファンドより高めに設定されています。
しかしブルベアファンドは使い方によっては短期間で大きな利益をあげることや、擬似的なショートポジションをとれる強みもあります。
もちろん市場の上げ下げのタイミングをうまく見極めなければ損失も大きくなってしまうので、投資をはじめたばかりの人には扱いは難しいかもしれません。
ブルベアファンドの倍率は目標設定の点に注意
ブルベアファンドのレバレッジ倍率は目標設定のため、必ず3倍だから綺麗に3倍の値動きをする訳ではありません。
そのため実際の倍率と違う値動きをする点には注意する必要があります。
ブルベアファンドの倍率はあくまでも目安です。
そのためブルベアファンドの不安定な倍率を嫌う投資家の中には信用取引やCFDを好む人もいます。
丁寧に自分の判断を投資に反映させたい人だと、ブルベアファンドでは思うような結果にならないと感じる人もいるため、素直に信用取引やCFDでレバレッジやショートポジションをした方がよいケースもあります。
ただブルベアファンドは投資家に新しい選択肢を提示してくれた画期的な、投資信託と言えるのではないでしょうか。
米国のブルベアETF
米国の代表的なブルベアファンドのETFで、ディレクション・デイリーS &P500ブル3X(SPXL)とディレクション・デイリーS&P500ベア3X(SPXS)をあげておきます。
信用取引が難しい米国株では、ブルベアETFは信用取引の代わり使えます。
ブルベア型の特性をよく理解したうえで、うまく活用すれば投資戦略の幅は広がります。
まとめ
ブルベアファンドは対象とする市場の値動きに対して倍の値動きをするように運用される投資信託のことです。
ブル型は上昇相場で大きく値上がりし、ベア型は下落相場で対象となる指数の逆の動きをします。
信用口座やCFD口座を使わずにレバレッジのかかった取引や擬似的なショートポジションをとれる点で便利です。
しかし保ち合い相場では設計上、インデックス以上に価格が下がってしまうようにできており信託報酬も高めなので、長期の保有には一般的に適していないと言われています。
使い道次第では投資戦略の幅が広がるため参考にしてみてください。(提供: The Motley Fool Japan)